映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「心音」乾ルカ

2021年09月13日 | 本(その他)

心臓移植を受けて生きることは罪なのか?

 

 

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城石明音は先天性の心疾患を患っていた。
8歳の時に病状が悪化し、両親は渡米しての心臓移植手術を決断する。
しかし、そのためには1億5千万円という莫大な費用が必要だった。
懸命の募金活動の末、募金額は目標額を超え、明音はチャーター機でアメリカに渡った。
幸いドナーも見つかり、手術も無事に成功し、明音は一命を取り留めた。
誰もが明音の生を祝福しているかのようだった。
このときまでは―。
募金活動と心臓移植手術によって命を救われた少女・城石明音の半生を、
教師、同級生、夫など周囲の人間の目を通して描いた、骨太の人間ドラマ!!

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骨太の人間ドラマ・・・?
なんか、そういう感じでは全然なかったと思います。

 

8歳の時に心臓移植をして命を取り留めた、明音。
そのためには1億5千万円もの費用が必要で、
募金活動によりなんとか渡米して手術を受けることができた。
本作はその後の明音の人生を綴るストーリーです。

 

本作、このような心臓移植を世間の人は忌み嫌う、
ということを前提に書かれていると感じました。
うーん、実際問題としてSNSであれこれ書き立てられそうなのは想像はつきますが・・・。
でも本当にこんな風に学校ぐるみで手術をした子がいじめられる
なんていうことが本当にあるでしょうか・・・? 
あるのなら私がよほどお人好しということになります。

命をお金で買った。
移植の順番待ちをしていた人もいたのに、横入りした。
死んだ人の犠牲の上に、生き残った・・・。

あるのは非難の声ばかり。
当時、8歳の子供に何の責任があるでしょう。
しかも、彼女に味方するように見えた人物たちは、
結局「自分の思い」ばかりを募らせて、
明音自身の心情には寄り添おうとしない。
そして母親は「人様の命や善意をもらって生きているのだから、しっかりと生きる責任がある」という。
こんな、重荷ばかりの人生にどう耐えればいいのでしょう・・・。

 

私、こういう不条理なまでのいじめとか人権侵害には憤りを感じるばかりで、
全く感動できませんでした。
そもそも本作で著者は何を言おうとしていたのか。
私には読み取れません。

 

<図書館蔵書にて>

「心音」乾ルカ 光文社

満足度★★☆☆☆

 



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