映画と本の『たんぽぽ館』

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十二単衣を着た悪魔

2021年09月12日 | 映画(あ行)

自分らしく、たくましく

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原作を先に読んでいまして、まだ記憶に新しいところだったのですが、
好きな作品だったので・・・。

就職試験に落ちてばかりで、やむなくフリーター生活の伊藤雷(伊藤健太郎)。
京大に合格した弟・水(細田佳央太)には常に劣等感を抱いています。
雷はある日、バイトで「源氏物語」の世界を模したイベントの設営をします。
その帰り道に激しい雷雨に襲われて意識を失い、
気がつくとそこは「源氏物語」の世界でした! 
雷は、イベントでもらった源氏物語のパンフレットを頼りに、
陰陽師として弘徽殿の女御(三吉彩花)に仕えることになります。
その息子、一の宮は異母弟に当たる光源氏に劣等感を抱いていて・・・。

これはタイムスリップではないのです。
あくまでもフィクションの「源氏物語」の世界。
時空を超えて異次元の世界へ入り込んだとか・・・。
まあ、どちらにしても空想上のことなので、同じようなもんですね。

源氏物語では、弘徽殿の女御は光源氏側から見て敵役。
桐壺帝を挟んで、光の母とはライバル関係でありますので。
本作は、あえてその嫌われ役の弘徽殿の女御サイドからの視点で描かれているのです。
それは、原作者内館牧子さんの、この弘徽殿の女御への思い入れが大きいため。

当時の女性は、男によってその人生が決まってしまう。
生きていくためには、男にすがり愛を受けるほかない・・・というこの社会にあらがい、
ひたすらたくましく自分らしく生きる弘徽殿の女御のパワフルさに圧倒されるわけですね。
それは本作の雷の感情そのままでもあります。 
だから、雷が弘徽殿の女御に恋をするのかと思えばさにあらず。

雷は見た目はあまりぱっとしない(?)倫子(伊藤沙莉)と結婚しますが、
結婚の後ゆっくりと愛を育み、人を愛することを学び、人間として成長していきます。
源氏物語本筋から離れて、こうしたエピソードが入っているところが魅力でもあります。
だから、本作のラストシーンでは泣きそうになってしまいます。

さて、せっかくの黒木瞳さん監督作品なのですが、
伊藤健太郎さんと伊勢谷友介さん(帝役)出演というダブルパンチでしたね。
でもこの配役はどちらもピッタリです。
これで正解だったと思います。
作品自体には罪はない、と。

でも、雷の弟・水が、今人気上昇中の細田佳央太さん、というのが今見てオトクなところ。

 

 

「十二単衣を着た悪魔」

2020年/日本/112分

監督:黒木瞳

原作:内館牧子

脚本:多和田久美

出演:伊藤健太郎、三吉彩花、伊藤沙莉、田中偉登、細田佳央太、伊勢谷友介

 

源氏物語世界感再現度★★★☆☆

満足度★★★★☆

 



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