聞こえない家族へ向けて、歌う
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この度のアカデミー作品賞に輝いた作品です。
本作は、2014年フランス作品「エール!」のリメイクなのです。
私、そちらを見て、いたく感動した記憶があって、
なんでわざわざリメイクしなければならないのか・・・と思うと同時に、
リメイクでもアカデミー賞作品賞ってアリ?と思ってしまった。
しかしまあ、見るとまた感動に包まれて、
わかりやすくてラストは多幸感たっぷり。
マスクがしっとり湿ってしまいましたし・・・。
そんなわけで「ドライブ・マイ・カー」が敗れたのは仕方ないのかな・・・
と思ったりもします。
まあ、アカデミー賞に何を求めるのか、人ぞれぞれですもんねえ・・・。
近年、多様性のテーマが重視されているので、そういう意味でもこっちが有利だったのか・・・。
とある港町。
高校生ルビー(エミリア・ジョーンズ)は両親と兄との4人暮らし。
ところが、ルビー以外の3人はみな聴覚障害があって、
耳が聞こえるのはルビーただ一人。
そのため、幼い頃から家族の耳となり、家業の漁業も手伝います。
ルビーは歌うことが好きで合唱クラブに入部するのですが、
その才能に気づいた顧問の先生が、都会の名門音楽大学の受験を強く勧めます。
しかし、ルビーの歌声を聞くことができない両親は、娘の才能を信じられず、
またルビーがいないと家業もうまく回らなくなってしまうことから、進学には反対します。
家族が困ってしまうことを知りながら、自分の夢を貫き通すことはできないと、
ルビーは進学を諦めますが・・・。
耳の聞こえない家族の中にあって、歌の才能を持つというのはなんとも皮肉で、
家族が歌うことに夢を見出す娘を後押ししようという気にならないのも、無理はないですね。
でも、娘を愛する気持ちはたっぷりあるので、
やがて娘によりそい、応援するようになっていきます。
合唱部のコンサートのシーンで、映画ではしばし無音の場面を作ります。
ステージで歌うルビー。
でも私たちはルビーの家族同様、その歌声を聞くことができません。
けれども、周囲の客席を見渡せば、
うっとりする人、かすかにリズムをとる人、涙を流す人もいます。
ルビーの歌が、人々の心を動かしている。
そのことがまた彼ら家族の心をも動かすのです。
ステキなシーンですね。
もちろん、フランスの原版にも同様のシーンがあります。
本作の家族を演じたのは実際に聴覚障害のある俳優さんたち。
お父さんのスラングの手話がなんともイカす!
コーダ(CODA)とは、Children of Deaf Adultsの略で、
耳の聞こえない両親に育てられた子どものことを指します。
こういう子は、自ずと家族の耳の役割を担うことになってしまうので、
早くから大人びてしまいます。
そして両親の言葉がはっきりしていないので、
よほど意識して訓練しないと、言葉の発音が不明瞭になりがち。
本作中でも、ルビーは学校に入ってから周囲に「言葉が変だ」といわれたようです。
だからルビーは自分一人で歌うのは好きなのですが、
人前で歌うことには抵抗を持ってもいたのです。
私、コーダの様々な問題は、丸山正樹さんの小説「デフ・ヴォイス」のシリーズで知りました。
こちらの本もオススメですよ。
<シアターキノにて>
「コーダ あいのうた」
2021年/アメリカ・フランス・カナダ/112分
監督・脚本:シアン・ヘダー
出演:エミリア・ジョーンズ、トロイ・コッツアー、マーリー・マトリン、
ダニエル・デュラント、フェルディア・ウォルシュ=ピーロ、エウヘニオ・デルベス
家族愛度★★★★☆
歌唱力★★★★★
満足度★★★★★
今年はまだ22本しか観ていないですが、
今のところ、四半期のナンバーワンです!
リメイクって賛否両論分かれるのですが、
これは前作も今作もどちらも素晴らしかったです!
アカデミー会員もかなり作品チョイスが柔軟になってきたと思います(笑)
『ドライブ・マイ・カー』はそういう意味ではアカデミー会員好みだと思いましたが(笑)
なんだかんだいっても、私もすごく良かったと思っております!
今年でもう22本ですか。
私はコロナ自粛でしばらく映画館に行っていなくて、本作、久々の映画館鑑賞でした。まだまだ感染者数は多いけれど、もういくら待っても減りそうもない、と覚悟を決めました。
現に、映画館でクラスターが起こったなんて聞いたことないですもんね。