映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

黄昏(1981年)

2017年07月09日 | 映画(た行)
老人と少年、そして父と娘



* * * * * * * * * *

ニューイングランド、ゴールデン・ポンドと言われる湖のほとり。
別荘へサイヤー夫妻がひと夏を過ごすためにやってきました。
夫は元大学教授のノーマン(ヘンリー・フォンダ)、まもなく80歳になるところ。
心臓が悪く、最近物忘れが多くなってきています。
妻エセル(キャサリン・ヘプバーン)は60代。
夫の健康を気遣います。
そこへ一人娘のチェルシー(ジェーン・フォンダ)が
恋人とその息子ビリーを連れてやってきます。
ノーマンとチェルシーは折り合いが悪く、ここへ顔を出したのも数年ぶり。
そしてチェルシーはヨーロッパ旅行の間、
1ヶ月ほどビリーを預かって欲しいといって出かけてしまいます。
80歳の老人と13歳の少年、
始めは互いに何を話してよいのかもよくわからなくてギクシャクしていましたが、
やがて2人で釣りに出かけたりするうちに次第に親しくなっていきます。
ある時2人は大物の魚を釣るために座礁の危険のある入江へ漕ぎ入れるのですが・・・。


老いて行くことの悲しみが、老夫婦の上にあります。
かつては社会で活躍し自分なりに頑張って生きてきたと思う。
そういう自負はあるものの、でも今はそんなものは何の役にも立たない。
体も、記憶も衰える一方だ・・・。
毒舌家で扱いにくい夫なのですが、妻には夫の気持ちはお見通し。
う~ん、よくできた奥様だなあ・・・。
一方ビリーは、大人ではない自分にいらだちを感じているようでもあります。
少年ゆえに、こんな老人とともにひと夏を過ごさなければならない・・・。
双方、思うようにならない自分、ということで、気があってしまったのかもしれません。
約ひと月後のある日、チェルシーが戻ってきて、
仲良くしている二人を見てショックをうけるのです。
実の娘である自分はこんな風に父親と親しく話した記憶がない。
父の期待には叶わなかった自分。
父に疎まれている自分・・・。
ずっとそう思い込んでいたのでしょう。


実の父娘が、父娘の役をしていたのですね。
そうか、父と息子の話はいやというほどあるけれども、
父と娘でも同じことになりうるわけです。
父に憧れ、父と同じになりたいと思う娘。
彼女の反目はそういう感情の裏返しなのですね。
アカデミー賞関連で見ましたが、往年の名作、さすがに見応えがあります。
少し時代色を感じるところもまたなかなかいいですね。

黄昏 [DVD]
ヘンリー・フォンダ,キャサリン・ヘプバーン,ジェーン・フォンダ,ダグ・マッケオン
ジェネオン・ユニバーサル


「黄昏(1981年)」
1981年/アメリカ
監督:マーク・ライデル
原作:アーネスト・トンプソン
出演:キャサリン・ヘプバーン、ヘンリー・フォンダ・ジェーン・フォンダ、ダグ・マッケオン、ダブニー・コールマン
家族の情愛度★★★★☆
満足度★★★.5


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