広島の旧家で、遺産相続に絡む謎を解く
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代々、遺産を巡る争いで死者さえ出るという、
狩集(かりあつまり)家の相続人のひとりである、汐路(しおじ)に頼まれ、
訪れた先の広島で、遺言書の開示に立ち会うことになった久能 整(くのう ととのう)。
そこには、失跡した犬童我路(ガロ)の思惑が働いていた。
相続人候補は汐路と、いとこたち4人。
整は次第に身に危険も及ぶ骨肉の争いに巻き込まれて…!?
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前巻からの続き。
広島、狩集(かりあつまり)家の遺産相続問題に首を突っ込むことになってしまった久能くん。
広島の旧家。
まるで金田一耕助じみています。
しかしなぜか、例によった蕩々とした整くんのしゃべりがなかなか始まりません。
整くんを呼び込んだ汐路(しおじ)を始め、他の3人のいとこたちも、
整くんの話を聞こうとしないのです。
整くんは彼らをこう呼ぶ。
「話をきいてくれない一族」と。
旧家で過去から続く不審死。
蔵に隠された謎。
話はミステリアスでおどろおどろしくなっていって、
まさに横溝正史的な話になっていきます。
そんな中で、整くんは・・・。
これまで彼女どころか一人も友だちはいなかったと以前から言っていました。
本巻では、人と一緒の部屋では眠れないし、人の家のお風呂に入るのもイヤ、
自分の汚れ物を他の人に洗濯されるのもイヤ、などと言っています。
そうは言いながら、やむを得ない事情が生じて、狩集家のお風呂に入ってしまったり、
ぱんつまで洗濯してもらうハメになったり。
でも自分で決めたタブーなので、一度その壁を越してしまえば問題は消滅するようなのです。
2度目のお風呂はすんなり入ってしまった。
彼自身「最近わかったけれど、僕は攻撃されると結構攻撃的になる」
などとも言っています。
次第に整くんが人として成長していく物語だったのですね。
彼の根本的な問題が何であったのかは、
テレビドラマの方ではその片鱗がうかがえるシーンがありました。
だからいつもきっちりマフラーを巻いているのかと、大いに納得したところではあります。
こちら原作コミックではまだそのことには触れられていません。
けれど、子供だからと言ってその前で不用意なことを口にしてはいけない。
子供はバカだと思うかも知れないけれど、そうじゃない。
あなたは子どもの頃バカでしたか?
そう問いかける整くんには、彼自身の子どもの頃の
そうした苦い想い出がたくさんつまっているようです。
そしてまた、彼は男性でありながら、女性が置かれている弱い立場を思いやる言動も多いですね。
このことも、もしかしたら彼の母親が置かれていた立場を見てきたからなのかも・・・。
このエピソード、本巻で終わるのかと思いきや、まだ「続く」でした・・・。
ほとんど謎は解き明かされたようではありますが。
月に一冊くらいと思っていたのに、これではすぐに読みたくなってしまうではありませんか!!
いやいや、ゆっくり、じっくり行きましょう・・・。
「ミステリと言う勿れ 3」田村由美 フラワーコミックスα
満足度★★★★☆
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