映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

大事なことほど小声でささやく

2023年01月02日 | 映画(た行)

人は皆一人。でも一人じゃない。

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昼はジムで肉体を鍛え、夜はジム仲間が集う「スナックひばり」を営む、
マッチョなオカマ、ゴンママ(後藤剛範)。
スナックに集まるのは実に個性豊かな面々で、いつもわいわいと騒がしいのですが、
実のところはそれぞれに悩みを抱えている様子。
ゴンママがそれぞれ一人一人の悩みや哀しみに寄り添っていきます。

ということで、森沢明夫さんの原作はおそらく、
一人一人のストーリーを各一話とした短編になっているのでしょう。

本作はその中の「四海良一」(深水元基)のストーリーがメインとなっています。

四海は、すなわち歯科医で、皆には「センセイ」と呼ばれています。
マシンガントークがうりで、陽気。
ところがその実、家庭生活に悩みを抱えているのです。
妻との関係が、もうほとんど修復不能に思えるほど冷え切っています。
家に帰るのも憂鬱で、帰宅前に一人路上でたたずんでいたりする・・・。

そんな彼の気持ちに変化を与えるのがゴンママというわけです。
的確な回答を与えたりはしませんが、ほんの少しの共感と慰めが力になる。

というのも、ゴンママ自身も自信満々でハッピーというわけではないから。
時には孤独に押しつぶされそうになることも・・・。

けれども、彼はセンセイに言う、
「人間は所詮一人。でも一人じゃない・・・。」
ちゃんとあなたを見ている人がいる。
わかり合える友がいるよ・・・と。
それはゴンママが自分自身に向かって言っていることなのかも知れません。

本作のジムに集まる人々はみな、
それぞれの孤独を忘れるためにトレーニングに励んでいるようではあります。
そして、孤独に耐えることができるように強くなりたいと思っている。

原作も読んでみたくなりました。

<サツゲキにて>

「大事なことほど小声でささやく」

2022年/日本/98分

監督:横尾初喜

原作:森沢明夫

出演:後藤剛範、深水元基、遠藤久美子、峯岸みなみ、田中要次

 

満足度★★★☆☆



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