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「江神二郎の洞察」有栖川有栖

2017年07月10日 | 本(ミステリ)
おトクな一冊

江神二郎の洞察 (創元推理文庫)
有栖川 有栖
東京創元社


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英都大学に入学したばかりの1988年四月、
すれ違いざまにぶつかって落ちた一冊―中井英夫『虚無への供物』。
この本と、江神部長との出会いが
僕、有栖川有栖の英都大学推理小説研究会(EMC)入部のきっかけだった。
アリス最初の事件「瑠璃荘事件」など、
昭和から平成へという時代の転換期である一年の出来事を描いた九編を収録。
ファン必携の"江神二郎シリーズ"短編集。


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有栖川有栖さんの「江神二郎シリーズ」短編をまとめた一冊です。
大学生アリスが推理小説研究会に入部してからの
およそ1年間に起こったできごと。
これまで時期をバラバラに発表されたものを、時系列に沿って並べ変えてあるので、
登場人物たちの関係性がわかりやすい。
このシリーズの長編第一作「月光ゲーム」の事件が
彼らの上に大きく影を落としているというところも趣があります。
有栖川有栖さんといえば最近では「火村准教授シリーズ」のほうが表立っているのですが、
こうして読み返すと、青春の只中、学生アリス、
ちょっとしたノスタルジーも感じられて、これもいいですよね~。


本巻の中には以前別のアンソロジーで読んだものもありましたが、
例によって中身はほとんど覚えていなかったので、
バッチリ楽しめました。
中でも「除夜を歩く」は、本巻(単行本)のための描き下ろしだそうで、
望月創作の推理小説が読めたり、
江神とアリスのミステリ談義があったりするのが
すごくおトクな一冊となっています。
「開かずの間の怪」の怪談話も楽しめました。
漫才コンビみたいな望月・織田両先輩の茶目っ気がステキです。


さて、著者が「このシリーズは5つの長編を考えている」、
とは本巻のあとがきにもあるのですが、
今現在の最後の長編「女王国の城」のあとがきにもそれは明言されていました。
私が「女王国の城」を読んだのが2007年。
その時のブログに次作は「また15年も先でなければいいのだけれど」
と私は記しているのですが、なんとそれからもう10年も経っている。
あと5年なんてあっという間ではありませんか!!
今は、私が生きているうちに出してほしいと、言い換えることにします・・・(T_T)
とりあえず、ほとんど忘れている「月光ゲーム」を読み返してみようかしらん。

「江神二郎の洞察」有栖川有栖 創元推理文庫
満足度★★★★★


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