映画と本の『たんぽぽ館』

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ハッチング 孵化

2023年10月27日 | 映画(は行)

孵化した怪物の正体

* * * * * * * * * * * *

フィンランド作品。
なので舞台もフィンランド。

両親と弟と共に暮らす12歳の少女、ティンヤ。
彼女の母は、完璧で幸せな家族の動画を世界へ発信することが生きがい。
ティンヤは、自分を抑えて母の望む姿になろうと、
体操の大会優勝を目指して日々練習に励んでいます。

そんなある日、ティンヤは森で奇妙な卵を見つけ、
家族に内緒でその卵を自分のベッドで温め続けます。
卵はそれ自体が大きく成長していき、ついには孵化。
孵化したそれは鳥のなり損ないのような姿でおぞましく醜いのですが、
ティンヤは世話をしはじめます。
そしてやがてそれは恐るべき姿に変わっていく・・・。

ホラーですが、これはじわじわと恐い。
この物語で一番問題なのは、ティンヤの母親です。
自分の家族こそが仲良く幸福で理想の家族と周囲に認めてもらいたい、
ひいては、自分こそが最も幸福と思いたい。
ただその一心で家族の映像をSNSに流し続けます。
実のところ、家族1人1人のことなど何も考えていない。
表面上はいかにもやさしく気の利く母のようではあるけれど、
彼女が望んでいるのは、家族が自分の思う通りに行動し成果を出すことのみ。
そしてそういう形で、彼女は家族をがんじがらめに支配しているのです。

ティンヤは、その母に反抗することなど思いもよらず、
体操は近頃伸び悩んで失敗ばかりなのに、母親のためにやめることもできない。
そして母が父とは別の男性とキスしているところを見てしまうのですが、
母は、彼に恋をしていると公言し、
堂々と彼の家に泊まりに行くと言って家を空けるようになったりします。

ティンヤは、進歩的な母の考えに納得したようなフリをして
にこやかに母を送り出しますが、
思春期の女の子がそんなことに納得できるわけがない。

とまあ、こんなわけで、
ティンヤが孵化させたのは、彼女の中の人に言えないネガティブな感情
ということなのだろうと思います。
それ故に醜く、凶暴でもある。
そしてつまりそれは、ティンヤと一心同体でもあるということで・・・、
本作の展開は十分に納得できるのです。

そして最後まで見てから、私は思う。
実はこの母親も、かつて卵を孵化させたのではないか・・・? 
そして育った怪物に、いつの間にかすり替わられてしまっていたのではないか、と・・・。

 

<Amazon prime videoにて>

「ハッチング 孵化」

2021年/フィンランド/91分

監督:ハンナ・ベルイホルム

出演:シーリ・ソラリンナ、ソフィア・ヘイッキア、ヤニ・ポラネン、レイノ・ノルディン

 

グレートマザー度★★★★★

醜悪度★★★★☆

満足度★★★.5



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