映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

十月十日の進化論

2024年03月04日 | 映画(た行)

孤立しないで

* * * * * * * * * * * *

第7回WOWOWシナリオ大賞受賞作。
なので、さすがに良い感じのストーリーとなっています。

 

独身、アラフォーの昆虫分類学博士、小林鈴(尾野真千子)。
彼女は留学までして昆虫の研究にこれまでの人生をかけてきたのですが、
しかしそれを生かす仕事にはつけず、
どうにか潜り込んだ大学の研究室のバイトも解雇されてしまいました。

その夜、戸籍には入っていない実父(でんでん)・中村保が営む喫茶店で、
モトカレの安藤武(田中圭)と再会。
武は酔いつぶれた鈴を家まで送っていきますが、
2人は酔った勢いで一夜を共にしてしまいます。
それから5週間後、鈴の妊娠が発覚し・・・。

 

失業したところで予期せぬ妊娠。
・・・これは確かに迷いますね。
そんなとき鈴は、「人間は胎児の間の十月十日で生命30数億年の進化を再現する」
という文章を読んで、生む決意を固めていきますが、
武には子供のことを切り出せません。

 

う~む、それはちゃんと伝えるべきでしょう、
そのお腹の子は、あなた1人の子じゃないのだから・・・と、
見ているこちらはちょっとやきもきしてしまうのですが・・・。
でも、そんなことはいつまでも隠し通せることではない。
ついにそのことを知った、武がいう言葉がいい。

「自分1人で育てていく。手助けなんて必要ない。」という鈴に
「それは自立ではなくて孤立だ。」というのです。
しかしその言葉も空しく、鈴の決意は簡単には変わらないようなのですが・・・。

でも、肩肘張らずに、人に頼るべき所は頼っていいのですよ。
人はどうしたって1人では生きていけないのだから・・・、
としみじみ思います。

本当は好きな人なのに、いじをはって拒絶してしまうという、
母と娘の似たような人生のあり方もまた興味深いところでした。

 

<Amazon prime videoにて>

「十月十日の進化論」

2015年/日本/118分

監督:市井昌秀

脚本:栄弥生

出演:尾野真千子、田中圭、でんでん、リリィ

 

満足度★★★★☆