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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「暗い越流」若竹七海

2017年04月23日 | 本(ミステリ)
葉村晶も登場

暗い越流 (光文社文庫)
若竹 七海
光文社


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凶悪な死刑囚に届いたファンレター。
差出人は何者かを調べ始めた「私」だが、その女性は五年前に失踪していた!(表題作)
女探偵の葉村晶は、母親の遺骨を運んでほしいという奇妙な依頼を受ける。
悪い予感は当たり…。(「蝿男」)
先の読めない展開と思いがけない結末
―短編ミステリの精華を味わえる全五編を収録。
表題作で第66回日本推理作家協会賞短編部門受賞。

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若竹七海さんの短編集です。
あの、女探偵葉村晶登場の作品も入っているので、即購入。
でも、これはちょっとつまみ食い感覚。
後にシリーズ短編集が出るときには、ちょっと損した気分になってしまうかも・・・。


さて、表題作「暗い越流」
凶悪な死刑囚に届いたファンレター。
一体誰が何のために?ということで、
齋藤弁護士に依頼された「私」は、差出人のことを調べ始めるのですが・・・。
その女性は5年前に失踪していたのです・・・。
関わる人々のそれぞれの心の闇が浮かび上がる、
ちょっと怖い話。
この作品にはちょっとした仕掛けがありまして、
「齋藤弁護士」と「私」についてなんですが・・・。
最後に明かされるそれは、はじめから気づかない人なら気づかないかもしれない謎解き。
面白いです。
しかし、「私」自身もまた抱えている心の闇に、暗澹とするラストなのでした。


「蠅男」と「道楽者の金庫」が、葉村晶シリーズです。
とにかくいつも酷い目に遭うというお約束の葉村晶。
双方とも、冒頭にまずその受難シーンがあって、
その後に事の起こりから順番に語られるという構成。
なるほど、葉村晶シリーズはこういうスタイルに定着させるのかもしれません。
運が悪い・・・いえ、これだけの体験をしながら、
気絶やら入院やらだけで済んでいて、ちゃんと生きているというのは、
むしろ運がいいのではないかという気がしてきました。


「暗い越流」若竹七海 光文社文庫
満足度★★★★☆