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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

言の葉の庭

2016年10月04日 | 映画(か行)
雨も降らぬか



* * * * * * * * * *

以前からこの趣のある題名に興味を惹かれていたのですが、
「君の名は。」で新海誠監督をもっと知りたくなったこともあり、拝見しました。



靴職人になりたいという夢を持つ高校生タカオは、
雨が降ると学校をサボり公園の日本庭園で靴のデザインを考えていました。
ある雨の日、謎めいた年上の女性ユキノと公園の東屋のベンチで出会い、
いつも雨の日にだけ会うことになり、心を通わせるようになります。
しかし、梅雨の季節も終わり、夏休みはバイトに明け暮れて、
しばらく会うことがないまま、9月の新学期。
二人は意外な場所で顔を合わせるのです。





水面に落ちる雨のしずく、水面に反射する日光のきらめき・・・
やはり、光の表現がものすごく上手いなあ・・・と思いました。
うっとりします。
新緑に落ちる雨の中で、みずみずしい草木の匂いが伝わるような気がします。
新宿の街なかのこんな緑豊かな場所。
私はやっぱり晴れの日のほうが良いけれど、
もし通勤途中にそれがあったら、
ほんとに仕事をサボってのんびり歩きたくなってしまいそうです。



一人の少年の将来への不安や年上の人へのあこがれが、
同じくみずみずしく香ってきますね。
ん~、それにしても「靴職人」への夢というのが確かに素敵だとは思うのですが、
あまりにもマイナーというか・・・。
どうしてそうなりたいと思ったのか、というようなエピソードが欲しかった。
あ、お母さんへ贈った靴がきっかけだったのか。
なんかイマイチ弱い。



そして深海監督はやはり古典的な歌がお好きのようで、
本作に出てくるのは万葉集から

「鳴神(なるかみ)の 少し響(とよ)みて さし曇り 雨も振らぬか 君を留め」

その返歌として

「鳴神の 少し響みて 降らずとも 我は留まらむ 妹し留めば」


雨の日に逢瀬を重ねる二人というイメージにぴったりですが、
何しろ高校生の初恋ものではありますので、もっと新鮮で青い物語ですね。



アニメという手法を活かし、ダイナミックなストーリー性をもたせた「君の名は。」が
やはり新海アニメの進化形と言えると思います。



「言の葉の庭」
2013年/日本/46分
監督・原作・脚本:新海誠

映像美★★★★★
満足度★★★.5