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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密

2015年03月21日 | 映画(あ行)
心震える実話



* * * * * * * * * *

アラン・チューリングは第二次世界大戦時、
ドイツ軍が世界に誇った暗号機“エニグマ”による暗号の解読に成功し、
連合国に勝機をもたらしたイギリスの数学者です。
本作は、その彼がチームで暗号解読に至るまでを描いていますが、
その偉業達成の物語と言うよりは、
アラン・チューリングその人の苦悩に満ちた人生を描いている
と言っていいでしょう。



ケンブリッジ大学の特別研究員、
27歳にして天才数学者と称せられるアラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ)は、
ドイツの暗号の解読チームの一人となりました。
しかし、協調性のないチューリングは
他のメンバーと対立していきます。
そんな中、当時としては珍しい女性メンバーであるジョーン・クラーク(キーラ・ナイトレイ)が
アランを理解し支えるようになり、
次第に他のメンバーとも打ち解け、ようやくチームにまとまりができてきます。

アラン・チューリングはこの時、暗号解読のための大きなマシンを作成。
これが彼の名をとってチューリングマシンと呼ばれるのですが、
それでもなかなか成果が出ません。
ついには予算が打ち切られチーム解散寸前まで行きますが・・・。



暗号を解くまでの苦労話が実際メインではありますが、
実は、解いた後から苦悩は始まるのでした。
ここの展開が、実に意外ですが、
まさに「秘話」なのです。
英国政府が50年以上隠し続けたという・・・・。
彼らは「神」なのか、
それとも心を持たない冷徹な「マシン」なのか。
これだけでもとてつもない苦しみだと思うのですが、
それに加えてアラン・チューリングには特異な性癖がありまして・・・
つまり、同性愛者なのです。
あ、ネタばらしかもしれないのですが、
ここまでは映画解説などにもありますので、お許しを。
なんと、当時はこれが「犯罪」なのです。
並外れた頭脳を持ち、戦争終結への貢献は多大であるにもかかわらず
人々に忌み嫌われその上に犯罪者扱い・・・。
彼のその後の運命が最後に語られますが、
そうなるしかないか・・・と、辛いながらも納得できてしまいます。
絶望的に周囲に理解を得られず、孤独だったのでしょうね・・・。



そしてまた、おどろくべきことに彼の作ったチューリングマシンこそが、
現在のコンピュータの元になったものだという・・・。
実にノーベル賞をいくつもらってももらい足りないくらいの偉業なのですが、
その考案者に対してのこの仕打は、あんまりではありませんか・・・。
よく映画のキャッチコピーに「心震える」なんていう言葉が使われますが、
本作を見た直後の私、本当に「心震え」ていました。
ああ、「心震える」っていうのはこういうことだなあ・・・と逆に納得できたりして。



ここの所、実話を元にしたという映画を多く見ています。
「フォックスキャッチャー」、
「アメリカン・スナイパー」、
「博士と彼女のセオリー」
そして本作。
どれも衝撃でした。
人の世の出来事は、なんとドラマチックで不思議に満ちていて、そして悲しい。
「映画の力」を感じます。



「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」
2014年/イギリス・アメリカ/115分
監督:モルテン・ティルドゥム
出演:ベネディクト・カンバーバッチ、キーラ・ナイトレイ、マシュー・グード、マーク・ストロング

歴史発掘度★★★★★
特異な人生度★★★★★
満足度★★★★★