映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

つやのよる

2013年08月29日 | 映画(た行)
愛する人を奪われた妻、恋人、娘たちの心の揺れ



* * * * * * * * * *

井上荒野原作の恋愛群像劇です。
家族を捨て、艶(つや)という女性と駆け落ちし、
大島で暮らしている松生(阿部寛)。
しかし、妻は不治の病に冒され昏睡状態。
妻はその名の通りお色気たっぷり、
次々に男を変え、駆け落ちしてきたこの島でさえ男漁りで島中に知れ渡っている。
妻を愛しても愛しても報われない松生は、焦燥し切った中で考える。
艶と関係のあった男たちに
彼女の死期の迫っていることを知らせてみよう、と。
本作は、その艶の過去の男たちの様々な今、
そしてその妻、恋人、娘たちの心の揺れと愛の有りようを描いていきます。



いやいや、よほど魅力的な女性なのでしょう、艶は。
本作ではずっと病床で酸素マスクを付けた姿しか映し出されず、
彼女のことは登場人物が語る姿を想像するしかありません。
過去の男たちは、
ある者はもう過去を忘れ、
ある者は腑抜けたまま、
またあるものは艶を失ったためか自殺、
実際それぞれです。
けれどその周りの女性たちは、もっとしたたかなように思われる。
それはある種の諦念かも知れないし、
結局は生き残ったものの勝ちであることを知っているのかもしれない。
そして男などに振り回されす、
自分らしく生きていくことの方が大事と思っているようでもある。
なんだか彼女たち一人ひとりに共感を覚えます。
艶には全く共感できないのですが。

たぶん私は、他の妻たちと似たようなハートの持ち主なのかもしれない。
夫の浮気を知って、ヒステリーで泣き喚くとか、
そういうふうには絶対ならないな・・・と、自覚しております。


・・・それにしてもなかなか豪華キャストでしたね。
小泉今日子VS荻野目慶子のバトルは見ものでした。



阿部寛さんは、本作のために10キロほども減量をしたそうです。
頬はこけ、目も落ち窪んでギラギラ。
ほとんど狂気の淵にいる感じ。
迫力があります。
二人乗りの自転車で坂道を登るシーンは、
いやはや役者さんも大変だなあ~、とついリアルに心配してしまいましたが。


本作の題名は「通夜の夜」でもあったのか・・・。
ラストが思いがけずにいい。



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2012年/日本/138分
監督:行定勲
原作:井上荒野
出演:阿部寛、小泉今日子、野波麻帆、風吹ジュン、真木よう子、忽那汐里、大竹しのぶ
恋愛の多様度★★★★☆
それぞれの生き方★★★★★
満足度★★★★☆