映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ペーパーボーイ 真夏の引力

2013年08月13日 | 映画(は行)
ドロドロ、ぐちゃぐちゃ、猥雑、野卑・・・だけど。



* * * * * * * * * *

1969年、フロリダ。
問題を起こし大学を追われたジャック(ザック・エフロン)は、
特にすることもなく、父の会社で新聞配達を手伝っています。
そこへ、大手新聞社の記者である兄、ウォード(マシュー・マコノヒー)が、
ある取材のために帰省。
殺人事件で死刑囚となっているヒラリー(ジョン・キューザック)という男に冤罪の疑惑があるため、
調査に来たのです。
ジャックはウォードの調査を手伝うことに。
又そこに、ヒラリーの婚約者であるというシャーロット(ニコール・キッドマン)が現れ、
彼女も調査に加わります。



死刑囚にファンレターを出したり愛を告白するというのは、
「二流小説家」にもありました。
私、そこで知っていなければ、
今作、ワケがわからないままだったかもしれません。
とにかく世の中にはそういうイカれた女がいるということです。
しかし、驚くのはそのイカれ女を演じるのがニコール・キッドマンということ・・・。
いやはや、ものすごい汚れ役なのですが、
これをしれっと演じてしまうのが彼女のスゴイところです。
生唾を飲むシーンあり。
あードキドキした・・・。
いかにもお馬鹿な女風に、化粧がどきつく、このプラチナブロンドはカツラだったりしますが、
最後の方に、わりと素に近い顔のシーンがあり、
ああ、やっぱりこの方がキレイだな・・・と思わせるところも心憎いです。



さて汚れ役といえば、ニコール・キッドマンばかりではありません。
ジョン・キューザック。
死刑囚・・・ですが、イメージではやっぱり冤罪でしょ、と思いますよね。
しか~し!! 
出てきて10秒で、やっぱりこいつが犯人だろ!!と思いますよ。
粗野でいい加減で、誠実のカケラもありそうにない人物だ・・・。


そしてまた、兄のウォード。
知的でスマートなマシュー・マコノヒーですが、
なんと弟も知らない隠れた一面が・・・!!



これだけの豪華メンバーを、よりによってこんな使い方をするとは、
監督、恐るべし。


今作は、陽光きらめくフロリダではなくて、
ワニの住む沼地、暑苦しく、じとじとギラギラのフロリダを映し出します。

なんといいますか、
猥雑、野卑、ドロドロ、ぐちゃぐちゃ、ズブズブ、汚くて、不潔で、臭くて、貧乏・・・
なんだか耐え難い場面の連続なのです。
ではありながらも、力がありますね。
圧倒されて、目が離せない。
う~ん、スゴイものを見てしまった・・・。
脱帽。


本作、結局当初の事件については、謎が解けないままだったりするのですが、
まあ、それもどうでも良くなってしまう、
迫力に満ちた作品でした。
こんな中で、若々しいザック・エフロンの存在が、
一種清涼剤のように救いです。
童貞君ではありますが、彼がまた、スレたワルだったりしたら本作は救いようがありません。
彼の幼い頃に母が家を出たため、
母親代わりに彼を育ててくれた黒人メイドとのやり取りが又、
ちょっぴり心を温めてくれます。


「ペーパーボーイ 真夏の引力」
2012年/アメリカ/107分
監督:リー・ダニエルズ
原作:ピート・デクスター
出演:ザック・エフロン、ニコール・キッドマン、マシュー・マコノヒー、ジョン・キューザック、デエビッド・オイェロウォ

猥雑さ★★★★★
推理★☆☆☆☆
満足度★★★★☆