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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

タクシー・ドライバー

2012年01月24日 | 映画(た行)
“空気のような存在”の反抗

                  * * * * * * * *

1976年公開のこの作品は、
60~70年代にかけてアメリカン・ニューシネマと呼ばれた作品群を代表する作品の一つ。
などと物知り顔で言いながら、私は初めて見たのですが・・・。
この時代で忘れてはならないのはベトナム戦争ですね。
世の中は殺伐とし、若者の心は空虚。
アメリカのそんな世相が映画作品にも影を落としていたのでしょう。
日本はその頃、まさに高度成長期で、
アメリカの当時の雰囲気とはちょっと違う印象ですが。


ここに登場する青年トラヴィスは、元海兵隊員であり、
都会の中で一人空虚な心をもてあましています。
タクシー・ドライバーとして就職はしましたが、
夜勤で汚れきった街の様子ばかりをみるにつけ、
身の回りのことに憎悪を深めていきます。
一見正義感に燃えるまっすぐな青年にも思えるのですが、
そうではなく、ただ自己中心的な思いにとらわれているだけというのが見えてきます。


始めに彼は、大統領候補者の事務所で働く女性に心ひかれます。
タクシーの中からいつも彼女の様子をうかがったり、と、
今なら立派なストーカー行為ですが、この当時はまだそういう言葉が無かったですね。
一時は彼女の興味をひき、うまく行きかけるのですが、
でも結局それはダメになります。
これはつまり格差社会の中ではっきり負け組の方にいるトラヴィスは、
もうそこから這い上がる可能性を閉じられてしまった、ということを暗示しているのでしょう。
また彼は13歳の売春婦を救い出そうともするのですが、
その彼女からも拒否されてしまいます。


誰からも必要とされない自分。
考えてみると、タクシー・ドライバーというたった一人の仕事も、
彼の孤独を強調しているのです。
彼は、体を鍛え銃を手に入れ、“何者か”になろうとする。
それは正義を行う者でも単に殺人者でも、もはやどうでもよくなってしまっているのです。
人々にとって“空気のような存在”でさえなければ。
こういう心理は実際の犯罪にも多くあるような気がします。
心が満たされている人は、こういう犯罪は犯しません。
「チャプター27」にも少し、似ていると思いました。


さて、ロバート・デ・ニーロがなんとみずみずしく若いこと!!
「ニューイヤーズ・イブ」など、最近のロバート・デ・ニーロしか知らない若い方は、
是非見ていただきたい。
今もまた、その渋みが増したお姿はかっこいいのですが、
若い頃もまた一段とステキです。
モヒカンのロバート・デ・ニーロなんて考えたこともなかったですけど。

タクシードライバー コレクターズ・エディション [DVD]
ロバート・デ・ニーロ,シビル・シェパード,ピーター・ボイル,ジョディ・フォスター,アルバート・ブルックス
ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント


1976年/アメリカ/114分
監督:マーティン・スコセッシ
脚本:ポール・シュレイダー
出演:ロバート・デ・ニーロ、シビル・シェパード、