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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ベニスに死す

2012年01月10日 | 映画(は行)
“究極の美”の前では、ひれ伏すしかない



                  * * * * * * * *

ニュープリント版として上映されている今作は、1971年作品で、
その当時も美少年が登場するということで、かなりの話題作でした。
私はその後TV放映をみただけで、よくわからなかったというのが正直なところです。
今思えばまだ10代ですから、わからなくて当然。
で、今回見てよくわかったかといえば、
やはりその神髄には触れていないのかもしれません。


ドイツの老作曲家アシェンバッハが、静養のためベニスを訪れます。
その滞在先のホテルで、ポーランドから来た美少年タジオに魅せられてしまう。
重く美しいマーラーの交響曲が流れ、
極端に台詞は少なく、ひたすらベニスの光景とアシェンバッハ氏、
そしてタジオの姿が映し出されます。
この作品、思ったほど性的な色合いが濃くありません。
アシェンバッハがタジオに見出したのは性的倒錯、欲望というよりは、
究極の“美”のようです。
完璧なまでに容姿が美しいばかりでなく、
若々しくしなやかで、生命力に満ちている。
しかしタジオはまた、意地悪な視線でアシェンバッハを挑発しているようにも思われる。
その単に明るい一方ではなくて陰りの部分も持ち合わせることによって、
恐ろしいまでの色香がにじみ出ているわけです。



アシェンバッハは、タジオの美に圧倒され、ひれ伏すほかない。
彼の美を認めれば認めるほど、己の矮小さ醜悪を自覚していくのです。
けれどその苦しみがまた彼の恍惚感を高めるという・・・。
マゾヒスティックですね。
タジオの美は天使のようでもあり、
いえ、もしかすると死病をもたらす堕天使なのかも。
彼の存在自体、死の間際に見たアシェンバッハ氏の幻なのでは・・・。
そんな想像までしてしまう、人間離れしたビョルン・アンドレセンでした。


さて、このビョルン・アンドレセンは、当時15歳。
金髪碧眼のスウェーデン人。
この役のため選び出された新人だそうですが、
彼自身は音楽活動の方に興味があったようで、その後俳優となってはいません。
おや、今調べたら私と同年生まれでした!! 
当然ご存命ですが、今現在のお顔は多分見ない方がいいですね・・・。
15歳でしか持ち得ない美しさというのはありますよね。
私はこの顔、オスカルに似ていると思うのですよ・・・。
金髪の巻き毛がまた・・・。
少女漫画に登場しそうな美少年ということか。

それとは別ですが、確か坂田靖子さんの漫画だったと思うのですが、
同性愛者を揶揄するセリフに「ベニスで死ね」というのがありまして、
未だに覚えているくらいですから、私はずいぶん気に入ったのでした。

ベニスに死す [DVD]
ダーク・ボガード,ビョルン・アンドレセン,シルバーナ・マンガーノ,ロモロ・ヴァリ
ワーナー・ホーム・ビデオ


1971年/イタリア・フランス/131分
監督:ルキノ・ビスコンティ
原作:トーマス・マン
出演:ダーク・ボガード、ビョルン・アンドレセン、シルバーナ・マンガーノ