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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

トロッコ

2011年08月25日 | 映画(た行)
トロッコの行き着く先は・・・



            * * * * * * * *

先日は「おじいさんと草原の小学校」でケニアの歴史をかいま見ましたが、
今度は台湾の歴史を少々。


台湾人の父が亡くなったため、
敦少年は、母と弟と共に父のお骨を持ち、父の実家へやって来ました。
日本語を話す祖父に迎えられ、敦はそこで数日を過ごします。

敦は父が持っていた“トロッコと少年”が写った写真を祖父に見せたのですが、
そこに写った少年は父ではなく、祖父の子供の頃と解りました。



その昔、日本が台湾の山から木を切り出し運ぶために、
そのトロッコの線路を作ったのです。
少年だった祖父は、日本にあこがれ、
そのトロッコが日本につながっているように思えたのです。
また青年時の祖父は日本兵として働いたこともあったのですが・・・。


私は、韓国や台湾、日本の統治下にあった当時の人々には、
ただ嫌な思い出しかないのではないかと思っていました。
けれども、特にその当時子供だったような人には、
日本にあこがれた、そんな思い出もあるのだと知りました。
けれども、その後がいけません。
戦争で負けた日本は、さっさと撤退して知らぬフリ。
日本としてやりかけたことも、苦労をかけたり蹂躙したことも無視したまま・・・。
そうして、なにがしかの心の傷や、複雑な胸の内をもったままの人がいる、
ということです。
知っているつもりで、知らないことがまだまだたくさんありますね・・・。


仕事を持ち忙しく、いつもガミガミと怒鳴りがちな母に、
敦は若干の反感を抱いています。
けれど、父や祖父の生まれ育ったこの地で、
母の弱さや自らのルーツを知り、一回り成長していくのです。
泣きべそをかく弟の手を引き、山道を歩き通す敦は、もう立派なお兄さんでした!



緑の濃い台湾の村。
そこは日本の田舎とほとんど同質ですね。
異国という感じがしない。
全編を通して、
「そこにいないお父さん」が感じられ、ものさみしい気持ちが伝わってきます。
そんな中で子供たちが寂しさを忘れた一瞬。
それが緑の中をトロッコで駆け抜けるシーンです。
その鮮烈な高揚感。
素晴らしいシーンでした。

私には、中国語を勉強し、何かしら台湾と日本の架け橋となるような仕事に付く
敦君の将来が見えるような気がしました。
もうしばらく、おじいさんには長生きして欲しいですね!!

トロッコ [DVD]
尾野真千子
アミューズソフトエンタテインメント



「トロッコ」
2009年/日本/116分
監督・脚本:川口浩史
出演:尾野真千子、原田賢人、大前喬一、ホン・リウ、メイ・ファン