映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

キッズ・オールライト

2011年06月26日 | 映画(か行)
形は変わっても、家族の絆は同じ



            * * * * * * * *

この作品、家族がテーマですが、現代の最先端です。
ロサンゼルス郊外に住むレスビアンのカップル、
ニック(アネット・ベニング)とジュールス(ジュリアン・ムーア)。

二人は結婚し、それぞれの子供(姉・ジョニと弟・レイザー)がいます。
この子供たちは、精子提供を受けて人工授精でできたのです。
ジョニはちょうど高校を卒業し、秋からは大学へ進学が決まっている、
そんな年頃です。
子供たちは、自分たちの本当の父親(マーク・ラファロ)つまり精子提供者を探し出し、
実際にあってみることにします。



一時代前にはあり得ないストーリーですが、
いまならまあ、あるかもね・・・という程度。
いえ、映画だからですね。
たとえば我が家のお隣に奥さんが二人いて、
「私たちは結婚していて、この子供たちは人工授精でできました」
なんて聞いたら目を丸くしてしまいますし、
そんな噂はあっという間に町内会の端まで伝わりそうです。
けれど作品中では、周りの人々は実に寛大に受け止めていました・・・。
本当にアメリカの家族事情はそこまで行っている・・・?

まあ、それはさておき、生物学上の正しい「父親」は、
思いの外フランクでナイスガイ。
いわば“父親”不在の家庭に育った彼らにとって、
見慣れない“男性”がたくましくかっこよく映るのはむりもないことです。
やがてこの家族と彼は家族ぐるみの付き合いになっていきますが、
まずいことにジュールスと彼の気持ちが接近していく・・・。


ニックは医師で、どちらかというと普通の家庭の「父親」役に近いのです。
ジュールスはいろいろな夢もあったけれどなかなかうまくいかず、
主婦業に甘んじてきた。
今は、ガーデニングの仕事をしたいと思ってはいるのですが・・・。
同性のカップルであっても、
結局は普通の夫婦と似たような形になってしまうということでしょうか。
一方が仕事をして稼いで、
もう一方が家事育児を専門にする、
こういう分業体制はやはり必要なことらしい。

これが普通の夫婦であれば、どこにでもある浮気話。
結局のところ、とても今様な家族を描写しながらも、
根底にあるのはごく一般的な家族の絆の物語といえると思います。
長く過ごした家族の絆は、
血のつながりよりも強い。
うーん、でも考えてみるとこの浮気騒動さえなければ、
これはこれで、5人の非常にユニークな家族になれたのにな。
残念です・・・。



ところで、ジュールスの手がけたガーデニングは未完に終わってしまったのですね・・・。
西海岸の気候の元のガーデニング。
サボテンなんかもあってすごく面白そうだったのですが。
私はその完成図を是非見たかった・・・。

「キッズ・オールライト」

2010年/アメリカ/106分
監督・脚本:リサ・チョロデンコ
脚本:スチュアート・ブラムバーグ
出演:アネット・ベニング、ジュリアン・ムーア、マーク・ラファロ、ミア・ワシコウスカ、ジョシュ・ハッチャーソン