映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「魔女の死んだ家」 篠田真由美

2011年06月25日 | 本(ミステリ)
語り手は誰?

魔女の死んだ家 (講談社ノベルス)
篠田 真由美
講談社


             * * * * * * * *

桜井京介again! というのが目をひきました。
建築探偵桜井京介シリーズは、先にめでたく完結したわけですが、
この本はそのシリーズ、スピンオフというわけです。
でもこれは実際にシリーズ完結後に著されたわけではなく、
2003年、講談社の「ミステリーランド」叢書で少年少女のため描かれた作品。
この時、篠田真由美作品と言うことで、
私も興味はあったのですが、読まないままに終わっていました。
このたびは、このノベルスのために全面的に改稿したそうです。
何にしても、また桜井京介を読めるのは、幸せ。


この本ではその桜井京介が「名探偵」役ではありますが、
実は名前は出てきません。
桜井京介を知っている人が読めばすぐ解るのですが、
知らない人は知らないなりに、ただのステキな探偵ということで、
読めるようになっています。
ですから、前シリーズを読んでいない方も、
気にせずに読んでくださいませ。


作品の舞台は、やはり篠田真由美さんらしく、
ある資産家の大きな西洋屋敷。
その持ち主である小鷹狩都夜子(こたかりつやこ)が密室で殺害されました。
同じその部屋にいた元婚約者、橘(たちばな)が逮捕されたわけですが、
それにしても不可解なことが多い。
証言者によって全く異なる都夜子と橘の印象、そして二人の関係。
本当に橘が犯人なのか。
事件の真相は・・・。


この物語のキモは、この「事件の真相」というよりも、
登場人物の隠された正体なんですね。
これは読者に向けて罠が仕掛けられているので、 
どうぞ騙されませんように。
・・・というか、騙されるから面白いのですけれど。


あとがきでほんの少し、
その後の蒼のこと、深春のことなどにもふれています。
実のところ、シリーズファンとしては、
これではぜんぜん食い足りないのですが、
まあ、またこの先を楽しみにすることにしましょう。


「魔女の死んだ家」篠田真由美 講談社ノベルス
満足度★★★☆☆