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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「阪急電車」有川浩

2011年04月23日 | 本(その他)
ローカル電車の中のドラマ

           * * * * * * * *

阪急電車今津線を舞台に繰り広げられる、連作短編集。
宝塚駅から西宮北口駅まで駅は8つ。
まず往路で乗客となる様々な人に焦点を当てていきます。

よく図書館で見かける女性と隣り合わせになった男子。

恋人をとられた相手の結婚式に真っ白なドレスで乗り込んだ女性。

すぐキレて、暴力をふるう彼氏と別れようと決意する女子。

初々しい恋の予感の出会いをした二人・・・

西宮北口から折り返し、今度は復路となるのですが、
それがすぐにではなくて、半年以上たってから。
だから同じ登場人物のその後を知ることになる、
という構成がとってもしゃれています。


私が一番好きだったのは、
真っ白なドレスで、モトカレとその彼女の結婚式に討ち入りを果たした翔子さん。
なんといっても鮮烈です。
まあ、よくありそうな話しですが、すごく勇気がいりますね・・・。
この気の強い彼女は、
電車に乗り合わせた小さなオンナノコが彼女を見て「花嫁さん」とつぶやいたとき、
涙があふれてきます。
そう、本当は花嫁さんになりたかった・・・。
緊張が解けてすなおな感情が垣間見えるシーンはなかなかいいですね。
やはり有川浩さんらしく、
男女の会話はほんのり甘酸っぱく、楽しく読めます。
この路線は片道15分ほどだそうです。
駅ごとに町の表情があるというのもいいな。
今度そちらの方面に行くことがあれば、是非乗ってみたいものです。


ところで、以前にも少し思ったのですが、
有川作品は、善悪というか敵・味方がきっぱりしすぎている気がするのです。
今作では翔子さんと相手の男女。
一人の女性と乱暴な男。
若い女性と傍若無人なオバサンの群れ。
対立関係が多いのです。
こちら側とあちら側の溝はとても深くて相容れない。
あちら側の人間は容赦なくバッサリ。
こちら側同士は、甘い蜜月なのですが。
これでは「戦争」にもなるわな。
なんというか、この頑固な境界にほころびができれば
もう少し全体が深まるのではないかなあ・・・などと思う。

さてこの作品も映画化されまして、まもなく公開。
見に行くかどうかは・・・微妙なところ。

阪急電車 (幻冬舎文庫)
有川 浩
幻冬舎


「阪急電車」有川浩 幻冬舎文庫
満足度★★★★