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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「はじまりの一歩」 中島京子他

2011年04月04日 | 本(その他)
新たな一歩へむけて

Re-born はじまりの一歩 (実業之日本社文庫)
伊坂 幸太郎,瀬尾 まいこ,豊島 ミホ,中島 京子,平山 瑞穂,福田 栄一,宮下 奈都
実業之日本社


           * * * * * * * *

様々な人々がそれぞれの出来事や出会いを機に、新たな一歩を踏み出す。
そういうストーリーを集めたアンソロジーです。
豪華執筆陣は・・・

宮下奈都
福田栄一
瀬尾まいこ
中島京子
平山瑞穂
豊島ミホ
伊坂幸太郎


「あの日の二十メートル」福田栄一
大学に入学したての克彦は、まもなく学校に行く気力も失せて、
近所の屋内プールに通い始めます。
そこでであったのは、やはりこのプールに通っている一人の老人。
克彦は老人に頼まれ、水泳のコーチを引き受けるのですが、
それにしてもこの老人、何とも上達が遅い。
あきれながらも老人の熱意に負けて、気の長い指導が始まる。
老人はなぜ今さら泳げるようになりたいと望むのか・・・
それを知ったときに、克彦の生活も変わって行くのです。
誰に言われたのでもない。
人の生き方から学ぶ真摯な気持ちがすがすがしいですね。


「コワリョーフの鼻」中島京子
コワリョーフというのは、ロシアの作家ゴーゴリの「鼻」の主人公。
ある日突然コワリョーフの鼻がポロリと取れてどこかへ行ってしまう。
しかし、その後彼はその鼻と再会し会話を交わす・・・というおかしな話しだそうで。
この話を発端としつつ、
実は今作の主人公「私」は、
この物語のように、自分の鼻がある日突然なくなってしまう予感に恐怖している。
しかしこれというのは、実はとっても現実的な話が根にあるのでした。
鼻行類という不思議な生物の話なども絡めながら、
着地はとても身近で現実的。
不思議な味わいのあるストーリーです。


「残り全部バケーション」伊坂幸太郎
父親の浮気により両親が離婚。
娘は高校の寮に入るということで、家族解散の日。
そんなときに父の携帯に届いたメール。

「適番でメールしてみました。
友達になろうよ。
ドライブとか食事とか」


あきれたことに解散式の家族三人は、
この正体不明のメールの送り主に返事を送り、お友達になってドライブすることに。
ところがこのメールの送り主には、送り主のまた特殊な事情が・・・。
それぞれの切羽詰まった状況にもかかわらず、
どこかのんきなメールのやりとり、
そしてのどかなドライブ・・・。
こういうおかしみは、まさに伊坂氏の真骨頂ですね。
この味に、やはりやみつきになってしまうのです。

「はじまりの一歩」実業之日本社文庫
満足度★★★★☆