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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「バカ親って言うな!-モンスターペアレントの謎」 尾木直樹

2008年07月29日 | 本(解説)

「バカ親って言うな!-モンスターペアレントの謎」 尾木直樹 カドカワoneテーマ21

近頃話題のモンスター・ペアレント。
TVドラマにまでなってますね。見てませんけれど。
つまり、学校や教師に対して無理難題を突きつけてきたり、理不尽なクレームを訴えてきたりする非常識な親のことを言います。
こんな親が異常に増えてきている。
教育評論家の尾木氏は、アンケート調査により、その実態を調査・分析しています。

モンスター・ペアレントを5つのタイプに分類すると・・・

1 我が子中心型…何でも自分の子供中心に考える過保護・過干渉な親

2 ネグレクト型…子供に無関心で育児全般が放任状態の親。児童虐待のパターン。

3 ノーモラル型…常識と非常識の区別がつかない親。近年急増しているタイプ。

4 学校依存型…家庭でやるべき雑事まで学校に頼んでくる、甘ったれた親。

5 権利主張型…自分の要求を通すために法律や権利を振りかざす親。

具体例を見ると、本当にあきれてしまいますよ。
「自分の子供には専属教師をつけてほしい」
「校舎の色が気に入らないので、子どもを学校に通わせられない。」
「ウチの子どもとけんかした相手の子をどこかに転校させてほしい。」
このようなモンスターペアレントが急増したわけについても、鋭い考察がなされています。
★学校・教師への信頼や尊敬の念の喪失

★地域コミュニティの崩壊と格差社会の進行

★社会的モラルの崩壊

★弱肉強食的な「自己中心主義」や「誤った権利意識」を持つ人たちの台頭

★教育の構造改革による「学校の商品化」と成果主義の導入
等等・・・。

しかし、怖ろしいのはアンケート調査は保育園等にも及んでいて、そこにはさらにひどい親の実態が・・・。
つまり、親がまだ親としてぜんぜん成長していない、子どものまま、というのです。
このような親たちがもう何年かで小学校にも押し寄せてくる・・・。


さて、しかし、この本はこうしたひどい親の実態を告発するための本ではないのです。
題名に、「バカ親っていうな」とあるように、これを解決していく手立てを考えているわけです。
弁護士や精神科医を含む「学校問題解決支援チーム」を作るという案もありますが、著者はあまり賛同はしていません。
むしろよけいに学校と保護者の溝を深める恐れもある、と。
では、どうするか。
なんにせよ、教師も親も子どもの幸せを願っているところは同じなのだから、
そこを糸口としてしてはどうか、というのです。

学校を保護者や地域の人々に解放し、誰でも気軽に参加できる拘束力の弱いスクールコミュニティを構築していくのも一つの方法。
社会が「競争社会」でなく、「協力社会」へ変わらなければ・・・と、次第に著者の夢は広がっていくのですが、
世の中はそう簡単には変わりそうもありません・・・。
せめて、子育て期の人にはこの本をぜひ読んでもらいたい。
本当の子どもの幸せのための学校って、どんな学校なのか、みんなで考えたいですね・・・。

満足度★★★★★