(DVD)
スウェーデン出身、ラッセ・ハルストレム監督のスウェーデン時代の作品で、
監督がハリウッドに招かれるきっかけとなったものです。
舞台は50年代末のスウェーデン、12歳少年イングマルのストーリー。
この時代というのは意味があって、当時、ソ連の人工衛星に一匹のライカ犬が乗せられ、地球初の宇宙旅行生物となりました。
イングマルは食料も水も十分でないまま、生還のあてもなく人工衛星に載せられたその犬のことが頭から離れないのです。
・・・自分の身の上と重なってしまうのですね。
イングマルのお母さんは病気のため、2人の子供の世話もままならず、
やんちゃ盛りのイングマルには心をかき乱されるばかり・・・。
そこで、兄はおばあさんの所へ、イングマルはおじさんの所へしばらく預けられることになったのです。
愛犬シッカンとも離れ離れ。
彼はライカ犬や他のいろいろな不運な人を思い浮かべては、
それよりは今の自分はずっとまし、と自分に言い聞かせます。
それにしても、イングマルのやんちゃぶりといっても、普段なら笑って済ませることができるようなことなのですけどね。
お母さんは精神的にもちょっと、まいっていたようです・・・。
さて、大好きなお母さんから引き離され、見知らぬ村に一人でやってきたイングマル。
でも、その地の人々は思いのほか温かく、すんなりとイングマルを受け入れ、
村の一員にしてしまうのです。
イングマルのやんちゃ振りなど、何も目立ちません。
思うにあれは、お母さんの病で暗くなってしまった家の雰囲気のためにおきてしまったことだったんですね。
おじさんの家に初めてテレビがついて、近所の人々が集まってそれを見るシーンがありました。
どこの国でも、同じですね。
「3丁目の夕日」にも同じようなシーンがありました。
・・・そうか、同時代なんですね。
こんな風で、むしろ、彼にとってはこちらの方が居心地良く見えるのですが、
それでも彼は時折お母さんやシッカンを案じて切なくなるのです。
さて、この村に飛び切りステキな子がいまして、
サッカーもボクシングも得意なサガ。
見たところしっかり少年なのですが、実は女の子。
少しずつ膨らんでいく胸をどうしたら隠せるか、イングマルに相談したりします。
イングマルは布を巻いてみれば・・・なんていって手伝ったりする。
お互い気にしているのか気にしていないのか・・・
実にビミョーというところで、名シーンですねえ・・・。
秋になって、イングマルはまた街に戻るのですが、お母さんの病気は悪化。
冬にはまた、村に戻ってきます。
のどかな村の人々の中で、少年の悲しみが少しずつ癒されていく。
ユーモアを交えながら、しかしじっくりと人々の心、少年の心を描いています。
ラッセ・ハルストレム監督の温かいまなざしを感じます。
いつもこんな風に、周囲の状況は結構厳しいのに、なぜかほんのり温かなものが伝わってくる、この監督が私は大好きなのです。
1985年/スウェーデン/102分
監督:ラッセ・ハルストレム
出演:アントン・グランセリウス、メリンダ・キンナマン、トーマス・フォン・ブルム