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多聞 きもの手帳 <男の着物日記>

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2008年12月17日 | 男のきもの図書室

「覚悟のススメ 」 山口貴由  (チャンピオンREDコミックス)

そこで、唐突だが漫画の話題に飛ぶのである。
「葉隠」の世界を基礎にした娯楽漫画があるのだ。
それは1994年~96年に週刊少年チャンピンに連載された山口貴由の「覚悟のススメ」である。

主人公の名前は葉隠覚悟(はがくれかくご)、敵役は主人公の実の兄である葉隠散(はがくれはらら)。
主人公が「強化外骨格」というアームドスーツを着装して、敵と戦う変身ヒーロー漫画なのだ。

山口貴由という漫画家は現在連載中の「シグルイ」(*この漫画については後述)でかなり有名になったので知っている人も多いかも知れない。現在最も面白い男性漫画家の一人だと思うのだが、その強烈な作風のため、万人にはなかなか勧められない。

独特の大袈裟な台詞回し、奇を衒った構図、奇怪な敵役の姿、必要以上の残虐描写、やたらと登場する男の裸、笑えるかどうか微妙なギャグ、歪んだエロチシズム。
少年漫画誌の連載とは思えないぐらいなのだ。
しかし、それらを超える面白さがあるのは、娯楽漫画の定石を抑えつつ現代の私たちの価値観とは違ったものが漫画を構成しているからだと思う。そして山口の漫画の特徴として生真面目さがあげられる。過激な作風にも関わらず、奇妙な誠実さを感じるのだ。

葉隠散は地球を救うために人類を滅亡させることを画策し、弟の葉隠覚悟は一人でそれを阻止しようとする。地球を一個の生命体と考え、人類をその生命を脅かす癌細胞やウイルスに例えることは、他のSFなどにもみられ(例:映画「マトリックス」)一面から見ると正しい考えである。主人公の葉隠覚悟は人類の代表として兄である葉隠散と戦うのだ。
二人はともに父から「零式防衛術」という体術と、「強化外骨格」という兵器、そして強固な武士道教育を授かっている。
葉隠覚悟は黒髪短髪に眼鏡という地味な姿だが、葉隠散は宝塚の男役のような中性の麗人として描かれる。その姿は武士道とは一見して関係ないように見える。
覚悟と散、この漫画では主人公と敵役が同等の扱いを受けている。山口貴由は「葉隠」の中に「覚悟」の精神と同じくらい「美の追求」があることを見たのだ(たぶん)。

主人のために死に物狂いにならなければならない。そのためには日ごろの覚悟が必要である。芸を磨いたり、学問にはげむことはかえって奉公の妨げになるので、不器用で愚直なのがちょうどよい、と葉隠は説く。
しかし、生か死かどちらかを選べと言われたら迷わず死を選べというとき、そこには美の追求があるように感じるのだ。
愚直を求める陰には美の追求がある。これもまた葉隠の魅力の一つなのだと思う。

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