毎日新聞7月12日付の「メディアへの風景」というコラムで武田徹の「震災小説の類似表現問題 文学的価値を議論せよ」、毎日新聞7月18日付夕刊の「ニッポンの発言」というコラムで中森明夫の「『美しい顔』と芥川賞」、毎日新聞7月31日付の「記者の目」というコラムで大原一城の「芥川賞候補作の類似表現問題 普遍性を獲得したか」と、とりあえず北条裕子の小説『美しい顔』を巡る問題の議論は出尽くしたように見える。
個人的な感想を述べるのならば、今回の「引用」は「無断コピペ」だったと思う。
上の告知は『群像』8月号のp.372に掲載されたものである。問題なのは何故7月号ではなく、8月号に掲載されることになったのかという点である。『美しい顔』が掲載されたのは『群像』6月号である。新人が入賞した自分の小説が掲載されている文芸誌を一度も見ないということは考えられないし、見たならば参考文献が載っていないことに気がつくはずで、すぐに担当編集者に指摘すれば翌月の7月号に掲載されるはずなのである。つまり当初は黙っておくつもりだったのが、騒がれたために白状して8月号に掲載されるという恥をさらしてしまったと考えるのが自然であろう。