原題:『Darling』
監督:ヴアギッテ・スターモス
脚本:キム・フォップス・オーカソン
撮影:マレク・セプティムス・ウィーザー
出演:ダニカ・クルチッチ/グスタフ・スカルスガルド/ウルリク・トムセン
2017年/デンマーク・スウェーデン
(SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2018)
「パイオニア」の計り知れない苦労について
世界的に有名なデンマークのバレリーナのダーリンはコペンハーゲンのロイヤル・デンマーク・バレエ団で『ジゼル』のリハーサル中に怪我をしてしまい、代役に若手ホープのポーリーが抜擢されることになる。
夫で振付師のフランツと共にポーリーの指導に当たるのであるが、内心ではポーリーに良い気がしない理由は、もちろん自分のプリマバレリーナとしての立場を脅かすだけではなく、自分が作ったポジションに自分が味わった苦労もせずにポーリーが就くことが許せないのである。だからダーリンは怪我をした際に使っているクスリと同じものをわざわざポーリーに使わせたりするのである。あるいは詳細には描かれてはいないが、自分がプリマバレリーナに、フランツが振付師になるために劇場の支配人であるクリスチャンと同衾したのかもしれない。
しかしクライマックスでポーリーの演技を見たダーリンはようやくポーリーを認めるに至るのである。ラストでダーリンが街中を去っていった後に、画面に映っている信号が全て赤に変わるシーンが洒落ている。
最後に本作で使用されていたポーティスヘッドの名曲「グローリー・ボックス」を和訳しておきたい。
「Glory Box」 Portishead 日本語訳
この弓とこの矢をもてあそぶことに私はすっかり疲れてしまった
私は本音を言うつもり
遊ぶためなら弓矢は他の女の子たちに置いて行く
遊び相手の女として私はあまりにも長く演じすぎたから
ただあなたを愛する理由を私に教えて欲しいの
女性でいられる理由を私に教えて欲しい
私はただ女性でいたいのよ
これからは解放されて
私たちは違うイメージを描くことになる
心の中の新しいフレームを通じて
数え切れないほどの花が咲けば
私たちは少し離れてそれぞれの居場所が持てる
ただあなたを愛する理由を私に教えて欲しいの
女性でいられる理由を私に教えて欲しい
私はただ女性でいたいのよ
だから男であることを止めないで欲しい
ただ外側から眺めてみるだけで
泣こうがどうしようが
あなたは小さなやさしさをまくことができる
これは永遠の始まり
この弓とこの矢をもてあそぶことに私はすっかり疲れてしまった
私は本音を言うつもり
遊ぶためなら弓矢は他の女の子たちに置いて行く
遊び相手の女として私はあまりにも長く演じすぎたから
ただあなたを愛する理由を私に教えて欲しいの
Portishead - Glory Box