原題:『ラブ×ドック』
監督:鈴木おさむ
脚本:鈴木おさむ
撮影:大嶋俊之
出演:吉田羊/野村周平/大久保佳代子/成田凌/玉木宏/吉田鋼太郎/唐田えりか/広末涼子
2018年/日本
熱演を超える演技について
主人公でパティシエの剛田飛鳥(1976年8月1日生まれ)は35歳から40歳にかけて勤めているスイーツ店のオーナーである既婚者の浅井淳治、親友の細谷千種が想い焦がれているジムトレーナーの野村俊介、自分の店の部下のパティシエである年下の花田星矢と交際してことごとく失敗する。
飛鳥はネットで見つけた「ラブドック」という、遺伝子で恋愛を診断するクリニックに通って、飛鳥の遺伝子に合わせて調合されたとされる薬が入った注射を打つのであるが、それは結局詐欺で、ラストで女医院長の冬木玲子が警察に捕まる模様をテレビで見ることになる。
自身に関することはともかく親友の千種と星矢の仲を飛鳥が取り持つことは、2人の関係の詳細を知らないのだから、余計なことだとは思う。
人生において無駄なことなど無いというのが本作のテーマなのであるが、意味深なオチがついている。「ラブドック」の家宅捜索をしている50歳の刑事は実は「ラブドック」の常連だったのであるが、刑事はいまだに「ラブドック」の治療は嘘ではないと信じているようなのである。しかしその刑事を演じる今田耕司がいまだに独身であることを鑑みるならばやはり「危険な恋愛をストップできる特別な薬」を提供する「ラブドック」の治療方法は「本物」なのかもしれない。吉田羊の熱演と加藤ミリヤの曲で辛うじて観られる作品ではあるが、身を挺した今田の演技には涙を禁じ得ない。
それにしても女優と料理の組み合わせの映画はよく制作されていて、例えば、小林聡美主演の『かもめ食堂』(荻上直子監督 2006年)、北川景子主演の『チェリーパイ』(井上春生監督 2006年)、原田知世主演の『しあわせのパン』(三島有紀子監督 2012年)など挙げたらきりがないのであるが、そういう市場があるということなのだろうか。