SOMEWHERE
2010年/アメリカ
‘無知’の功罪
総合 70点
ストーリー 0点
キャスト 0点
演出 0点
ビジュアル 0点
音楽 0点
一見グダグダのように見える演出であるが、実はかなり計算されているように思える。もちろん冒頭でフェラーリを何度も周回させていた主人公のジョニー・マルコがラストでずっと直進した挙句クルマを乗り捨てて歩きだす暗喩は余計な説明など要しない誰でも理解できるシーンなので、もっと細かい部分を取り上げたい。
ジョニー・マルコはハリウッドにある高級ホテル、シャトー・マーモントに住めるほどに売れている俳優であり、彼は何もしなくても全ての手はずが整えられており、次々と美女が寄ってくる。その慌ただしさのために、ジョニーの自室に2度もポールダンスをしに来てくれたダンサーの名前は双子であるから憶えられないのは仕方がないとしても、ジョニーの部屋の向かいに住んでいる女性の名前さえうる覚えなのであるが、それでもベッドは共にする。
さすがに俳優だけに自分の顔は気にかけているのであるが、ジョニーは自分のクルマを追いかけてくるSUVも必要以上に気にするし、見知らぬ相手から嫌がらせではあってもメールをもらったりするのであるが、肝心の妻に対して気を配らなかったために別居しており、意志の疎通さえままならない。ジョニーの部屋のベランダから見える看板には「Do you know what? (あなたに何が分かっているというの?)」と書かれている。
そんなジョニーの元に11歳の娘のクレオが訪れてきて、暫くの間一緒に暮らすことになる。久しぶりに会う娘は成長していて、氷上で上手くアイススケートを滑っている娘を見て驚き、娘を肩に担いだ時の娘の重さで成長を確かめる。Wiiで一緒に遊べるし、料理も作れるし、ステファニー・メイヤーが著した『トワイライト』という小説の話をしたり、「SUDOKU」を解いていたり、イタリアの授賞式に着飾った美しいクレオを見たりしてジョニーは嬉しくなる。
つまり空虚で孤独な生活の元になっていたジョニーの‘無知’は娘のクレオの出現と共に、ジョニーにとって180度効果が変わり、ジョニーの生活に明るさをもたらすのである。
このようにソフィア・コッポラの演出は極めて精巧であり、第67回ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞を受賞したことも納得できるのではあるが、余りにも精巧すぎるために予定調和に陥り驚きが無かった。
運転中てんかん発作か 6人死亡事故の容疑者 県警見解(朝日新聞) - goo ニュース
このニュースをテレビで見ていて気になることがあった。自動車運転過失致死容疑で
調べを受けている運転手の柴田将人容疑者は“発作の持病”で事故を起こした可能性を
指摘されているのであるが、ニュースでこの“発作の持病”を癲癇だと言及したテレビ局は
私の知る限りではフジテレビのみで、他のテレビ局は癲癇という言葉を使っていない。
何故癲癇という言葉を使わないのか推測すると、作家の筒井康隆の『無人警察』という
短編が高校の国語の教科書に収録される際に、『日本てんかん協会』から同作品の削除
あるいは他の作品に差し替えるよう抗議され、騒動になったことがあるからだと思う。
この騒動は1993年に起こっているが、その時9歳前後であり、子供の頃に癲癇になったと
語っている柴田将人が、癲癇であることがバレると騒動になるということを“学習”して
しまい、癲癇を隠して運転していた結果が今回の大事故に繋がった可能性は大いにある。