一言に汚染といっても様々な分類がある、化学物質であったり環境放射線であったり、廃棄物であったりと様々だ。メキシコシティのようないくつかの場所では、光化学スモッグの発生による問題を抱えており、ロシア、カラチャイ湖ではゆるやかな放射能汚染が進行している
ここにあげるのは海外サイトがまとめた、地球上で25最も汚染された場所である。
25.ペルー / ラ・オロヤ
アンデス山脈の小さな町であるラ・オロヤでは、1922年から米国ミズーリ州のドー・ラン社が金属精錬所を運営してきた。結果として、現地のほぼ全ての子供が鉛汚染と呼吸器系の合併症に苦しめられている。人道に反するとして、ペルー政府は様々な組織により裁判沙汰にされてきているそうだ。
24. ロシア / ノリリスク
このシベリアの町はラ・オロヤよりも巨大な金属製錬の工業団地を抱えている。驚くことではないが、ここは汚染があまりにひどいためロシアの他の地域に比べ平均寿命が10年も短いのだという。
世界で7番目に汚染された都市、ロシア・ノリリスク
23.インドネシア / チタルム川
世界一汚染された川の一つである。約500万人以上がその流域に住み、その水を生活用水として使用している。
世界で最も汚い川のひとつ、インドネシア、チタルム川
22. ザンビア / カブウェ
鉱山開発と廃物処理を続けた後、ザンビアの町カブウェを取り囲む丘ではカドミウムと鉛の汚染が深刻となった。事実、ここの子供はアメリカ環境保護局が定める安全基準の10倍もの鉛を血液中に含むことが判明している。不毛な土地に加えて、汚染のせいで作物が育たないという。
21. アルゼンチン / マタンサ川流域
汚染の代名詞とも言われているマタンサ川。この流域の堤防には4000軒近い工場と42のゴミ集積場、そして13のスラム街がある。健康被害も多く、この地に住む人々の平均寿命も短い。
20. キルギス メイリュー・シュー
アジア全土における最大の放射性物質廃棄場の一つである。町を囲む丘に低品位ウランの廃棄場がいくつもある、深刻な汚染をもたらしている。もし廃棄坑からウランを取り出そうものなら大惨事になるだろう。
19. インド / スキンダ
この街には10以上の鉱山が適切な規制なく運営されているそうだ。そのためブラック・スミス研究所という調査機関によって、世界一汚染された地域の一つとしてランクインしてしまっている。
18. アゼルバイジャン バクー
大規模なバクー油田を持つアゼルバイジャンの首都は長い間、タンカー輸送と油田開発により広範囲にわたる汚染に悩まされているそうだ。
17.ブラジル / ロンドニア州
他の場所と同じような意味で汚染されているわけではないが、近年ロンドニアは広大な森林伐採が行われている。そして今ではアマゾンの熱帯雨林で最も森林破壊の進んだ地域である。
16. メキシコ メキシコシティ
メキシコシティは山に囲まれた火山のクレーター内にあるのだが、そのせいでスモッグ(煙の混じった霧)の厚い層が溜まってしまうという問題を抱えている。
15. バングラデシュ ダッカ
バングラデシュの面積は日本の半分以下である。にもかかわらずそこに1億5000万人も住んでいるため、おのずとゴミ処理の問題は出てきてしまうのだ。
14. ハイチ共和国 / ポルトープランス
この国は自然災害と森林伐採でひどく破壊されており、挙げ句の果てに深刻なゴミ処理問題まである。
13. タンザニア ダルエスサラーム
急速な人口増加により、もともと不衛生だった生活用水の汚染が悪化しているのだという。その上固形のゴミが写真に写っているムシンバジ川に流れ込んでいるため、伝染病の流行拡大が続いているのだそうだ。
12. コンゴ / ブラザヴィル
川の水の水質の汚染が極めて深刻なレベルであるコンゴ共和国の首都であるブラザヴィルには差し迫った健康問題・衛生問題がある。平均寿命もすでにアフリカ最低なのだそうだ。
11. 地球の衛星軌道
我々の住む地球は1800トン近いスペースデブリ(宇宙ゴミ)に囲まれている。上の画像はNASAによって作成されたもので、目下追跡できているスペースデブリを示している。
10. インド ヤムナー川
ガンジス川最大の支流であるこの川にはインド北部の大都市デリーのゴミの60%が捨てられていると推測されている。しかしそれでも、流域の住人らのほぼ全員がその川の水を生活に使ったり体を洗ったりするという事実が変わることはない。
9. 中国 / 田営(ティエンイン)
中国の鉛の半分以上を生産するため、この町は世界でも最悪の鉛汚染地域の一つとなっている。
8.アゼルバイジャン スムガイト
時代遅れな規則の結果として、この地域にある40以上の工業団地はひどく有害な環境を作り出し続けている。住民にもたらされる健康被害も後を絶たないそうだ。
7. インド / バピ
川上数百キロメートルにわたる広大な工業団地群の端に位置し、バピの水が含む水銀の量は安全基準の96倍にもなるという。
6. ロシア / ジェルジンスク
世界一有毒物質による汚染が深刻な地域としてギネスブックに載っており、近年の死亡率は出生率を260%上回っているそうだ。この町は世界一平均寿命が短い地域の一つでもあり、平均寿命はおよそ45年だという。
5. ロシア / カラチャイ湖
カラチャイ湖は何年にもわたり、ソ連が核廃棄物を投棄してきたため、地球上でもっとも汚染された場所であるとも言われている。実際、ここで一時間被曝すると死に至ると言われている。
4. ウクライナ / チェルノブイリ
史上最悪の原発事故が起きた場所であり、1986年の事故後この町の1万4000人の住人のほぼ全員が退去した。現在は放射線と放射性物質を含んだ塵のせいでほぼ無人地帯となっている。なぜほぼなのか?それは一部の住人たちが立ち退かず、いまだこの地で暮らしているからである。
チェルノブイリ原子力発電所事故避難区域内に住み続ける人々
3. 中国 / 臨汾(リンフン)
この町では、洗濯物を外に干すと乾く前に真っ黒になるとまで言われている。長いこと臨汾は世界一汚染された町だと考えられてはきたが、近年わずかながら改善が見られたそうだ。。
2. 北太平洋旋廻(せんかい)
太平洋には、実にテキサス州2個分(日本の国土面積の3倍から4倍)ものサイズのゴミの島が漂っていると言われている。この話は少し大げさではあるものの、そこには太平洋ゴミベルトとして知られるものが実際にあるのだ。
これは北太平洋の広い海域であり、有毒な物質、プラスチック、ヘドロなどが大量に漂っているそうだ。北太平洋をぐるりと回る海流は海洋学で「旋廻」と呼ばれており、この海流によりこういったゴミがこの海域に「閉ざされ」ているのだ。また、大量のゴミが巡っているにしてはその裏付けが不十分だという意見もあるが、海洋環境に深刻なダメージがあるという事実は揺るがない。
1. イラン / アフヴァーズ
世界保健機関(WHO)によれば、イランの都市アフヴァーズが世界で一番汚染された街である。絶えず続く砂嵐が大きな問題となっている。
■第8位 ソ
2011年3月11日の東日本大震災と、その後の東京電力福島第一原子力発電所の現状をめぐる懸念は、わたしたちに放射能の脅威に対するある種の自覚をもたらした。だが、多くの人々はいまだ、放射能汚染(radioactive contamination)が地球規模の災厄であることに気づいていない様子だ。
以下のリポート「世界でいちばん放射線量の高い場所10」は、放射性核種による汚染問題にとり組むNGO、ブラックスミス・インスティテュート(The Blacksmith Institute)が2010年に周知した報告などをもとに、そこに筆者が多少手を加えたものである─。
ではいざ、白昼の地獄めぐりへ。もろともに、この星の清浄な明日を夢見て…。
■第10位 ハンフォード核処理施設、アメリカ/ Hanford, USA
アメリカ、ワシントン州にあるハンフォード核処理施設(The Hanford Site)は、1945年7月16日に、ニューメキシコ州アラモゴード砂漠で人類初の核爆弾となった「ガジェット」(The gadget)─これをトリニティ実験と呼ぶ─および長崎に投下された史上3番めの原爆「ファットマン」(Fat Man)用のプルトニウムを製造した原爆開発工場として、いまなお、歴史にその悪名を残している。
その後、1989年まで続いた冷戦(Cold War)の緊張下、コロンビア川の岸辺に位置するこのサイトは60000個あまりの核兵器(nuclear weapons)にプルトニウムを供給するためフル稼働を続けた。
ハンフォード核処理施設は、現在では操業を終えている。それでもここには、アメリカ国内の高レベル放射性廃棄物の3分の2が貯蔵されている。およそ5300万ガロンの液体廃棄物(liquid waste)と、2500万立方フィートの固形廃棄物(solid waste)、また敷地直下の200平方マイルにわたる汚染された地下水が、この地を全米で最も呪われた場所にしている。
このエリアの深刻な環境破壊がわたしたちに告げるのは、放射能の脅威は単に、ミサイル攻撃(missile attack)に限らないという単純な事実だ。真の恐怖は核開発後の未来にまで持ち越されるという〈不都合な真実〉こそ、核時代の真の教えと言うべきだろう。
屋外の廃棄物置き場
アメリカ・エネルギー省(DOE)は1989年以後、サイトの諸施設の解体と除染に着手した。だが、作業を必要とする場所は1400箇所以上にのぼる上、次々と深刻な汚染状況が明らかとなり、はたして1518平方キロメートルに及ぶこの広大な地に将来的な再生が可能なのだろうかという疑問が政府と国民の頭を悩ませている。
ご参考までに用意した次の3つの動画はそれ自体、興味深いものに思える。1つは、日々規模を拡大せざるをえないこの処理施設の施工を請け負う、サンフランシスコに本拠を置く世界最大級の建設会社ベクテル (Bechtel Corporation)が制作した自社宣伝用の映像。そして残りの2つは、それぞれ書く処理施設の歴史を概述するもの、現在の問題点を指摘するものだ。あわせてごらんいただくと、あなたはもう以前のあなたには還(もど)れない。
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自社宣伝用映像。動画は、YouTubeより
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動画は、YouTubeより
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動画は、YouTubeより
■第9位 地中海海域/The Mediterranean
地中海に浮かぶサルデーニャ島の海岸
過去何年にもわたって、イタリアのマフィア組織「ンドランゲタ」('Ndrangheta)が、地中海を有害廃棄物(hazardous waste)を不法に投棄する場所として利用してきたとの告発が絶えない。身の毛がよだつことだが、そこには相当量の放射性廃棄物(radioactive waste)が含まれていたらしい。
これは早くも1980年代から指摘されてきた問題で、主犯と目されるシンジケート(組合)はイタリア国内をはじめとするヨーロッパ全域から秘密裏に放射性廃棄物を持ち込み、それを満載した老朽船を、地中海海域はもとよりインド洋のソマリア沖などにも投棄してきたとみなされている。
地中海海域に投棄された廃船マップ
海底に沈む廃船
イタリアのNGO、「レガムビエンテ」(Legambiente)は、1994年以来、地中海海域に、毒物や放射性廃棄物を積載した船舶が少なくとも40隻ほど故意に沈められたものと考えている。もしこれが事実なら、ヨーロッパ文明を育んだ母なる海の底には、人知れず、膨大な核廃棄物が横たわっていることになる。
真の危険が陽の目をみるのは、残念ながら、数百のバレルが腐敗して分解するか、何者かによってこじ開けられるときだろう。けれど皮肉なことに、地中海の沁みるような美しさは、いまこの瞬間にも進行中の大災害をおくびにも出そうとしない
マリアの海岸部/ The Somalian Coast
内戦のため、現在、無秩序状態に陥っているソマリアの海と土壌が、長期にわたって、始末におえない有害廃棄物をひそかに投棄する「世界のゴミ捨て場」として使われてきた疑惑がある。ソマリアは北が元イギリス領、南が元イタリア領。1960年に独立し、1969年に統一を果たしたものの、その後も南北の折り合い悪く、1991年には内戦が勃発した。
政府と沿岸警備隊のこうした空白をついて、一部武装勢力がヨーロッパの企業と契約をとり交わし、先進諸国のさまざまな有害化学物質を国内にもちこんでは、海中や荒れ地に投棄してきた事実が次第に明らかになってきた。ここには600バレルの有害廃棄物と核廃棄物、また放射性医療廃棄物(radioactive hospital waste)が含まれているという。
ひそかに海に沈められた放射性廃棄物や重金属、カドミウムや鉛や水銀のバレルは、2004年12月26日に起きた、インドネシア・スマトラ島沖を震源とするM9.1の巨大地震と、これによる最大20メートルの大津波のために、長い海岸線に沿って打ち上げられて、ようやく人々の知るところとなった。
国連環境計画(The United Nations’ Environment Program)は、錆(さび)ついた廃棄物のバレルが1990年代に投棄されたものと推測しているが、「ソマリアの海賊は元は漁師だった。放射能汚染で漁業できなくなって海賊業にくらがえした」とは、しばしば耳にするところだ。
先進国のエゴイズムと一部ソマリア人の歪んだ欲望がいまや、建国からわずか55年のごく若い国を滅亡の瀬戸際にに追いやろうとしている。
さて、以上3つのリポートを読まれたあなたは、地球のほとんどいたるところに、放射性物質に侵された場所(radioactive places)が広がっている事実に、思わず眼を見開かされる思いを味わったのではないだろうか? だが、その地の人々の多くは、彼らと子どもたちに悪影響をおよぼす放射線の恐怖の中で日々、生活を営んでいるのだ。
(文=石川翠)