山里に生きる道草日記

過密な「まち」から過疎の村に不時着し、そのまま住み込んでしまった、たそがれ武兵衛と好女・皇女!?和宮様とのあたふた日記

私たちは今、「満州国」に住んでいるのです !?

2016-07-25 19:49:32 | 読書
女装をした東大教授が解明する満州国の解剖とは。
 安富歩(ヤストミアユム)『満州暴走 隠された構造』角川新書(2015.6.)を読む。
 読みやすくわかりやすく配慮された内容は安富さんの女性性を感じるが、同時にそれは歴史や現実に存在する欺瞞を見事に解明している。

                                 
 かつて満州は清国の故地として開発が禁止されていたため、トラやヒョウをはじめとする豊かな生態系の大森林だったという。
 しかしそこをあっという間に森林を破壊し、地平線まで続く大豆畑に沈む太陽と延々と続く満鉄の列車の風物詩を形成した。
 この傀儡国家満州国建設をはじめ、村ごと皆殺しした「平頂山事件」といい、満蒙開拓団の悲劇といい、731部隊の人体解剖といい、日本が犯した侵略行為は計り知れない闇がある。

                        
その闇は、「立場上、仕方ない」という立場主義から真実と向き合うことを避ける「魂の植民地化」が蔓延しているという。
 「戦後日本はアメリカの半植民地化されている」と指摘し、「昭和天皇は傀儡の皇帝溥儀にあたる」と踏み込む。
 沖縄を巡る日米地位協定はまさに象徴的だ。
 これらを貫く「システム」は、今のこの瞬間も日本のあちこちで作動しているという。

     
 満州の植民地化を止められなかったことについてどれだけ論議したのだろうか。
 むしろ、そこに触れることさえ回避してきたのがオイラの体験した歴史の授業だった。
 なにしろ、入試問題には出るわけないから、先生も教えない。 

                           
 そこで安富さんは「立場を守って必死でがんばる」よりもいい方法は、「がんばらないで、サボって、新しいものを生み出していけるような心の余裕を持つこと」を提唱する。
 そして、日本の最大の財産である自然と文化を経営資源にしていく遊び心が大切だというところに、経済学者らしい顔を見せる。

 こうして、「魂の脱植民地化」のためには、「あなたがあなたであること。それは姿勢です。態度です。能力でも結果でもありません。だから勇気一つさえあれば、今日から、いや、いますぐここから、できることなのです。」と、哲学者にもなる。
 それだけ、安富さんも東大で陰鬱ないじめに合ってきたわけだ。
 知らされなかった満州に目を向けることで、「人間は、社会は、日本はなぜ暴走するのか」の本質に迫る。

                            
 きょうもテロ事件が起きた。
 テロはいけないが、それを欧米先進国の論理だけで対応してはいけないヒントがここにもある。
 

 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする