50歳のフランス滞在記

早期退職してパリへ。さまざまなフランス、そこに写る日本・・・日々新たな出会い。

タンタン、告訴される。

2007-08-11 00:41:32 | マスコミ報道
以前ご紹介したベルギーの漫画家エルジェ(Herge)描くタンタン(Tintin)が告訴されました!

タンタンとその相棒ミルーが繰り広げる冒険の旅。このシリーズの内、1930年から翌年にかけて描かれた“Titin au Congo”(『タンタン、コンゴへ行く』)が、人種差別的表現により、エルジェの本国・ベルギーで訴えられたそうです。


(9日付のフィガロ紙。同じく9日のTF1夜8時のニュースでも紹介されていました)

訴えたのは、旧ベルギー領コンゴ出身で、今はベルギーに住む学生。では、どのあたりが人種差別的表現なのか・・・たとえば、タンタンが当時のベルギー領コンゴで現地の人たちに向かって、「さあ、仕事へ行け、急いで」と言い、さらにミルーが「怠け者たちが、早く仕事に取り掛かれ」という場面。現地の人たちを見下している・・・

しかも訴えた青年曰くは、「ベルギー人は今こそ目を開くべきだ。今でも学校では植民地政策について何も教えていなし、ベルギー領コンゴのことはタブー扱いだ。」旧植民地からの、歴史教育批判・・・

この『タンタン、コンゴへ行く』をめぐっては、イギリスでも人種的平等に関する委員会に提訴があり、7月に、出版差し止めには当たらないが、人種差別を想起させるイメージや言葉があり、販売には注意するように、という決定が出ていたそうです。この決定を受けてイギリスとアメリカで店舗展開をしているアメリカの書店チェーンは、早速『タンタン、コンゴへ行く』を子供向けマンガのコーナーから大人向けマンガのコーナーへ移したそうです。しかし、それ以外のイギリスの書店では、特に対応はなされていない・・・

生誕100周年が祝われたばかりのエルジェ。なかなかゆっくり眠ってはいられないようです。生前にも、何度か物議はかもしたようですが、エルジェが抗議を受け入れたのは一度だけ。それは、動物愛護の観点からの抗議。サイを爆死させるカットを削除したそうです。それ以外の抗議には対応しなかった。彼の死後、今では変更は不可能・・・

エルジェの関係者は、歴史的背景も考慮すべきだと言っています。この作品が書かれた1930年代、ヨーロッパの人たちは一般的に、植民地は黒人を助けその魂を救済するためのものと理解していた。こうした事情も勘案されるべきだ・・・

また、別の団体は、こうしたマンガを告訴するより、就職や住まいを決める際の人種差別という現実の問題に対処しなくてはいけないとも言っています。

過去をめぐる認識、歴史教育、現実社会での問題・・・人種差別が「人間」の心から消える日は、来るのでしょうか―――。

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2 コメント

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半端な対応 (シエナ)
2007-08-11 08:57:38
差別的表現を放置することはもちろん、アメリカ書店チェーンの、「子どもの本のコーナーには置かない」という対応も、いかがなものかと思います。「目にしたり耳にしたりして、いわれなく不快な思いをする人がいてはいけない」という当たり前の配慮のもと、差別は排除されるべきこと。「判断力の未熟な子どもには見せない」ということですまされることではない気がします。なんとなく、欧米の「白人以外を蔑視」の感覚がにおうような…と言っては言いすぎ? 問題表現の部分のみ削除するなど、できないのでしょうか。
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差別 (take)
2007-08-11 16:29:09
シエナさん

難しい問題だけに、いろいろなご意見があると思います。シエナさんのお気持ちもよく分かります。

ちょとだけ整理してみると・・・
・問題の箇所の削除=著作権者と出版社の問題
・販売対応=書店の問題
で、アメリカの書店は子供向けコーナーから撤去。イギリスの書店はそのまま子供向けコーナーで販売。

誰がどうするのが、ベターなのか。日本の書店、あるいはタンタンショップは、何か対応しているのでしょうか・・・
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