goo blog サービス終了のお知らせ 

50歳のフランス滞在記

早期退職してパリへ。さまざまなフランス、そこに写る日本・・・日々新たな出会い。

中国のモナリザ。

2006-10-23 00:48:53 | 美術・音楽
おしゃれな店がふえ、ここ数年脚光を浴びている北マレ地区。たまたま歩いていたら、ふと漢字が視野の端をかすめました。おしゃれなパリの一角で、一体なんだろうと近づいてみると・・・そこに書いてあったのは、「中国現代画廊」。そう、中国人作家の作品を扱う画廊でした。


面白そうなので、中に入ってみました。王凱(Wang Kai)という若手画家の個展をやっていました。女性の肖像画がほとんどですが、絵のような、写真のようなちょっと不思議なタッチです。その中で、入ってすぐのところに飾ってある作品のタイトルに、興味を惹かれました、というか、驚きました。

“La Joconde chinoise”、「中国のモナリザ」というタイトルです。モナリザのことはフランス語ではla Joconde。その中国版という意味です。そして、その作品は・・・

確かに、ちょっと神秘的な微笑みはありますね。これが、21世紀・中国のモナリザ、といったところなのでしょう。なかなか面白いタイトルです。

この作家について、画廊で働いている女性に聞いてみました。暫く話してから分かったのですが、この女性、なんと日本人でした。フランス語は流暢ですが、中国語や中国美術に関しては、なんとフランス人のオーナーが専門とか。でも、中国人のお客さんは、まず東洋人の彼女に中国語で話しかけるそうで、困ってしまうとおっしゃっていました。インターナショナルですが、とっても暖かな雰囲気のある画廊でした。

ユーラシア大陸の西の端で、中国美術の「新しい息吹」に触れることのできる場所もあるのですね。さすが、パリ。3区、Rue Vieille du TempleとRue Poitouの角にあります。

↓アクセスランキングへ「励みの一票」をお願いします。
日記アクセスランキング

ティティアン展

2006-10-20 03:15:04 | 美術・音楽
通称ティティアン、本名はティツィアーノ・ヴェチェッリオ(Tiziano Vecellio)。ベネチア派絵画を確立したルネサンス期の画家です。彼の作品展がリュクサンブール美術館で開かれています。



タイトルに“Le pouvoir en face”(権力を正面から見て・・・)とあるように、16世紀イタリアの有力諸侯の肖像画を中心とした展示になっています。

ティティアンの人生は1488 / 89~1576。16世紀に活躍したことになります。当時のイタリア北部の有力諸侯、フェラーラのエステ家、マントヴァのゴンザーガ家、ウルビーノのローヴェレ家などがパトロンについてくれていたため、その一族の肖像を多く描き残しています。


ルネサンス期といえども、国盗り時代。鎧甲冑姿の肖像画もあり、またその実物も展示されています。しかし、貴族領主だけあって、獰猛果敢さはなく、優雅な鎧姿です。もちろん、名前は分からないものの、当時の文人を中心とした彼の友人たちの肖像画も多く展示されています。

一方、ウフィティ美術館にある彼の「ウルビーノのヴィーナス」が女性像を神話の世界から現実の世界に引き戻したといわれるように、女性像にも見るべきものがあり、点数は少ないですが、いい作品が展示されています。


館内の撮影が一切禁止なので、ポスターなどでその作品を紹介してきましたが、出口にある記念品コーナーはこんな感じです。

また美術館の外には屋外のカフェができていて、名画に触れた余韻、というか感想を述べ合うおしゃべりにはもってこいです。



この『ティティアン展』、来年1月21日まで、リュクサンブール公園のすぐ北側、上院の隣にあるリュクサンブール美術館で公開中です。

↓アクセスランキングへ「励みの一票」をお願いします!
日記アクセスランキング

「世界の子供」写真展。

2006-10-17 00:23:10 | 美術・音楽
リュクサンブール公園を囲む鉄柵に、今、多くの写真が展示されています。


タイトルは、“Enfants du Monde”(世界の子供たち)。写真家・Kevin Kling(ケビン・クリング)の作品です。フランス系アメリカ人ですが、すでに25年以上パリに住み、アジア・アフリカ・中南米など、いわゆる発展途上国の子供たちを写真で追っています。



こうした写真を“Gio”や“Figaro”など欧米のメディアを中心に発表しており、こちらではよく知られた存在のようです。



今回の展示は、なんと「フランス上院」の主催。リュクサンブール公園内にある上院は、リュクサンブール美術館の企画展はもちろん、公園の鉄柵を用いたこうした作品展などもときどき主催しているそうです。もちろん場所が公園、週末には子供たちの声が聞こえるところですから、子供へ向けたメッセージや、子供をテーマに大人へ向けたメッセージなどを発信しているようです。



今回の写真などは、まさにうってつけ。いつの日か、フランスの子供たちの友人になるかもしれない世界の子供たち。国とか宗教・階級などを越えて、世界の子供たちが理解し合えるように、人種やコトバ・生活レベルの違いを超えて、一緒に生きていけるように・・・こうした願いをこめているそうです。



もちろん、世界155の国と地域で恵まれない子供たちへのサポート活動を行っているユニセフもバックアップ。



この写真展、来年1月9日まで、行われています。

↓アクセスランキングへ「励みの一票」をお願いします!
日記アクセスランキング

「Cabu展」―パリの風刺漫画。

2006-10-06 01:40:04 | 美術・音楽
10月に入って、小雨が降ったりやんだりの日、パリ市庁舎脇に行列ができていました。

パリ市主催の展覧会を行う際の入り口です。以前紹介した、かつてのパリを写真や映画で回顧する展覧会もここで行われました。今年秋からの新しい企画は・・・

“Cabu et Paris”(カビュとパリ)。Cabu?ご存知ですか。なんでしょう?人の名前?この看板から判断するに、イラストか何かの作品展のようです。

長い行列ができているということは、きっとフランス人の間で人気のある展覧会なのでしょう。並んでみました。待つこと40分。やっと入場することができました。

入り口でもらったパンフレットによると、Cabuとは人の名前。新聞紙上の風刺漫画を中心に活躍している作家だそうです。1938年生まれの68歳。15歳で早くもReims(ランス)の新聞に挿絵を書き始め、20歳の時には舞台を『パリ・マッチ』に移し挿絵を描いていたそうです。もう50年以上のキャリアになりますね。

会場には、彼の作品68点が展示されています。ペンや中国の筆で描かれたモノクロ作品が中心です。展示作品の中には、彼のスケッチブックや

彼のイラストを基に作られたグラスも展示されています。

いかにもパリ、といった感じの、おしゃれで小粋なタッチの作品です。

しかし、メインは、新聞・雑誌に掲載された風刺漫画。おしゃれなタッチの下には皮肉で、辛辣な批判精神が眼光鋭く光っているようです。その対象は、まず政治に。

権力の独り占め、というタイトルで、長年にわたり権力の座に居続けるシラク大統領を皮肉っています。

古きよきパリを愛するCabuにとっては、何でも新しくしてしまう最近の風潮が我慢ならないようです。これは、新しくできた国立図書館への風刺です。ガラス張りの巨大建築。世界中どこにでもあるような、個性のないものだという想いから、そこに通う人たちをペンギンの行列にたとえ、その画一性を皮肉っています。

上流階級に対しては、ペットの犬なしには出会いもないといってその生活ぶりに批判の目を向けています。

その風刺の矛先は、にわか成金にも向けられました。お分かりですね、高級ブランドを買いあさる日本人へ向けられた風刺です。日本人のイメージ、こんなふうなんですよ。今も変わっていないかもしれません。パンフレットには、最近その座を中国人に取って代わられたかつての日本人観光客、とわざわざ説明が付いています。Cabuは今パリ中にあふれている中国人観光客をどう描くのでしょう。

小粋で、いかにもパリらしいおしゃれなタッチなのですが、その裏に光る風刺、皮肉・・・さすが風刺漫画家として50年以上のキャリアを誇る作家の作品です。会場には作品制作中のCabu自身を紹介するを映像もあるのですが、

どことなく、山藤章二氏に雰囲気が似ています。軽妙洒脱で、それでいて反骨の精神にあふれている。確かに作品も日本における山藤氏と同じようなポジショニングにあるような気がします。作風が似ていると、人柄、風貌まで似るものなのでしょうか。あるいは、その逆?

Cabu・・・面白い発見をしました。

この“Cabe”展、来年の1月27日まで行われています。入場無料ですが、ゆっくり見れるよう間隔をおいて入場させていますので、少なくとも30分待ちの覚悟でどうぞ。

↓アクセスランキングへ「投票」をお願いします!
日記アクセスランキング

区役所の美術展。

2006-09-28 01:53:54 | 美術・音楽
パンテオンのすぐ斜め前にパリ5区の区役所があります(区役所と言っても実に立派な建物です)。そこに大きなバナーがかかっていました。

“goya”と読めます。もしかして、あの画家のゴヤ? 玄関脇にポスターが貼ってありました。

そうです、確かにゴヤの美術展です。それも銅版画の展覧会。面白そうなので、のぞいてみました。形而上学絵画でも知られるイタリア人画家、カルロ・カッラの展覧会と併催のカタチになっています。


入り口です。3階にある重厚な雰囲気の大ホールをパネルで仕切って展示会場にしています。


日本の区役所のイメージとはずいぶん違いますね。天井では大きなシャンデリアがいくつも輝いています。その下で、100点以上、200点近いゴヤの版画が展示されています。擬人化された動物たち(ロバ人間・馬人間・豚人間)は、人間の本性を表現しているようです。またロボットのような機械化された人間、理由のはっきりしない大量虐殺・・・200年も前に描かれたとは到底思えない先見性に満ちた作品です。また、苦痛にゆがんだ顔、血を滴らせた男など、この世の残酷さ・無残さを表現したものも多く、冷徹にしてシニカルな視点がよく表現されています。

もちろん、闘牛の場面や、情熱的な女性など、いかにもスペインといった作品も展示されています。また、「裸のマヤ」や「着衣のマヤ」などゴヤの傑作を他の作家が版画にした作品も展示されています。

ゴヤはスペインの自由主義者弾圧を逃れて1824年、78歳でフランスへ亡命。ボルドーで82年の生涯を終えているそうです。このあたりがフランスのお役所が個展を開く背景になっているのかもしれないですね。お役所の美術展といっても、その内容の充実ぶりは、たいしたものです。

併催のカルロ・カッラ展は、未来派から写実主義へというサブタイトルが付いていますが、作品点数が少なく、その変遷はよく分かりませんでした。ただ、こちらの会場から階段を上がると、カルロ・カッラが暮らしたイタリア・ピエモンテ州の物産展をやっていました。

ワインの試飲もでき、芸術作品に触れた後は、おいしいワインで喉を潤してください、といったところでしょうか。ピエモンテ州とアレッサンドリア市の後援も付いているようです。いい企画ですね。区役所の美術展だからといって決して侮れないのですが、入場料も7ユーロと他の有名美術館並みでした。

↓アクセスランキングへ「投票」をお願いします!
日記アクセスランキング

写真美術館。

2006-09-21 00:33:13 | 美術・音楽

日本での通称は「ヨーロッパ写真美術館」ですが、正式名称は“Maison Europeenne de La Photographie Vill de Paris”(パリ市・ヨーロッパ写真館)。場所は、メトロ1号線・サンポール駅のすぐ南です。


9月中旬、“Un ete italien”(あるイタリアの夏)というタイトルで展示が行われていました。イタリアで活躍する写真家の作品を中心とした展示です。


会場は、このような雰囲気です。モノクロの写真も多く、フォトジャーナリズム出身の作家が捉えた内戦により崩壊寸前のベイルートの街や、経済危機当時のブエノスアイレスの街並み(すさんだ表情の街に日本企業の看板・ネオンが目立っていました)など、建物を中心とした作品が、入ってすぐの会場に展示されていました。


もちろん、イタリア人独特の色使いによるおしゃれなスタジオ撮影写真や、風景写真なのにまるで抽象画のような作品もあります。また、キューバを撮影した作品も展示されていました。かつての美しかったであろう街の名残り、昔はカッコよかったであろうクルマの老醜・・・。なお、9月29日からはパリで活躍する日本人写真家・小野祐次氏の作品も展示されるそうです。

今回の作品の中でもっとも気に入ったのは、Franco Fontana(フランコ・フォンタナ)の作品。自然を撮影したものであるにもかかわらず、見事な色の配置、美しい画面分割・・・さすが「色の父」の作品。アートになっている風景写真であり、見習いたい作品でした。

ところで、フランスの美術館は、建物自体がアートしている感じですね。ルーブル美術館での人気トップ3は、モナリザ、ミロのビーナス、そしてなんとガラスのピラミッドだそうです。建物や装飾も美しい。ピカソ美術館もそうですし、ここもご覧の通り。

内部です。マレ地区の古い邸宅を改造したそうですが、いい味を出しています。

外からはこう見えます。

入り口前の庭。石庭みたいですよね。パネルには、“NIWA, Le Jardin”と表記されていました。ニワ、つまり庭ですね。ここにも「日本」の伝統美が顔を出しています。

立派な美術館ですし、入場者もとても多かったです。さすが、写真発祥の地! 1826年にフランス人のニエプスが撮影に成功したのが写真のはじまりだそうです。写真が芸術として非常に重視されている訳ですね。

*アクセスランキングへ「投票」を!
このブログ画面の左上、BOOKMARKにある「日記@BlogRanking」の文字をクリックして下さい。現れたの画面の「投票」をまたクリックすると、1票です。

ロマン主義美術館。

2006-09-16 00:12:18 | 美術・音楽
パリ9区、モンマルトルのふもとにヌーヴェル・アテネ(La Nouvelle Atnenes)と呼ばれる、小粋な一角(カルチェ)があります。そこに、ロマン主義美術館(Musee de la Vie romantique)があります。

より正確には、メトロのピガール駅とサント・トリニテ教会(Ste-Trinite)の間。デパートのラファイエットから北へ1kmほど。歩ける距離です。住所は、16,rue Chaptal。

ただし、入り口は、気をつけていないと、通り過ぎてしまいます。特別展のバナーが出ているだけ。


美術館は、細い小道の奥。まるで隠れ家のようで、このアプローチ、期待させるものがありますね。


奥に入ると、突然、空間が開け、中庭を取り囲むように数棟の建物が建っています。


すぐ上の写真の家が常設展を行っている建物です。もともとは、オランダ生まれの画家・シェフェール(Ary Scheffer:1795-1858)の家でした。1棟を自分のアトリエに、もう1棟を交際のあった芸術家たちとの交流の場(サロン)としたそうです。付き合っていたのは、ジョルジュ・サンド、ショパン、ドラクロワ、リスト、ロッシーニ、ディケンズ・・・美術・文学・音楽にわたり、ロマン主義芸術を語るうえで欠かすことのできないそうそうたる顔ぶれです。

これらの建物は、1983年、彼の遺族によってパリ市に寄贈され、やがてロマン主義美術館として公開されるようになったそうです。


このような美しい調度品に囲まれ、芸術論議に花を咲かせたことでしょう。


この部屋には、ジョルジュ・サンドの遺品も展示されています。


そして、この手と腕。誰のだと思いますか? 向かって右の手は、ショパンの手です。どうです、名ピアニストの手に見えますか? 左側はジョルジュ・サンドの腕。華奢な手ですね。


庭の一部は、サロン・ド・テになっています。アールグレイやオレンジペコなど15種類ほどの紅茶から選ぶことができ、4.5ユーロ。ケーキやチョコレートも頼めます。ただし、屋外ですので、天気のよい日にどうぞ。しかも、オープンしているのは、4月15日から10月15日までの半年だけです。なお、常設展だけなら入場無料、サロン・ド・テにも直接入れます。

今までほとんど足を運んだことがなかったエリアなのですが、意外や意外、ピガールに近いにもかかわらず、安全でシックなカルチェです。そこに隠れ住むように佇む美術館とサロン・ド・テ。いい発見でした。

*アクセスランキング、「投票」にご協力を!
このブログ画面の左上、カレンダーの下の下の下、BOOKMARKの欄の「日記@BlogRanking」という文字をクリックして下さい。そして、現れた画面の「投票」をクリックすると、1票。ご面倒ですが、ご協力、よろしくお願いします。

ザッキン美術館

2006-09-05 04:05:18 | 美術・音楽
Ossip Zadkine(1890-1967、彫刻家)。ザッキンはロシアに生まれ、1909年以降パリに居を構える。ピカソらのキュビズムから薫陶を受けたり、アフリカ出身の彫刻家仲間の影響を受けたりした結果、対象を平面の集合体として捉え直し、プリミティブな印象の作品を創造した。

そんな彼の住まい・アトリエが「ザッキン美術館」として公開されています。

場所は、リュクサンブール公園のすぐ南西。Rue d’Assas。入り口に小さなバナーが出ていますが、注意していないと気付かず通り過ぎてしまいそうです。

中庭の一角に立つ住まいとアトリエ。パリの中心とは思えない静謐さと落ち着いた雰囲気。先日ご紹介したドラクロワのアトリエ同様、羨ましいかぎりの環境です。


中庭に、何点もの作品が何気なく展示されています。


ロダン美術館のミニ版といったところでしょうか。自然そのままに見えるように手入れしている庭が、プリミティブな作風にぴったりとマッチしています。


アトリエには小さい作品が展示されています。通常展示だけのときは無料、特別展のときは4ユーロです。庭だけならいつもで無料のようです。

本当に羨ましい環境です。でも、初めからこの環境があったのではなく、作品の創造を通して(つまり作品への評価が高く、しかもが売れたから)こうした環境を獲得できたのだと思います。どのような環境においても、いい作品をつくること、そして作り続けることが、大切なことなのでしょう。芸術家は、大変ですね。

*Zadkineという名前、美術館の人に聞いたところ、フランス語では”d”も発音しているのですが、速く言うため”d”がほとんど撥音のように聞こえてしまうそうです。そのため日本語表記は一般的に「ザッキン」となっているようです。「ザドキン」でも間違いではないと思うのですが、一般的表記にしておきました。

ドラクロワのアトリエ。

2006-08-25 00:22:07 | 美術・音楽
画家・ドラクロワが死ぬまで住んでいたアパルトマンと、その脇の敷地に画家自らの設計によって作られたアトリエが、ドラクロワ美術館として公開されています。

場所は、サン・ジェルマン・デ・プレ教会のすぐ裏手です。寝室・居間・図書室の3部屋とアトリエ、そしてアトリエ脇の小さな庭を見学することができます。

(向かって左がアトリエ、右がアパルトマンです。)

ここで制作に励んでいたドラクロワ自身の作品はもちろん、フラゴナールなど同時代の他の画家の作品も展示されています。

ドラクロワの作品としては、ポートレートを中心とした油絵をはじめ、シェークスピアのハムレットを題材にしたリトグラフとその原版、デッサン、パステル画、水彩画などを鑑賞することができます。

しかし、その住まいとアトリエがそのまま美術館になっただけあり、作品以外にも、画家が使っていたパレット、画架、机、道具箱などの家具、直筆の手紙などが展示されていて、ドラクロワの息遣いまで聞こえてきそうです。

今回特に興味を惹かれたのは、レジオン・ドヌール勲章の授与決定通知書と美術アカデミー会員に選ばれた際の投票結果をまとめたもの。

レジオン・ドヌール勲章ほどの権威あるものでも、授けるほうにとっては恒例の事なんですね。印刷してある通知書の空欄に受勲者の名前を手書きで書き込んだだけのもの。大きさもA4二つ折り。あまりに簡素で、ビックリです。

また、美術アカデミーの新会員は、会員の投票で決まるそうですが、ドラクロワは8度目にしてようやく選ばれました。28人中22人の承諾を得て選ばれたのですが、その投票数の書き方が面白い。日本では「正」の文字で5票を表しますね。欧米では縦線を4本書き、5票目はその4本線の上に斜めに線を引く。フランスも今ではこの方法なのですが、150年ほど前のこの用紙では、縦線3本ずつになっています。3本引いたら、右斜め下に3本、次は右斜め上に3本という繰り返しで、ドラクロワには3x7+1で22票が入っていました。

これらは画家の作品とはまったく何の関係もないものですが、せっかく住んでいた所をそのまま公開しているので、普段の美術館とは異なる視点で画家とその時代を見てみるのも面白いのではないかと勝手に思っています。


ドラクロワは、ここに1857年末に移り住み、63年に亡くなるまで住んでいました。最晩年をここで過ごしたことになります。「私の住まいは本当に魅力的である。私の小さな庭からの眺めと心地よいアトリエはいつも私に喜びをもたらしてくれる」といっていたそうですが、確かに、サン・ジェルマン大通りの喧騒がうそのように静かで、白壁のアトリエに映る木の葉の影が時間の経過を教えてくれる・・・そんな空間です。

ロダン美術館

2006-08-17 01:12:36 | 美術・音楽
「ロダンとカンボジアのダンサーたち」という特別展を見に行きましたが、常設展示の作品も見てきました。

今回、一番惹かれたのは、下の作品。

バルザックの像です。ふてぶてしいまでの強さ、傲慢なほどの自信、それでいて繊細さや内面の苦悩が垣間見える・・・人間バルザックを見事に表現していると思います。思わずバルザックの作品を読んでみたくなりました。

もう1点が、模写(デッサン帳)。

ミケランジェロの作品を模写しているのですが、ロダンは実に多くのデッサンを残しています。以前、ピカソ美術館でピカソのデッサンの多さに驚いたのはこのブログでも紹介しましたが、やはり天才といわれる人たちには、見えないところでの鍛錬というか修行があるのですね。それが多いほど、しかも好きでやれる人ほどいい作品を残せるのかもしれません。天才は一夜にしては生まれない、ということでしょうか。

模写といえば、この青年。ず~っと、階段の途中に立ったままデッサンを続けていました。いい作品を残してほしいものです。

いい作品といえば、美術ではないのですが、これ。

ロダンという名前のバラです。2005年に普及し始めた品種のようです。美術館の周りにぐるっと植えられています。


このバラが植えられている庭にも、ロダンの作品があります。

まだ8月中旬だというのに、変な天候のせいでしょうか、気の早い木の葉は散り始めています。もう秋が始まっているようです。


庭にはカフェもあり、休みながら、ゆっくりとロダンの作品や彼の蒐集した作品を鑑賞する、あるいは作品と語り合うことができます。

そして、ロダンといえば、『考える人』。エッフェル塔を背景に入れてみました。