ここは美術館というよりは、民俗学博物館です。ル・ケ・ブランリー美術館(Musee du quai Branly)。入り口脇のプレートには、名称の下にmusee des arts et civilisations d'Afrique, d'Asie, d'Oceanie et des Ameriques(アフリカ・アジア・オセアニアおよび南北アメリカの芸術・文明美術館)と説明があるように、展示されているのはピュア・アートではなく、各地の文明を紹介する品々が中心になっています。

昨年6月にオープンしたのですが、いつ行っても長蛇の列。1時間半待ち、2時間待ち・・・年があらたまってからようやく入場することができました。シラク大統領がパリ市長時代に提唱したプロジェクトで、オープニングでは大統領のご満悦な表情を見ることができました。

エッフェル塔からブランリー河岸をセーヌ川に沿って東へ500メートルほど、セーヌを挟んでパレ・ド・トーキョーの対岸です。設計は、以前ご紹介したアラブ世界研究所やカルティエ財団美術館などを手がけているジャン・ヌヴェル。斬新なデザインです。しかし建物の反対側、フォークロア的要素を取り入れたようなところは、なんとなく消化不良のように見える外観になっています。
さて、展示ですが、エリアごとにまとめてあり、オセアニア、アジア、アフリカ、南北アメリカ、それぞれの伝統工芸品や葬祭用の道具、日常品が美しく展示されています。しかし、歴史的なものは少なく、19~20世紀に作られたものが大多数です。もちろん、日用品といえどもいろいろな装飾が施されていて、その地域の美意識が見て取れます。こうした民俗学的資料とも言える品々を、アジアならギメ美術館、アフリカならダッペール美術館に所蔵されている美術品と併せて鑑賞すると、そのエリアの「美意識」がより鮮明に見えてくるかもしれません。

パプア・ニューギニアをはじめメラネシア、ポリネシアなど太平洋の島々からも多くの品が展示されています。例えば、このような大きな立像。

アジアからはさまざまな民族衣装も多く展示されています。日本からはアイヌの人たちの民族衣装が展示されています。

アフリカからはさまざまな仮面が展示されています。祈祷など宗教儀式で用いられたものが多いようです。

南米インディオもこのような羽飾りをしているんですね。北米インディアンと、さすが近いものがあります。
細長く広い展示会場をぐるっと一周するスロープを歩きながら気付いたことは、エリアが異なっていても同じような日常品、似たデザインが生まれているということです。日本にある木製の高枕と同じものがアフリカや太平洋の国々にあったり、アボリジニーのデザインそっくりのものがアフリカや中米にあったり。人類のいわゆる進化とともに文明は分化していってしまいましたが、昔を今にとどめる伝統工芸品などには、共通のものが多く見られます。かつて、アフリカの大地溝帯で1組のカップルから生まれて地球上に広がったといわれる人類。共通項が多くて当然です。それが今や、相争い、戦争をしている。悲しいことです。ぜひ、平和な世界に!
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昨年6月にオープンしたのですが、いつ行っても長蛇の列。1時間半待ち、2時間待ち・・・年があらたまってからようやく入場することができました。シラク大統領がパリ市長時代に提唱したプロジェクトで、オープニングでは大統領のご満悦な表情を見ることができました。

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さて、展示ですが、エリアごとにまとめてあり、オセアニア、アジア、アフリカ、南北アメリカ、それぞれの伝統工芸品や葬祭用の道具、日常品が美しく展示されています。しかし、歴史的なものは少なく、19~20世紀に作られたものが大多数です。もちろん、日用品といえどもいろいろな装飾が施されていて、その地域の美意識が見て取れます。こうした民俗学的資料とも言える品々を、アジアならギメ美術館、アフリカならダッペール美術館に所蔵されている美術品と併せて鑑賞すると、そのエリアの「美意識」がより鮮明に見えてくるかもしれません。

パプア・ニューギニアをはじめメラネシア、ポリネシアなど太平洋の島々からも多くの品が展示されています。例えば、このような大きな立像。

アジアからはさまざまな民族衣装も多く展示されています。日本からはアイヌの人たちの民族衣装が展示されています。

アフリカからはさまざまな仮面が展示されています。祈祷など宗教儀式で用いられたものが多いようです。

南米インディオもこのような羽飾りをしているんですね。北米インディアンと、さすが近いものがあります。
細長く広い展示会場をぐるっと一周するスロープを歩きながら気付いたことは、エリアが異なっていても同じような日常品、似たデザインが生まれているということです。日本にある木製の高枕と同じものがアフリカや太平洋の国々にあったり、アボリジニーのデザインそっくりのものがアフリカや中米にあったり。人類のいわゆる進化とともに文明は分化していってしまいましたが、昔を今にとどめる伝統工芸品などには、共通のものが多く見られます。かつて、アフリカの大地溝帯で1組のカップルから生まれて地球上に広がったといわれる人類。共通項が多くて当然です。それが今や、相争い、戦争をしている。悲しいことです。ぜひ、平和な世界に!
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