『月に囚われた男』で一気に名を上げたダンカン・ジョーンズ監督の新作。
過去の8分間を何度も繰り返し真相に迫るというプロットは、昔どなたかのショートショートで似たようなものを読んだ気がしますが、やっぱりこの監督はその種明かしプロセスの見せ方がとても上手いです。映画冒頭から観客を主人公とともに混乱の最中に引きずり込み、少しずつ秘密をチラ見せしていく。そのピースを与えるタイミングと頭の中で組立てさせるための猶予時間の提示の仕方が観ていてとても心地よくテンポの良さで最後まで飽きずに引っ張ってくれます。
一種のタイムトラベルものなのだけど、過去の因果が未来に直接は繋がらず、並行世界への入り口ってのが最近の作品っぽいです。「量子力学」なんて呪文でごまかさず、もっと上手に原理を説明したほうが一般ウケはよかったかもね。それにしても矛盾だらけの設定をよくここまでまとめ上げたものです。
それと「映画通ほどダマされる」ってキャッチコピーだけど、これは完全にミスリードですね。本作はそういう類の作品ではありません。これに釣られてオチ予測ばかりに気持ちが行ってしまうと本作の魅力を見落としてしまいがちだと思います。ひねりのあるSFなのだけど監督らしいヒューマニズムにあふれた作品で心温まるラストに好感が持てます。皆が笑顔で時間が止まる場面は、映画史には残らないかもしれないけど気持ちのよい名シーンです。
この映画気に入った人は『月に囚われた男』もぜひ。
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