明るいときに見えないものが暗闇では見える。

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【月に囚われた男 (2009)】 静かでシブい

2010年10月17日 | 映画


■『月に囚われた男』予告編 (Youtube)


【ネタバレあり】

3年間、月でひとりエネルギー資源の採掘作業をして暮らす男が、契約満了直前にひょんなことから自分のクローンに出会う。

この映画をこういう見方する人は少ないかもしれないけど、なんというか、なんとも不思議なバディ映画だと思った。しかも組むのは自分自身。そこへロボットも加わる。

自分であっても利害が一致しないとケンカし、他人でいながらも何十年も生活をともにしてきたかのように相手をおもんばかる様が面白い。その後利害が一致してからの奇妙なそして"あうん"な連帯感が他のバディ映画では見られない魅力。その難しい感情の機微を抑えた演技で魅せるサムロックウェルが絶品。

そして当初は企業側の回し者とも思われたガーディであったが、その無機質なスマイルマークでさえ徐々に表情豊かに見えてくる。彼も3年(x5回)の任務を共にした本当のバディだった。ケビン・スペイシーの声が秀逸で、この作品全体を包む静寂さを形作っている。

一番面白かったのは3人目のクローンを身代わりにしてしまおうとするところ。おいおい彼だってお前らと同じ境遇じゃあないか。でも人ってのは情が移ってなきゃあんなもんかと妙に納得。



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そして全編を包む70年代SFのテイストが懐かしい。

ガーディの造型はもちろんだけど、開始早々の月面の様子に「おぅっ」と腰を乗り出して観てしまった、あれはどうもミニチュア撮影(+CG加工)とのこと。どうりで妙な郷愁と温かみを感じるワケだ。

「科学技術の進化への疑問と人との共存」「権力、国家、体制に対する反抗」とそこで描かれる主題もまさに70年代的。

ところで最後の70年代SFと言われる『エイリアン』の黒幕は日系企業だったが、Lunar Industries社は、どうも韓国系企業の様子。これを残念と思うべきか、どうかw。



全編にただよう静けさがなんとも心地良く懐かしい。切なく哀しい落ち着いた大人のSFと言える。こういう映画が今の時代に観られるとは思わなかった。拾いモノ。



評価:★★★★☆

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