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【ベスト・キッド (2010)】 成龍

2010年10月14日 | 映画


■『ベスト・キッド』予告編(Youtube)


 ジャッキー・チェン(というか成龍)で育った世代であれば、少なからずハリウッド進出後の彼には少し違和感を感じているのではないでしょうか。今や最高の集客力を持つアジアンスターとして君臨する彼ですが、俳優として暗中模索し求められるモノを演じてきた結果、そこで観られるようになったのは「コミカルでいつも笑顔のアクションスター」でした。

 『シャンハイヌーン』や『タキシード』で観る彼はとても魅力的ですし、そのカンフーアクションも健在。欧米におけるアジア俳優の存在感を一気に高め、以後のアジア勢に道を切り開いてくれた彼の功績は多大なるものだと思います。

 ただ一抹のさみしさを感じるのは、ハリウッドの彼はいつ見ても「完成品」であるということ。その「カンフーアクションのできるコメディアン」的スタイルは特に出世作『ラッシュアワー』以後、イメージが固定化されていきます。

 その反面かつてボクらがTVにかじりついて観ていた頃の彼は、まだまだ荒削りな「未完成品」的なところがあり、親しみやすいキャラクターとコメディ要素を取り入れてはいましたが、その映画はまさに「功夫映画」と言えるものです。

 『木人拳』『蛇拳』『酔拳』と功夫映画の黄金律(*1)の中で描かれるその姿には、生きること戦うことへの葛藤と苦悶の表情、そして不屈の努力により手に入れた強靭な肉体と精神があり、"成長するひとりの青年"の姿が映し出されます。そんな成龍を見て育った僕たちには、ハリウッドの彼は少し物足りないのかもしれません。


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 さてそんな想いで鑑賞するジャキー・チェンの映画『ベスト・キッド(2010)』には、そんな当時の成龍が垣間見え単純にとても嬉しいです。

 残念ながらジャッキー自身のアクションはその役柄上少ないのが残念ですが、悪ガキどもを蹴散らすその動きはショーアップされたカンフーアクションではなく、あの頃に観た功夫を彷彿とさせます。

 そしてそんな彼もついに"師匠"を演じる時が来たのかと思うと大変感慨深く、鑑賞前からすでに感動してしまっている自分がいました。口数少なく弟子のジェイデンくんを鍛えあげるその姿に、かつての作品たちの中で猛特訓するジャッキーの姿がオーバーラップし目頭を熱くさせます。

 そして本作は『ベスト・キッド (1984)』のリメイクとしても相当な良い出来です。

 オリジナルは当時『バックトゥザフューチャー』とともに、何度もTVで放映されまくっていたため、over30ぐらいの映画好きでは見たことない人はいないのではないでしょうか。

 北京に場を移してはいますがストーリーラインはほぼ同じで、随所にオリジナルをリスペクトするシーンを入れ込む形で丁寧にリライトされています。あの意味のない反復動作が実はしっかり修行となっているシーンも再現され、分かっちゃいるけど誰もが興奮させられるポイントでしょう。演技指導ジャッキーの設計したそんな特訓シーンは、細かいアイテムまでいちいち過去の彼の作品群を彷彿とさせ、グッと胸に去来するものがあります。

 もちろん最後のトーナメントシーンでは、かのコブラ団(!)のような姑息な反則や、ダニエルさんの「鶴の構え」さえも再現され興奮は最高潮。

 細かいことを言えばあの終幕の仕方さえも好きで、トーナメント会場を去る師弟二人の笑顔でプッツリと終わり余計なエピローグはつけない作りは、これも過去の功夫映画を彷彿とさせる潔さが嬉しいです。



 あと本作で面白いのは、ジェイデンくん演じるドレがイケてる少年であることですかねw。

 引越し一日目からいきなりヒロインをヒップホップダンス(?)でナンパするその姿は、オリジナルのダニエルさ~ん(パット・モリタ風)のようなヘタレくんでは決してありません。そのへんはウィル・スミスの想いが入っていそうで微妙な気もしますがw、オリジナルとは違い面白いポイントです。

 さらにそんなアメリカから来たドレッドヘアのオシャレ小僧にヒロインを簡単に奪われてしまういじめられっ子の気持ちも分からんではなく、そちらにも微妙に肩入れして観られて面白かったですw。




 未だキレのある功夫アクションが垣間見れ、ジャッキーが師匠を演ずるというだけでももう十分。しかも単純明快で痛快、間違いなく面白い。かつてジャッキーに憧れた少年達には本当に観て欲しいし、それ以外の人も間違いなく楽しめるでしょう。

 あ、忘れてました。ジェイデンくんの演技も最高にいいです(^_^;。彼は「親の七光り」ではなく本人が七光ってますよ。ジャッキーを食うほどの演技です。


 「カラテじゃなくてカンフーじゃん」っていうツッコミ(原題「The Karate Kid」)もありますが、そこは欧米人の作った映画、手放しで楽しみましょうw。



評価:★★★★☆


石丸博也さん吹き替え版でも観たいですなぁ。


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*1:功夫映画の黄金律)
 ①主人公と悪人との間に因縁が起こる。(親兄弟を殺される etc.)
 ②未熟なまま悪人に立ち向かいフルボッコされる。
 ③師に出会い、修行に明け暮れる。(その後、師匠も殺される場合あり)
 ④ついには悪人を打ち倒す。
 というものスゴクわかりやすいストーリーラインが定番。