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【愛しのジェニファー】 性(さが)

2009年05月07日 | 映画


【ネタバレあり】

有名ホラー映画監督達が競演するというアメリカの夢のようなTVシリーズ『マスターズ・オブ・ホラー』。三池崇史監督が参加していることで日本でも話題となった。その中でわれらがダリオ・アルジェント御大の監督作品が『愛しのジェニファー』である。以前から観たい観たいと思っていたがやっとこさ観賞。


美しいブロンドに完璧な肢体を持ちながら、その顔は目を背けたくなるほど醜く、話が通じないほど重度の知的障害もある少女ジェニファー。ホームレスに殺されそうになっている彼女を偶然助けた刑事フランクが、その少女によって人生を転落させられていく様を描く。


この映画、感想が真っ二つに分かれるのだろうなと思う。

ジェニファーは自分を庇ってくれる人物には猫のように懐いてくる。そしてそのお礼はその豊満な体で返す。どんなに気味の悪い風貌でも、体は反応してしまうという男の悲しい性(さが)。のちのち彼女はそんなかわいらしいものでなく、もっと恐ろしい怪物であることが分かってくるのであるが、それでも彼女を庇ってしまう刑事の気持ちを受け入れられるかどうかで、天と地ほどの評価の差が生まれるはずだ。

普通の精神であればあの顔とヤルのがムリ、アレ喰った時点でムリ、家族が出て行った時点でさらにムリ、ソレ喰った時点でもう絶対ムリ、と話についていけなくなってしまう人がいるのもムリはない。しかし頼りにされることに男は弱いのだ。そこにあの体がついてくる。ボクのように人恋しい者目線から見れば胸に刺さって痛いほど気持ちが分かる。冷蔵庫に詰められたアレをフランクが発見したのを見てキャッキャと喜ぶジェニファー。酒瓶のお代わりを差し出すジェニファー。もうかわいく見えてきてしまってしょうがない。またそんな自分の中の苦い葛藤をフランクとシンクロさせることでさらに胸ひしがれてしまうのだ。このどうしようもなさを共有できた者が本作観賞における勝者だ。

オチはホラーとしての王道。だいたいの人が途中で読めてしまうと思う。しかしフランクがあの最後を選ばざるを得ない必然。短編として美しく無駄なくまとまっていてとても良い。

ダリオ・アルジェント色は少なめだが、60分の短編で観やすい。ぜひご観賞を。良作。


評価:★★★★☆


ところでこの題名は『フェノミナ』へのオマージュか?
次はジョン・カーペンター監督の『世界の終わり』でも観るかな。


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