活字の海で、アップップ

目の前を通り過ぎる膨大な量の活字の中から、心に引っかかった言葉をチョイス。
その他、音楽編、自然編も有り。

府下の信号数、11706基。それらを預かり制御する、電子の目  ~大阪府警察 施設見学(その3)

2009-09-22 00:00:05 | 施設の海



※ 画像は、大阪府警察のHP 
  平成10年度の警察官採用募集ポスターより

  いやあ。どちらも楽しいなあ。

  「試験会場まで、同行願います」編では、
  「※なお、試験会場では能力の秘匿は認められません。」の。

  「犯人へ、」編では、
  「逃げてもムダよ、スゴイ人大量採用」の、それぞれダメ押し付。

  最近のものも、正統派路線でいいんだけれど。
  こうした遊び心があるポスターも、楽しいよね。うん。
  (その結果、募集に応じた人数、質がどうだったのかは不明だけれど)


さて。
大阪府警察訪問記も、いよいよ大詰め。
最後は、朝のTV等でもおなじみの、「交通管制センター」である。

こちらも、先の通信司令室と同じく、8Fにある。
というか、庁舎内を一般の人にやたらとうろつかせる訳にはいかないから、
コースの集約は当然のことだろうけど。


少し庁舎内を移動すると、又もやガラスで区切られたブースが。
そばには、説明員の方が待っていてくれている(こちらは、お兄さん)。

やはり上から見下ろす形で、展示ブースは設けられている。

先ほどの通信司令室もそうだが、中のスペースは吹き抜けの2階建て程の
高さとなっている。

展示ブースは、2階部分から見下ろすような位置に設けられている。


この、交通管制センターの仕事も、大きく三つに分けられる。

ひとつは、様々なチャネルから収集された交通情報の分析。
情報チャネルとしては、身近にあるものでは幹線道路に設けられた
Nシステム(車両感知器)や、主要交差点に設置されたビデオカメラ。
その他、ヘリコプターやパトカー・白バイからの情報も取り込んで、
交通情報として集約しているのだそうだ。

ちなみに。
そうした監視網が、大阪府下にどれくらいあるのか、ご存知だろうか。

交差点にあるテレビカメラは141箇所、計207台。
Nシステムの感知器は、約1万3千台も設置されているそうである。

これらの情報は、張り巡らされた専用線のネットワークを経由して、
この府警察にあるコンピューターに送り込まれ、分析された上で、
各地域の表示装置へと情報がリアルタイムにフィードバックされていく。


こうした、渋滞情報を元にして渋滞マップを作成することで、
交通情報版やラジオ、VICS等に流していることがもうひとつの
仕事であり、それらの情報は今や2分半に1回という驚異的な更新率を
もって、直近の状況を府民に提供し続けているものなのだが。

僕自身の不見識なら、お恥ずかしい限りなのだが、実はもうひとつ。
重要な仕事がこの管制センターにはあったのだ。


それは…。
渋滞の緩和を目指して、信号の点滅感覚をリアルタイムに調節する、
ということ。

大阪府下で発生する渋滞によって生じる経済損失は、平成21年度で
約8400億円にも達するという試算があるという。

それを少しでも低減させるべく、渋滞状況に応じて信号の切り替えを
コントロールすることで、少しでもスムーズな車両の流れを促進する
ことが、ここ交通管制センターの三つ目の仕事である。

正に、”管制”の名に相応しいことを行っていた訳であり、脱帽!
であった。

まさか。
日ごろ、眺めている信号のタイミングが、そうした監視網によって
コントロールされているとは、夢にも思わなかった。

精々が、年に何回か定期的にデータから設定変更処理を施す位では
ないかと、勝手に想像していた。

勿論、そうした抜本的な設定変更の中長期的なサイクルは有るだ
ろうが、日々リアルタイムにおいても渋滞緩和のための努力が
為されていようとは。

御見それいたしました、と言うより他に無い。


その。
細やかな設定変更を可能にするために、オペレーターに状況を伝達
するためにパネルの正面写真がこちら。


そして。
そうした肌理の細かい作業に従事しているオペレーターの方々が、
こちらである。


ちなみに。
この電光掲示パネルだが、6cm四方のブロックで構成されているそうな。
理由は明白で、そうしておけば、道路の新設等の際にも最小限のブロックの
交換でOKとなるからとか。

パネルはそうだが、裏面の配線とコンピューターの設定変更を考えると、
多少なりともそうしたジャンルに関わっている人間として、その大変さに
身震いする思いである。

それでも。
そうした不断の努力によって。
府下の交通網が管制され、スムーズに行くように見守られているのだ。
このことに、素直に感謝したい。

尚。
深夜帯においては、スピードの出しすぎによる事故を防ぐため、故意に
信号待ちに引っかかるタイミングとなるような設定も行うそうだ。

う~ん。
自分が事故等に遭ってないから言える話しだが、これはご勘弁願いたい
ような気もするぞ(笑)。

ただ、大分減ったとはいえ、まだ暴走族やドリフト族等も残っている現状
では、やむなしといったところかもしれない。

点滅信号を横断する歩行者の安全確保も有るしね。


意外だったのは。
上述したビデオカメラの映像が、犯罪捜査での利用は厳しく制限されて
いるとのこと。

例えば、商店街の防犯カメラの映像が、犯人もしくは被疑者の逃走
ルートの割り出しに使われたり、銀行のATM周辺のカメラが捉えた
強盗の写真がニュース等で流されたりして、犯罪捜査に活用されている
ことは、周知の事実なのだが。

こと。警察という公権力が収集した情報については、その利用用途が
本来の趣旨から外れて使われることは、主に人権上の問題からNGと
なっているとのことである。

これについては、警察内部でも異論はあるようで、捜査に従事する人
から映像の拠出を求められることもしばしば有るらしいが、今の
法制度の枠組みではそれは応じられないとのことであった。



これまた、う~んである。
Google Street Viewの映像問題も少し彷彿とさせる
話しではあるが。
少なくとも、犯罪が発生した場合に、その地点でリアルタイムに映像が
収集出来ていたとすれば、これは願っても無い一次資料な訳であり、
その分析が犯人の逮捕に繋がることで、府民の生活の安全に寄与すると
すれば。

人権云々を持ち出す反論は、如何にも脆弱に思えるのだが。

こういうと、それは余りにも楽天的な発想だ。
第二次大戦前において、公的組織に情報と権力が集中することが、どれ程
市民生活において脅威となっていったことか。
あの上からと相互、双方向からの監視の目が常に光っているという息詰まる
社会を再来させないためにも、情報の集約には慎重すぎるということは無い。

そういった意見も出てくるのかもしれない。

それでも。
どうせ、上述したような防犯カメラ映像等が任意拠出で活用出来るので
あれば。
折角税金を用いて構築した情報ネットワークなのである。
府民の安全を守ると言う目的のために、活用出来る限りのことは為すこと
こそが、必要と思うのだけれど…。

”府民の安全を守る”という点からの逸脱を気にするのであれば。
利用状況等を外部監査によってしっかりとチェックし、目的外利用が
無いことを徹底して検証するような仕組みを構築すればよい。

これからも、僕たちの生活の周りでは様々な形で情報が収集され続ける。
それは、もう否定も逆行も出来ない事実である。

であれば。
その情報を、活用出来る限り活用するとともに、フェイルセーフを強固に
する。
これこそが正しい選択枝だと思うのだ。




見学を終えて庁舎の外に出た僕たちを、小糠雨が濡らした。

門のところでは、まだ年の若いお巡りさんが、立ち番をしている。
ご苦労さまと無言で会釈をすると、静かに敬礼で返してくれた。


こうして。
府民の安全を守るという目的のために、日々注力している大阪府警察の
皆さんの頑張りの、ほんの一端を今日は知る機会を得た。

お巡りさんを見ても、どきどきするような生活を送っていないことに
感謝しつつ、全てのお巡りさんに有難う。この思いを胸に、庁舎を
後にした次第である。


(この稿、了)



(付記)
府下でもっとも渋滞が激しい地点はどこと思うか?
そういう質問が、説明員のお兄さんから為されたとき。
真っ先に念頭に浮かんだのは、梅新の新御堂出口の辺り。

でも、正解は全く違っていて、枚方市の天の川辺りとのことであった。

う~ん。
やはり、世界はまだまだ謎に満ちている。





秒奪―交通管制システムに侵入せよ!
管野 ひろし
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2 コメント

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Unknown (宇宙ハンター55)
2009-09-22 07:59:41
>Nシステム(車両感知器)

Nシステムは車両感知器だったんですね。てっきり、ナンバー読取装置だと思ってました。

大人の社会見学として、大阪府警編は楽しめました。ありがとうございました。

また、めったにいけないところのレポートをお待ちしています。
返信する
なるほど (MOLTA)
2009-09-23 06:47:26
コメントを貰ってパンフレットとメモを確認したら、1万3千台とあるのは超音波や映像を利用した車両感知器でした。

交通量監視のための車両感知器は、パンフによれば

1) 超音波式車両感知器
2) 光ビーコン
3) 画像型車両感知器

の三種類です。


Nシステムは、ご指摘のとおりナンバー読み取り装置です(NはナンバーのN)。

車両感知器とは全く別物なのか、3)が該当するものなのかについては、明確な確認が出来ていません。

お詫びして、訂正します。

少し調べて、もし分かれば報告しますね。

なお、先日ご指摘をいただいた指令と司令の違いについても、HP上は自分の不見識の証としてそのまま残している次第です。
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