活字の海で、アップップ

目の前を通り過ぎる膨大な量の活字の中から、心に引っかかった言葉をチョイス。
その他、音楽編、自然編も有り。

ほんとにあった怖い話 9月号

2009-08-17 00:00:05 | マンガの海(読了編)
出版社:朝日新聞社 編集人:長谷川まち子 
定価:400円(税抜) 発売日:7月25日
特集:災いの家


長引きすぎた梅雨の影響だろうか。
なんだか有ったか無かったか判らないままに、今年の夏が
過ぎようとしている。

そんな中、発売された本誌。
今回は、看板作家の山本まゆり氏はお休み。
その代わりに、永久保貴一氏が巻頭を飾ることとなった。

ただ、この永久保氏。
同種他紙(「実際にあった怖い話」9月号 大都社)の巻頭も
飾っているので、こうしたタイミングで出ると非常に紛らわしい。

大体この2誌。
なんでこんなに装丁までそっくりなんだ?
というか、後発の方がそっくりにしていることは明白なんだけどさ。

こちらが「実際にあった怖い話」9月号。


TOPに挙げた、僕の購入している「ほんとにあった怖い話」9月号と
見比べてみて欲しい。

しかも、似ているのは装丁だけではない。
読者、マンガ家、芸能人の体験談を集めてマンガ化という、雑誌の
基本コンセプトも全く同じ。
その恥も外聞もない徹底した柳の下のドジョウ作戦に、かえって
畏敬の念すら覚えてしまう。

ともあれ。
今度書店に行ったら、「実怖」の通巻と「ほん怖」のそれを比べて
見るとしよう。
それで、とりあえずはどちらが古いかははっきりするからね。


さて、本誌の内容レビューである。

今回収録されている漫画は10作品。
その中から、僕なりのベスト3をチョイスしてみるとしよう。

1位:「怪奇心霊語り」
    語り・加門七海 画・JET

    小説家・加門七海の心霊体験を元にマンガ化している
    このシリーズ。
    JET氏の安定した画力と、加門氏の体験の面白さが
    相変わらずよい相乗効果を出している。
    シベリアのシャーマンの舞踏演劇の最中に起こった
    降霊事件のエピソードが一番の山かな。
    このエピソード、中途な力を持つと、そしてそれを
    それを過信すると偉い目に合うという訓話にもなって
    いて、説得力あり(笑)。


2位:心の処方箋「インナーメディスン」足りない心
   原案・神楽ゆう 画・堆木庸

   こちらも、安定して面白い作品。
   特にスピリチュアルな話しと捉えなくても全然OK。
   自分が本当に欲している気持ちに蓋をして目を背けていると、
   鬱屈した感情が思わぬ形を取って現出することもある。という
   正に以って銘すべしな話しが語られる。


3位:「這ってくる影」
    語り・竹中直人 画・鯛 夢    

    この雑誌で、僕がもっとも好きなマンガ家の鯛夢氏。
    その理由は、やはり独特の絵柄と画力に尽きる。

    しかし、鯛夢氏の絵柄。完全に氏のオリジナルなんだけど、
    たまに出るカットに高橋ツトム氏の系譜を感じるのは
    気のせいだろうか?

    それはともかくとして。
    今回は少し辛目の評価。
    
    その理由は、何となく絵にむらがあるという印象を受ける
    ためである。
    今回は、竹中直人氏という著名人の談話のマンガ化なだけに、
    似せる、という点に力が行き過ぎてこうした絵になったのでは?
    という印象も有り。

    やはり、氏の場合はオリジナル作品の方が、よりよい味を
    出している気がするなあ。

    それでも、夜中にケーキを持って出てくる老婆の絵の迫力は
    流石!だった。


次点:「蔵の女」
    画/たにぐち智子

    決して絵が上手いとは言えないこの人を(失礼)次点に
    加えたのは、二つの理由から。

    1) エピソードの怖さ。
       実はこれに近しい話しを実際に見聞しており、
       それを思い出してしまったことが大きな要因。
       (どんな話しかは、まだ怖くて書けない…。
        人の業って怖い。とだけ、語っておく)

    2) アップの決めコマの怖さ。
       おお。他の絵とは異なり、この絵は怖い!
       でも、こうした絵を夜中に一人で書いていたく
       ないなあ(笑)。あなたは、偉い。本当に。


次点2:永久保異聞 「闇の考証」~古都・奈良 血統と権力の争い~
    作画:永久保貴一

    う~ん。
    天智天皇と天武天皇を巡る骨肉の争いと、その周辺で生じた
    様々な出来事を、霊能者・寺尾玲子氏と同じく霊能者・天宮
    視子氏が霊視で読み解いていく。
    その話しは面白いのである。十分に。

    そこで語られる話が事実かどうかなんて、誰にも検証出来る
    訳ではないので、それに異論を唱える気も無い。
    
    だから、本来ならばもっと上位にランクインさせたいのだが…。

    如何せん、このマンガ家の場合。コマによって力のかけ様が
    違いすぎる。
    どうでもいい(と作者が思った?)コマは、徹底して手を抜く。
    その差が顕著で、というよりも、圧倒的に手を抜いている
    コマの方が多く思えて、それが正直読んでいて辛い。
    いっそマンガにせず、挿絵形式にした方が余程すっきりする
    と思えるのだけれど。

    
さて、夏の夜も更けてきた。
盂蘭盆もおしまい。あの世へ戻る霊に連れて行かれないように、
早く寝ようっと(笑)。

(この稿、了)


(付記)
それにしても。
マンガでは無いので、ここでは取り上げなかったけれど、面白いのが
寺尾玲子の心霊相談箱。
殆どの悩みを、それは霊障なんかではなく、気の迷い、あるいは
だまされていると、スパスパとシェラスコのお肉宜しく切り落として
くれるのは、読んでいて実に小気味がいい。

今回は珍しく、3話の相談のうち、2話は心霊絡みと玲子さんが判断。
どんな心霊相談なんだ?という気もするが、そのバランス感覚がまた
いいんだよなあ。


(付記2)
前号のレビューの終わりにも書きましたが、僕は基本的にこうした
霊的センサーは持ち合わせていません。
(余程の場所とタイミングで無い限り)
なので、この本に対しても、一方的な眉唾でもなく、妄信でもなく。
純粋に読み物として楽しんでいます。


ほんとにあった怖い話 2009年 09月号 [雑誌]

朝日新聞出版

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