活字の海で、アップップ

目の前を通り過ぎる膨大な量の活字の中から、心に引っかかった言葉をチョイス。
その他、音楽編、自然編も有り。

DEATH NOTE デスノート

2009-12-01 00:00:03 | マンガの海(読了編)
原作:大場つぐみ 漫画:小畑健 ジャンプコミックス刊 
価格:390円(税別) 全13巻(全108話)
※ 13巻は、ガイドブック。
初版刊行:2004年4月7日
第31刷刊行:2006年8月6日(入手版)



今更の感、ありありではあるけれど。

行きつけの古本屋で、全巻セットを発見。
予備知識が全く無いままに購入し、先日読了。

言わずもがな。
本書は。
12巻までの累計発行部数が3000万部に及び、1巻辺りの
平均発行部数も200万部を超えているとされている化け物
コミックである(数字は、いずれもWikiによる)。


死神が本来所有する、デスノートと呼ばれるノート。

手にした人間は、中に殺したい人の名を書くだけで直接手を下さずに
人を殺めることが可能となる。


「退屈だから。」

そんな理由で、自分が持つデスノートを人間界に落とした死神リューク。

そのノートを拾った高校生、夜神月(ライト)。

月は、ノートの力を認識するや。
世の中に蠢く悪を駆逐し、清らかな人のみが生きる権利を有する社会を
実現しようとして、大量殺人に手を染める。

そして。
その前に立ちはだかったのが、ICPOや各国の警察、FBIさえも
影響下におく、謎の名探偵L。

両者の対決を軸にして、物語は進んでいく。

果たして、勝者はどちらとなるのか...。




その答えは、関心をお持ちの方はご自分の目で確認していただくと
して。

読了した感想としては、よくこれを少年ジャンプで連載出来たなぁ
というものである。

恣意的に人の生殺与奪の権利を得ることの出来る能力を持った男が
主人公。

しかも、彼はその力を社会のために使おうとしていた。


小学生も読んでいる雑誌の連載としては、なかなかに過激な設定
では無いか。

まぁ。
子供って、大人が考えるほど馬鹿では無いし。
思っている以上に色々と考えている存在だと言う判断から、
編集部も連載を決意したのだろうし、その判断は間違ってはいない
と思う。

実際。
「月派、L派」という言葉で検索してみると、思ったとおり好みを
問いかけているHPは結構有って、散見しただけでも殆どがLを
圧倒的に指示している。

例え、どのような理由があろうとも。
一方的に、自分の判断だけで他者を殺す存在なんて有り得ない。

だから。
Lの方が正義。


その認識は、間違ってはいない。
いないが、しかし。

こうまであからさまにL派の方が多いと言う事実に、結構吃驚した。
先に挙げたソーシャル「コトノハ」では、支持比率は14対58!)

だって、そうではないか。
誰だって、月のような考えを持ったことが一度や二度は有るだろう。

理不尽な犯罪。
納得できない政治的判断。
その他。

無理が通れば道理が引っ込むような不条理が満ちる、この世の中で。

自分に力があれば。

そう願ったことの無い人など、いるのだろうか?


確かに、月の思想は危険である。

仮に、月が下す生殺の判断に瑕疵が混在しないとしても、だ。
月が絶対君主のように君臨する社会に、未来は無い。

何故なら。
月の命は、永遠では無いのだから。

月が築き上げた清らかな世界は、月の死後間違いなく瓦解するだろう。

例え、どれほど周到に後継者を育成し、準備したとしても、だ。

その後に生じる反動を伴った混沌と混乱は、凄まじいものとなるだろう。

しかし、それも人々が自ら選び取った道だというのであれば、致し方も
有るまい。

が、それがただ一人、絶対的な力を持った月の存在と、その消失故に
生じたカオスだとすれば。


嘗て、ヤン・ウェンリーが、

「専制政治の罪とは、人民が政治の害悪を他人のせいにできる
 という点につきるのです。

 その罪の大きさにくらべれば、100人の名君の善政の功も
 小さなものです。」

と喝破したように。
   (「銀河英雄伝説 第5巻 風雲編」著:田中芳樹より)

それは、専制政治の問題点と正しく同一のものであり、人類が長き
歴史の末にようやく培ってきた民主主義政治を根幹から否定するもの
でも有る。


そう、なのだけれど。
それでも、尚。

月が掌中に収めた力に、僕は憧れてしまう。

それは、決して月を容認すると言うものではないが、しかし。
その闇が濃いほどに、輝きを放つものもまた有りなのだ、と思う。


かのオタキング・岡田斗司夫氏は。
この作品を、弱者=月派、強者=L派に二極分化した。


その方向性は間違ってはいないし、氏も対極構図を明確にするために
区分けしただけだろう。

世の全てが、そう明白に峻別されるものでもないのだから。

2:6:2の法則に示されるように、世の中の圧倒的多数は
どちらつかずの真ん中に位置しているのだ。


その6割の中庸な人々は。

光と闇。
双方の理力に惹かれ合いながら、日々の暮らしを営んでいく
のだろう。


と、そう考えたときに。

世に、L派が多数を占めているという事態に、少し危惧を感じる
のは、僕の気の回しすぎだろうか?

もとより、僕が見たサイトが、全てのファンの意向を表している
という訳でもないのだろうが。


僕としては。
もう少し、毒のある社会の在り様にも魅力を感じてしまうのだ。


(この稿、了)



(付記)
しかし、この作品。
ストーリーと絵のコラボが素晴らしい。

アニメ、映画は未見であるが、このイメージを壊すことなく作品化
出来たのかなぁ?









DEATH NOTE デスノート(1)
大場 つぐみ,小畑 健
集英社

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銀河英雄伝説〈5〉風雲篇 (創元SF文庫)
田中 芳樹
東京創元社

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