著:荒木飛呂彦・鬼窪浩久 集英社刊 定価:1714円(税別)
帯コピー:荒木飛呂彦が綴る奇妙な真実。
初版刊行:2004年3月24日(入手版も同じ)
入手形態:古書(980円(税込))
この本。
AMAZONの書評子の中でも、評価が分かれている。
ちなみに。
現時点で17レビューあるうちの内訳は、以下のとおり。
星5つ: (3)
星4つ: (7)
星3つ: (3)
星2つ: (1)
星1つ: (3)
まあ、星2に比して星4が圧倒的なので。
全体的には高評価を得ていることには間違いないのだけれど。
これらを特異点と看做せば、見事に。
残った星1つ・3つ・5つでは、均等分布の層を成している。
不評の人の主張は、概ね以下のパターンに分類できる。
曰く。
・値段が高い
・荒木氏以外の人が描いている率が高すぎる。これは詐欺だ!
概ね、この二つに集約されるだろう。
最初の意見については、僕も首肯する。
確かに、豪華装丁とはいえ1714円(税抜)は高い。
僕も、新刊では手を出さなかっただろう。
ただ。
買われた人は、それだけの投資をしてでも本書を読みたいと
判断されたのだから。
この文句を言うには、その値段と比して内容に不満足である
ことが、条件となるだろう。
そこで出てくるのが、二つ目の不満点。
これも、確かに。
6篇中で、荒木氏が作画を担当しているのは2編。
これで著者名に荒木氏が大判であるのはどうよ?と思っても、
むべなるかなといったところだろう。
それでも。
残りの4篇も、全て荒木氏が原作・構成を担当しているのだから。
全作品に荒木氏が関与していることは間違いない。
と、すれば。
この著者名デザインも。
出版社のデザインのあざとさは感じるが、しかし。
詐欺だと言い張るほどのものではあるまい。
もし。
全篇が荒木氏のペンによるものという思い込みで、中身を確認もせずに
購入した後にショックを受けた、、というのであれば。
お気持ちはわかるものの、そのチェックの甘さという点において。
残念ながら、まだガンダムに乗りたてのアムロにさえ、
「迂闊な奴め」(「第5話「大気圏突入」より)
と言われてしまっても、致し方ないのではないか。
...と、まあ。
本書の付帯的なところでばかり、話しを進めていても埒が明くまい。
肝心の。
本書の内容について、言及していこう。
上述したように、本書は6篇で構成されている。
そのいずれもが、負けず劣らず奇人変人を探し出して題材としている。
そのバランスも。
タイ・カップのような有名人(大リーガー。不世出のバッターとして、
名前くらいは聞いたことが有る人が殆どではないか)から始まり。
エジソンという有名人の影となり、世間から忘れられてしまった
ニコラ・テスラのような人。
あるいは、興行師。
あるいは、名も無い市井の人々。
前書きで、荒木氏が語っているように。
実に、バランスよく。
様々な人が発掘され、料理されて、盛り付けれている。
このパターン、実はジャンプでは先例がある。
1986年という、まだヤングジャンプの創刊間も無い頃から
6年に渡って連載された、「栄光なき天才たち」
(原作:伊藤智義(一部)、画:森田信吾)である。
ヤングジャンプは、その創刊の時期やその後の隆盛からして、
青年コミック誌の源流を為すものとも言えるだろうが。
その派生誌であるウルトラジャンプにおいて。
週刊誌連載で多忙な荒木氏に、どういう経緯で作品を掲載することに
なったのかは知る由も無いが。
安直に、売れ筋を狙ったJOJOの伝奇ホラー路線をお仕着せとせずに。
こうしたモチーフの作品をも掲載する編集部の意向は評価されるべき
だろう。
勿論、そこには。
こういう作品を描いてみたい!という荒木氏の思いが、もっとも色濃く
反映されているのだろうけれど。
鬼窪氏(本書連載当時、荒木氏のアシスタントをしていたらしい)の
手になる作品も。
荒木氏の原作と構成ということもあってか。
荒木ワールドの芳香は、十分に漂っている。
正直。
荒木氏自身のペンによるこれらの作品化も見てみたいとも思うが。
そうした雑念よりも、何よりも。
そこに描かれた、人生模様の凄まじさに圧倒される。
タイ・カップなんて、殆ど精神的破綻者ではあるが。
それでも、どれだけの偉業を成し遂げた男であったのか。
僕は、野球は見るのもするのも好きなスポーツであり。
更に、選手や監督のの視点を知りたいがゆえに。
彼らの書いた著作等も結構目を通していると思っていたが。
今後は、海外の選手を取り上げた作品も、是非読んでみたいと思った。
この、タイ・カップをはじめとして。
他に取り上げられた5人(正確には、4人と一組)の人物像。
一応、荒木氏の前書きにも「事実を基に構成されている」と書かれて
あるが。
本当に、本書に描かれたとおりであったのかどうかは、現時点では
知る由も無い。
ただ。
こうした作品を生み出した段階で。
荒木氏と鬼窪氏にとっては、これが真実だったということであり。
そこに書かれたドラマに興味を持ったものは。
更にその世界を知るべく、活字の海に漕ぎ出していけばよいのである。
勿論。
本書を読むことで、ここまでと満足して。
関心を別のものに向けていっても一向に構わないだろう。
ただ。
作品を生み出した荒木氏、鬼窪氏にすれば。
読者が、これをきっかけにして。
本書に描かれた世界を、更に深彫りしていくというムーブメントを
読者に与えたということは。
創作者として、最高の勲章となるのではないだろうか。
そして。
それだけの魅力を持つ本だと、僕は思うのである。
(この稿、了)
(付記)
参考までに。
本書に取り上げられた人々を、サブタイトルの紹介にて案内しておこう。
タイ・カップ
~史上最高!強打製造機
康 芳夫
~オリバー君を仕掛けた世紀の興行師
腸チフスのメアリー
~実在した究極の選択
ウインチェスター・ミステリー・ハウス
~未亡人が増築し続けた謎の館
コリヤー兄弟
~誰も知らない兄弟
ニコラ・ステラ
~エジソンを震えあがらせた大天才
帯コピー:荒木飛呂彦が綴る奇妙な真実。
初版刊行:2004年3月24日(入手版も同じ)
入手形態:古書(980円(税込))
この本。
AMAZONの書評子の中でも、評価が分かれている。
ちなみに。
現時点で17レビューあるうちの内訳は、以下のとおり。
星5つ: (3)
星4つ: (7)
星3つ: (3)
星2つ: (1)
星1つ: (3)
まあ、星2に比して星4が圧倒的なので。
全体的には高評価を得ていることには間違いないのだけれど。
これらを特異点と看做せば、見事に。
残った星1つ・3つ・5つでは、均等分布の層を成している。
不評の人の主張は、概ね以下のパターンに分類できる。
曰く。
・値段が高い
・荒木氏以外の人が描いている率が高すぎる。これは詐欺だ!
概ね、この二つに集約されるだろう。
最初の意見については、僕も首肯する。
確かに、豪華装丁とはいえ1714円(税抜)は高い。
僕も、新刊では手を出さなかっただろう。
ただ。
買われた人は、それだけの投資をしてでも本書を読みたいと
判断されたのだから。
この文句を言うには、その値段と比して内容に不満足である
ことが、条件となるだろう。
そこで出てくるのが、二つ目の不満点。
これも、確かに。
6篇中で、荒木氏が作画を担当しているのは2編。
これで著者名に荒木氏が大判であるのはどうよ?と思っても、
むべなるかなといったところだろう。
それでも。
残りの4篇も、全て荒木氏が原作・構成を担当しているのだから。
全作品に荒木氏が関与していることは間違いない。
と、すれば。
この著者名デザインも。
出版社のデザインのあざとさは感じるが、しかし。
詐欺だと言い張るほどのものではあるまい。
もし。
全篇が荒木氏のペンによるものという思い込みで、中身を確認もせずに
購入した後にショックを受けた、、というのであれば。
お気持ちはわかるものの、そのチェックの甘さという点において。
残念ながら、まだガンダムに乗りたてのアムロにさえ、
「迂闊な奴め」(「第5話「大気圏突入」より)
と言われてしまっても、致し方ないのではないか。
...と、まあ。
本書の付帯的なところでばかり、話しを進めていても埒が明くまい。
肝心の。
本書の内容について、言及していこう。
上述したように、本書は6篇で構成されている。
そのいずれもが、負けず劣らず奇人変人を探し出して題材としている。
そのバランスも。
タイ・カップのような有名人(大リーガー。不世出のバッターとして、
名前くらいは聞いたことが有る人が殆どではないか)から始まり。
エジソンという有名人の影となり、世間から忘れられてしまった
ニコラ・テスラのような人。
あるいは、興行師。
あるいは、名も無い市井の人々。
前書きで、荒木氏が語っているように。
実に、バランスよく。
様々な人が発掘され、料理されて、盛り付けれている。
このパターン、実はジャンプでは先例がある。
1986年という、まだヤングジャンプの創刊間も無い頃から
6年に渡って連載された、「栄光なき天才たち」
(原作:伊藤智義(一部)、画:森田信吾)である。
ヤングジャンプは、その創刊の時期やその後の隆盛からして、
青年コミック誌の源流を為すものとも言えるだろうが。
その派生誌であるウルトラジャンプにおいて。
週刊誌連載で多忙な荒木氏に、どういう経緯で作品を掲載することに
なったのかは知る由も無いが。
安直に、売れ筋を狙ったJOJOの伝奇ホラー路線をお仕着せとせずに。
こうしたモチーフの作品をも掲載する編集部の意向は評価されるべき
だろう。
勿論、そこには。
こういう作品を描いてみたい!という荒木氏の思いが、もっとも色濃く
反映されているのだろうけれど。
鬼窪氏(本書連載当時、荒木氏のアシスタントをしていたらしい)の
手になる作品も。
荒木氏の原作と構成ということもあってか。
荒木ワールドの芳香は、十分に漂っている。
正直。
荒木氏自身のペンによるこれらの作品化も見てみたいとも思うが。
そうした雑念よりも、何よりも。
そこに描かれた、人生模様の凄まじさに圧倒される。
タイ・カップなんて、殆ど精神的破綻者ではあるが。
それでも、どれだけの偉業を成し遂げた男であったのか。
僕は、野球は見るのもするのも好きなスポーツであり。
更に、選手や監督のの視点を知りたいがゆえに。
彼らの書いた著作等も結構目を通していると思っていたが。
今後は、海外の選手を取り上げた作品も、是非読んでみたいと思った。
この、タイ・カップをはじめとして。
他に取り上げられた5人(正確には、4人と一組)の人物像。
一応、荒木氏の前書きにも「事実を基に構成されている」と書かれて
あるが。
本当に、本書に描かれたとおりであったのかどうかは、現時点では
知る由も無い。
ただ。
こうした作品を生み出した段階で。
荒木氏と鬼窪氏にとっては、これが真実だったということであり。
そこに書かれたドラマに興味を持ったものは。
更にその世界を知るべく、活字の海に漕ぎ出していけばよいのである。
勿論。
本書を読むことで、ここまでと満足して。
関心を別のものに向けていっても一向に構わないだろう。
ただ。
作品を生み出した荒木氏、鬼窪氏にすれば。
読者が、これをきっかけにして。
本書に描かれた世界を、更に深彫りしていくというムーブメントを
読者に与えたということは。
創作者として、最高の勲章となるのではないだろうか。
そして。
それだけの魅力を持つ本だと、僕は思うのである。
(この稿、了)
(付記)
参考までに。
本書に取り上げられた人々を、サブタイトルの紹介にて案内しておこう。
タイ・カップ
~史上最高!強打製造機
康 芳夫
~オリバー君を仕掛けた世紀の興行師
腸チフスのメアリー
~実在した究極の選択
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コリヤー兄弟
~誰も知らない兄弟
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