作画:清原なつの ハヤカワコミック文庫刊 定価:680円+税
初版刊行:2006年3月10日(入手版も同じ)
花岡ちゃんに、最初に出会ったのが。
何時の頃だったのか。
何歳の頃だったのか。
もう、記憶も定かではない。
それでも。
煌びやかに舞う花びらと星に囲まれたような、「りぼん」の中で。
葉っぱと、眼鏡と、タバコと。
そして、何より本に満ちた花岡ちゃんの空間は…。
僕にとって、とても居心地のよいところだった。
北陸の某大学の(多分)3回生(※)。
(※ 喫煙しているからって理由だけで3回生としたけれど、
カウンターパートナーである簑島さんは3回生と明記
されていて、その簑島さんに敬語を使っているので、
ひょっとしたら1~2回生かも?
僕の感覚的には、1回生くさいんだな。
こら。タバコを吸ってはいかんではないか(笑))
女らしさは微塵も無く。
有るのはただ只管(ひたすら)、直向(ひたむき)な知識欲。
好きな本を探し、見つけ、紫煙を燻(くゆ)らせながら読んでいる
時間が、最も幸せな花岡ちゃん。
そんな彼女を微笑ましく思う輩って、自分くらいでは?
等と思うのが、十代の自己中心的発想の典型的パターン。
1匹いれば30匹!(笑)の法則、あるいはハインリッヒの法則は、
花岡ちゃんファンにもしっかり有効だった。
まぁ冷静に考えれば、シリーズ化して掲載された時点で、それなりに
読者からの反響が良かったのだとは、分かりそうなもんだけれどね。
でも心底びっくりしたのは、本書の後書きコミック(書き下ろし)を
読んだ時。
雑誌掲載当時、膨大な量のファンレターが来たという。
しかも、その3割が男性だったと言うのだから。
当時、「りぼん」を読んでいた男子がどれほどいたのだろうか?
僕は、たまさか。
妹が定期購読していたものを、家に他にマンガが無いが故に読んでいて
出会うことが出来たのだけれど。
まあ、その数はともかくとして。
それだけ、多くの人の心を花岡ちゃんは捉えていた訳だ。と。
改めて思う。
では、僕を含め、それらの人々(特に男子)が。
花岡ちゃんのどこにそれほど魅かれたのだろう?
知的好奇心の塊のようなところ?
眼鏡っ子なところ?
知識を集積すれば、智慧が沸くと信じている純真さ?
ツンデレ系の先駆けのような、頑なさ?
ややサディスティックなところ?
それでもって、どこか憎めないところ?
脆さを抱えながらも、突っ張っているところ?
でもやっぱり脆いところ?
紫煙が似合うところ?
純粋に、知性の輝きに魅かれるのであれば。
時に辛らつに、時に妖艶に。
そして、時にはコケティッシュに。
その美貌と相まって、天は二物を与えたもうた笹川華子女史に
もっと人気が集まってよい筈である。
勿論、笹川女史のファンもいるのだろうけれど、花岡ちゃん程の
ファン層の厚みがあるとは寡聞にして知らない。
と、なれば。
よもや。
知的であろうとしながらも、どこか周囲に及ばない花岡ちゃんを
上から目線で愛でるようなファンばかりとも思いたくは無い。
結局。
花岡ちゃんの持つ、知性と言うものに対する指向性の純粋さが。
この世知辛い世の中を生きていく方便として、妥協を日々余儀なく
される僕達にとっては、美しく、かつ愛らしく思えるからではないか。
花岡ちゃんは、奇人レベルで自他共に上回るとされる簑島さんから
物事はもっと曲げたりナナメから見ないと真実なんて見えないのだと
冗談めかして諭される。
それでも、僕は。
ニヒルに、斜に構えた花岡ちゃんなど見たくは無い。
花岡ちゃんには、いつまでもピュアな探究心を持ち続けていて欲しい。
そう、思う。
それでも、人は。
前を向いて、進んでいかねばならない。
本のページを開けば。
そこには、いつも、いつの時も。
同じ時が流れているけれども。
それでも、その切り取られた時間の先には。
花岡ちゃんが、更に先を目指して進んでいく未来が。
僕達には見えないだけで、存在しているのだ、と。
そう、思いたい。
そのことを、示唆するかのように。
花岡ちゃんシリーズの、三作目にして最終話「なだれのイエス」にて。
花岡ちゃんは、こう述懐する。
「それは
きた道を
帰るためではなくて
いく先を
失わないために
いつも
現在位置を
たしかめていよう」
いい、言葉だ。
(この稿、了)
(付記)
今の、ハヤカワコミック文庫の表紙もいいのだけれど。
僕にとって「花岡ちゃん…」の本といえば、やはりこちらのイメージ
なのだよなぁ。
ああ、単行本。どこにいったんだろう?
(付記2)
自分らしさが、何なのか。
薬師丸ひろ子の「メイン・テーマ」じゃないけれど。
もう○十年も生きてきたけれど、まだ分からない。
それでも。
笹川華子女史に道で遭った時に。
あなたらしさが殉死している、と言われないようにはなりたいなあ。
そう、思っている。
薬師丸ひろ子 - Main Theme(メイン・テーマ)
初版刊行:2006年3月10日(入手版も同じ)
花岡ちゃんに、最初に出会ったのが。
何時の頃だったのか。
何歳の頃だったのか。
もう、記憶も定かではない。
それでも。
煌びやかに舞う花びらと星に囲まれたような、「りぼん」の中で。
葉っぱと、眼鏡と、タバコと。
そして、何より本に満ちた花岡ちゃんの空間は…。
僕にとって、とても居心地のよいところだった。
北陸の某大学の(多分)3回生(※)。
(※ 喫煙しているからって理由だけで3回生としたけれど、
カウンターパートナーである簑島さんは3回生と明記
されていて、その簑島さんに敬語を使っているので、
ひょっとしたら1~2回生かも?
僕の感覚的には、1回生くさいんだな。
こら。タバコを吸ってはいかんではないか(笑))
女らしさは微塵も無く。
有るのはただ只管(ひたすら)、直向(ひたむき)な知識欲。
好きな本を探し、見つけ、紫煙を燻(くゆ)らせながら読んでいる
時間が、最も幸せな花岡ちゃん。
そんな彼女を微笑ましく思う輩って、自分くらいでは?
等と思うのが、十代の自己中心的発想の典型的パターン。
1匹いれば30匹!(笑)の法則、あるいはハインリッヒの法則は、
花岡ちゃんファンにもしっかり有効だった。
まぁ冷静に考えれば、シリーズ化して掲載された時点で、それなりに
読者からの反響が良かったのだとは、分かりそうなもんだけれどね。
でも心底びっくりしたのは、本書の後書きコミック(書き下ろし)を
読んだ時。
雑誌掲載当時、膨大な量のファンレターが来たという。
しかも、その3割が男性だったと言うのだから。
当時、「りぼん」を読んでいた男子がどれほどいたのだろうか?
僕は、たまさか。
妹が定期購読していたものを、家に他にマンガが無いが故に読んでいて
出会うことが出来たのだけれど。
まあ、その数はともかくとして。
それだけ、多くの人の心を花岡ちゃんは捉えていた訳だ。と。
改めて思う。
では、僕を含め、それらの人々(特に男子)が。
花岡ちゃんのどこにそれほど魅かれたのだろう?
知的好奇心の塊のようなところ?
眼鏡っ子なところ?
知識を集積すれば、智慧が沸くと信じている純真さ?
ツンデレ系の先駆けのような、頑なさ?
ややサディスティックなところ?
それでもって、どこか憎めないところ?
脆さを抱えながらも、突っ張っているところ?
でもやっぱり脆いところ?
紫煙が似合うところ?
純粋に、知性の輝きに魅かれるのであれば。
時に辛らつに、時に妖艶に。
そして、時にはコケティッシュに。
その美貌と相まって、天は二物を与えたもうた笹川華子女史に
もっと人気が集まってよい筈である。
勿論、笹川女史のファンもいるのだろうけれど、花岡ちゃん程の
ファン層の厚みがあるとは寡聞にして知らない。
と、なれば。
よもや。
知的であろうとしながらも、どこか周囲に及ばない花岡ちゃんを
上から目線で愛でるようなファンばかりとも思いたくは無い。
結局。
花岡ちゃんの持つ、知性と言うものに対する指向性の純粋さが。
この世知辛い世の中を生きていく方便として、妥協を日々余儀なく
される僕達にとっては、美しく、かつ愛らしく思えるからではないか。
花岡ちゃんは、奇人レベルで自他共に上回るとされる簑島さんから
物事はもっと曲げたりナナメから見ないと真実なんて見えないのだと
冗談めかして諭される。
それでも、僕は。
ニヒルに、斜に構えた花岡ちゃんなど見たくは無い。
花岡ちゃんには、いつまでもピュアな探究心を持ち続けていて欲しい。
そう、思う。
それでも、人は。
前を向いて、進んでいかねばならない。
本のページを開けば。
そこには、いつも、いつの時も。
同じ時が流れているけれども。
それでも、その切り取られた時間の先には。
花岡ちゃんが、更に先を目指して進んでいく未来が。
僕達には見えないだけで、存在しているのだ、と。
そう、思いたい。
そのことを、示唆するかのように。
花岡ちゃんシリーズの、三作目にして最終話「なだれのイエス」にて。
花岡ちゃんは、こう述懐する。
「それは
きた道を
帰るためではなくて
いく先を
失わないために
いつも
現在位置を
たしかめていよう」
いい、言葉だ。
(この稿、了)
(付記)
今の、ハヤカワコミック文庫の表紙もいいのだけれど。
僕にとって「花岡ちゃん…」の本といえば、やはりこちらのイメージ
なのだよなぁ。
ああ、単行本。どこにいったんだろう?
(付記2)
自分らしさが、何なのか。
薬師丸ひろ子の「メイン・テーマ」じゃないけれど。
もう○十年も生きてきたけれど、まだ分からない。
それでも。
笹川華子女史に道で遭った時に。
あなたらしさが殉死している、と言われないようにはなりたいなあ。
そう、思っている。
薬師丸ひろ子 - Main Theme(メイン・テーマ)
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