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目の前を通り過ぎる膨大な量の活字の中から、心に引っかかった言葉をチョイス。
その他、音楽編、自然編も有り。

はやぶさ進化論■はやぶさトークショー 第2回 「はやぶさと見た夢」 (その4)

2011-01-01 23:42:28 | 宇宙の海

はやぶさと見た夢 ~関西からはやぶさとその未来を考える~
開催日時:2010年9月20日(月) 14時~ 約2時間半
会場:大阪市阿倍野区民センター 大ホール
主催:和歌山大学宇宙教育研究所、大阪市立科学館
協賛:NEC
前半の部 パネルディスカッション 出演者(五十音順):
池下章裕(スペースアート・クリエイター)
林譲治(SF作家)
森本睦子(JAXA)
吉住千亜紀(和歌山大学)
司会:尾久土正己(和歌山大学)

歌:中谷泰子(ジャズボーカリスト)

後半の部 講演と対談 出演者(五十音順):
山川宏(京都大学)
秋山演亮(和歌山大学)


■はやぶさ進化論

さて。
拍手を浴びつつマイクを置いた森本氏に変わって。
次なるパネラーは、SF作家の林譲治氏である。

氏が語りだした、はやぶさとの接点とは一風変わった
ものだった。

それは…。
JAXA相模原キャンパスの一般公開におけるはやぶさの
変遷史なるものである。

はやぶさの歴史。
それは、よく知られているとおり1985年の小惑星サンプル
リターン小研究会に一つの端緒を持つと言ってよいだろう。

その後。
1991年にMUSES-C計画が発足。
1993年の小惑星ネリウスサンプルリターン工学系90日
studyにて具体化に向けた足取りが加速。

ついには。
1996年に、正式にプロジェクトが開始となった。

1985年が受胎とすれば、1996年は正にはやぶさに
とって誕生とも言える年であった。

その。
1996年8月9日の相模原オープンキャンパスにて、
氏が目撃したもの。

それが、MUSES-C計画における探査機の模型であった。

図形描画といえば、パワポで描くくらいしか能の無いブログ主が
スライドに投影された記憶を手繰り寄せて起こしたのがこちらの
イラストである。
(笑わないでね。お願いだからw)





現在、我々が知っているはやぶさの形とは全く違う、異形の
存在。

されど。
確かに、はやぶさのDNAが奥深くに刻み込まれていること
を感じさせるその姿は。

まだ計画そのものが揺籃期であり、ターゲットの小惑星も
Nereus(ネレウス)だったことや、地球スイングバイの研究も
始まっていたこと、他の天体へのフライバイやランデブー
シーケンスといった、様々な野心的な検討が盛り込まれていた
時期にふさわしく、荒削りながらも可能性に満ちているように
見える。

(※ 当時の初期検討の項目は、山川教授のメッセージに
   詳述されている


続いて紹介されたのは、98年のオープンキャンパスでの
探査機モデル。

やや形状は異なるものの、確実に上図のものよりもはやぶさ
らしくなってきている。

それは、MUSES-C計画そのものの具体化と歩調を合わせる
かの如くである。

#ある意味、当たり前なのだが。

なお、この年は。
当時はまだ搭載予定だったNASAのローバーも展示されていた
とのことであった。



(※ 画像提供:NASA)

上図のローバは火星探査用のマーズ・エクスプロージョン・ローバ
であり、はやぶさに搭載予定だったものとは異なる。

今回紹介されたものは、上部がもっと太陽電池パネルでフラットに
なっていた仕様のものであった。

但し。
イトカワの極低重力を考えたときに、このタイプ(=車輪駆動)の
ローバではうまく機動できなかったことはその後の研究で明らかに
なっている。

そのために、JAXAはミネルバのようなホッピング型に行き着いた
のである。

この辺りの研究裏話やミネルバに対する思い入れの深さは…。
ミネルバ開発担当の吉光徹雄氏のコラムにて知ることが出来る

ミネルバ放出後、万が一の入感の可能性を思って、はやぶさの中継器の
スイッチを2週間いれっぱなしにしていた辺りの下りは、読んでいて
思わず目が熱くなってくる。

はやぶさの限り有る電力資源を有効に使うために。
もういいだろうと、中継器のスイッチを切るその時に、氏は何を思った
のだろうか。

実は、この問いにもコラムの中で氏は答えている。
そこでの回答は、驚くほどドライなものである。

思えば、阪本先生も。
昨年10月にみさと天文台で行われた講演会で、

 「機械に思い入れするなんて気持ちの悪い」

といった類の発言をなされていた。


それはそれで、真実な思いなのだろう。


ただ、その口調のどこかに。
溢れる感情を理性でホールドしている気配を感じるのは、
僕の勝手な思い入れに過ぎないのだろうか…。


閑話休題。
林氏のスライドに戻ろう。

98年には、りエントリカプセルが展示。
そのことは、MUSES-C計画がより具体化してきている
ことを如実に示している。

99年は、更にカプセル。
00年は、ミネルバのプロトタイプ。
加えて、プロジェクター(弾丸射出装置)。
弾丸。耐火煉瓦等も。

ここまで来ると、計画当初から追っていた氏としては、
野心的なプロジェクトが様々な人の手によって見事に
彫琢されていく様を目の当たりにみることが出来る
喜びを、まざまざと感じていたという。

01年はアメリカに行っていたのでオープンキャンパスに
参加できなかったとのことであったが。

Wikiによれば同年にご結婚されているので、ひょっと
したら新婚旅行だったのかも知れないw。

そして、02年は。
イオンエンジンとサンプラーホーン。

ここまでくれば、もう打ち上げを翌年に控えているために、
展示物も実物あるいは実験モデルとなってくる。

そして、04年には、今も相模原に展示されているはやぶさの
実物大モデル。


氏は。
オープンキャンパスで、自分の好みのテーマを見つけたら、
それを毎年丹念に追っていくことで

 「野心的なプロジェクトが具体化していく流れ」

を体感できる。これこそが、オープンキャンパスの醍醐味と
評して、トークを締め括った。


僕は、まだ相模原には行ったことがない。
これからも、会社人を行っている限りは必ず行けるかどうかは
その時の状況次第とならざるを得まい。

それでも。
その行く行かないの選択のハードルの低さという点において。
関東在住の方を羨ましいと、心底思った次第である。


(この稿、続く)


(次回予告)
次回は、イラストレーターの池下章裕さんの登場です。




はやぶさ、そうまでして君は~生みの親がはじめて明かすプロジェクト秘話
川口 淳一郎
宝島社

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