会津八一&団塊のつぶやき

会津八一の歌の解説と団塊のつぶやき!

科学と文章(寺田寅彦)  素空

2012-04-29 23:40:47 | Weblog
 「科学と文学」に関する随筆の中で両者は密接に関連していることを述べ、その中の「科学と文章」で優秀な科学者の書く文章は総じて優れていると展開する。「(優秀な科学者の論文が)内容はいいが文章が下手で晦渋(かいじゅう)でよくわからない」と言うことはほとんどなく、「(科学者の論文が)内容は平凡でも文章がうまいからおもしろい」などと称賛されても、科学者の読者にはちっとも面白くないと言う。
 文章は中身を伴わないと良いものとならないと言うことだろう。そして、以下のように言う。「どうしたら文章がうまくなれるか、という質問を受けることがある。そういう場合に、自分はいつも以上のような答えをするのである。何度繰り返して読んでみても、何を言うつもりなのかほとんどわからないような論文中の一節があれば、それは実はやはり書いた人にもよくわかっていない、条理混雑した欠陥の所在を標示するのが通例である。これと反対に、読んでおのずから胸の透くような箇所があれば、それはきっと著者のほんとうに骨髄に徹するように会得したことをなんの苦もなく書き流したところなのである」
 「読んでおのずから胸の透くような箇所」、なるほど過去の読書で頭に残っているものはそういう箇所である。良い文章に常に接したいと思う。