SUPER FLAT 2

非ファルス的にもっこりするものを肯定せよ!(神の性的不器用あるいはその性的悪戯に由来するもの達について)

インランド・エンパイア18

2009年06月20日 | Weblog
 何か微妙に間違った気もするが、とにかくリンチはそこで、引っ越してきたローラと「不気味な出会い」(フロイト)をしてしまい、その体験が『インランド・エンパイア』を制作する動機となったと考えてよい。下の文章は、そのときリンチに起きたこと、そしてこの映画内で起きていることの基本的な説明にもなっていると思われる。そろそろフロイトから電話がありそうだ。

>この文脈においては、「不気味な出会い」の体験は、私たちの心の内部を走る諸経路の複数性、情報処理の並行性を私たち自身にはっきり自覚させる体験として解釈できる。私たちは通常、自分をひとりの人間だと考えている。それはつまり、心に宿る情報処理装置がひとつだと考えていることを意味する。しかし前述の体験において私たちは、意識とは無関係に処理された別の情報が、やや遅れて意識へと回帰する現象に出会ってしまう。そのとき私たちは、心が分散されていること、実際に存在するのは、無数の情報がその内部を走るニューラル・ネットワークでしかないことを知らされる。その分散状態の再認こそが「不気味さ」と呼ばれる特殊な感情を引き起こすのだ。(東浩紀『情報環境論集S』230ページ「サイバースペースはなぜそう呼ばれるか」より抜粋)