うっかり見逃していたのだが、昨年12月半ば頃、『風の旅人』誌編集長の佐伯剛氏と『逃げろや逃げろ、どこまでも』の浅田彰氏との間で、杉本博司の評価をめぐるちょっとした論争があったようである。かつて金井美恵子に「浅田彰は映画的センスが悪い」と言われたことのある浅田氏にしてみれば、ここで今度は「写真的センスも悪い」と判断されるのは、もはや耐え難いことである。なんとか佐伯氏に対して説得を試みようとするが、ほとんど効果は無いようだ。このままだと金井美恵子のときのような失笑を招くことになりかねない。幸い、岡崎乾二郎から「助け舟」が出されたことで何とか「批評家」としての面目を保つことができたが、これからもそう「うまくいく」とは限らないだろう。「批評」の時代はもう終わったのだ。