すぎなみ民営化反対通信

東京・杉並発。「一人が万人のために、万人がひとりのために」をモットーに本当のことを伝え、共に歩んでいきたいと思います

クビきり・賃下げ・労働条件切り下げ》の自由・・・・公務員攻撃めぐる激突の階級的意義(6)

2010年09月02日 | 公務員制度改革・公務員攻撃について

※前回8月31日の記事からの続きです。

総非正規職化で、使用者には《クビきり・賃下げ・労働条件切り下げ》の自由、労働者は無権利

 日教組リーフレットは、公務員制度改革・公務員法改正によって、「労使交渉」を通して労働協約で締結できる事項」として以下を列挙しています。

 賃金・諸手当、勤務時間、休暇、任用・分限・懲戒の基準、労働安全衛生、災害補償、人事評価制度、人事異動基準など

 リーフレットで文章(コトバ)だけ見れば、公務員制度改革・公務員法改正後は、まるで労働者が労働条件をめぐって「労使交渉」で団体交渉権を行使でき、その結果として労働条件の改善を使用者に認めさせ、それを協約書で法的拘束力をもって使用者に遵守させることができるかのようです。

非正規職の労働者がおかれている状態を完全に無視・抹殺

 

 しかし公務員制度改革・公務員法改正後にもたらされることはまったく正反対です。自治体職場で非常勤で働いている職員や業務委託や指定管理制度によって派遣されて働いている労働者、そして民間企業で子会社や外注・派遣、下請で働いている労働者は、みんな、非正規職には労働基本権など仮に契約上あっても実体はないに等しく、むしろ予め完全に奪われ無権利状態を強いられていることをくやしい思いで痛いほど知っています。社会的に求められているのは、公務員や正規職をなくして非正規職にすることではなく、低賃金不安定雇用の非正規職を正規職とせよ、非正規雇用そのものを撤廃せよ、労働者派遣法そのものを廃止せよということでなくてはならないはずです。

 非正規職が労働基本権上の無権利を強いられワーキングプアとして生存権・生活権そのものが踏みにじられているという現実を無視することは許されません。労働力市場が使用者の労働力の安値買い叩きの買い手市場となっている現実のもとでは非正規職の労働者の労働条件は「使用者の自由」で一方的に決められています。

 どんな低賃金であろうとどんな短期雇用であろうとどんな劣悪な労働条件であろうと、生きるためにはとにもかくにも採用されるしかない立場と状況を不当にしいられているのが非正規職労働者の現実の状態です。非正規とは超低賃金であり、雇用に明日の保障がなく年金もなければ社会保険もない、使用者の「クビきり自由」と労働者の無権利ということだ。不当労働行為を社会的に告発し、あるいは処分覚悟で血みどろの闘いで現場で新たに労働組合をつくって使用者と懸命に闘っているのが非正規職の労働者の置かれている労使関係のあるがままの現実です。

 ところが、リーフレットは、そのような非正規職の労働者が置かれている現実を百も承知の上で、反対せず、非正規雇用そのもの、労働者派遣法制そのものを撤廃せよという立場にもまったく立ってはいません。逆に、公務員制度改革で公務員、正規職をなくし、全部、非常勤、派遣、パート、アルバイトの非正規職に入れ替える、その制度改革後に「労使対等の交渉で要求を提出し妥結にもとづいて労働協約を締結する権利」があるというようなとんでもない大ウソをついているのです。

 公務員制度改革・公務員法改正後の労使関係にはそのようにリーフレットが文章(コトバ)で幻惑しているような実体はこれっぽちも想定も予定もされていません。そのことは「新しい公共」「公共サービス提供の社会的責任」を掲げて、これまで公務とされていたものをどのような制度設計のもとに運営しようとしているか?政財界の制度設計の具体的実体を見ればハッキリします。

『子ども・子育て新システム』がもたらす保育労働者の「労使関係」、労働者の状態

   

 6月25日に政府が発表した「子ども子育て新システム基本制度案要綱」というものがあります。2011年に国会に法案として上程し2013年度に制度として実施スタートさせようとしています。ここには、公務員制度改革が現職員の全員解雇であり、労働者の総非正規化・無権利化であることが、新システムの実体として明らかになっています。民主党政権のもとで急速に具体化したもので耳慣れていない新制度案ですが、全容を知りたい方は、下記①②にあります。

 ①は制度設計の全体を文章とフローで示しており、②は新システムの狙いを隠そうともせず・・・たとえば「子ども・子育て新システムによるマーケットと雇用の創出-新成長戦略との連携-」のように・・・コンパクトなフローで示しています。 

 http://www8.cao.go.jp/shoushi/10motto/08kosodate/pdf/youkou.pdf

 http://www8.cao.go.jp/shoushi/10motto/08kosodate/sk_2/pdf/s2.pdf

 この「子ども子育て新システム」は、制度実施への工程表が2011年公務員法改正・2012年度公務員制度改革実施と完全に一体です。

  2011年国家公務員法改正。「子ども子育て新システム基本法」制定     

  2012年地方公務員法改正。2012年度公務員制度改革実施

  2013年度「子ども子育て新システム」制度実施

 「子ども子育て新システム」の制度的特徴

 (1)利用者の選択に基づくサービス給付の契約方式への転換

 このかん職員配置や資格保育士の必置基準のなし崩し的な緩和と認証保育や無認可保育の拡大で形骸化している。新システムは、まがいなりにも憲法と児童福祉法に基づいて運用されてきたこの現行の公的保育制度をバッサリ解体するもの。「国と自治体の責任」「最低基準」「公費負担」の原則を最終的に解体する。区市町村=基礎的自治体を実施主体として事業者と利用者の公的保育契約のもとに、利用者補助方式と公定価格を基本とする多種多様なサービスを現物給付で提供する制度に根本的に切り替えるところにある。【この構造は介護保険制度とまったく同じである。】

 (2)多様な事業者の参入によるサービス基盤の整備

 サービス給付を類型化し

①《産前・産後・育児休業給付》・・・育児休業中の給付と保育サービスの切れ目のない保障、

②《幼・保一体給付》・・・こども園=幼稚園・保育所一体化、多様な保育サービス(小規模保育サービス、短時間利用者向け保育サービス、早朝・夜間・休日保育サービス、事業所内保育サービス、病児・病後児保育サービス 等)、

③《放課後児童給付》

の各類型ごとに基準を定めたうえで、指定事業者制度を導入し、イコールフッティング(※ⅰ)で多様な民間企業の参入を促進し、運営費の使途範囲は事業者に自由度を持たせ、一定の経済的基礎の確保を条件に他事業への活用(※ⅱ)も可能にする、という「仕事と子育ての両立」支援・保育・福祉の市場化・民営化である。政府がこの新システムで言うところの「新成長戦略との連携」であり「子ども子育て新システムによるマーケットと雇用の創出」である。

補注※ⅰ-「イコールフッティング」とは競争に当たっての条件・基盤を同じに整備すること・・・同じ内容でありながら公営事業と民間企業の場合に対等ではないという「官業の民業圧迫」論で出てきた。保育をめぐる議論では「認可保育所と同等に無認可保育に補助金を回せ」等の論となっている。補注※ⅱ-利益を配当に回すことの禁止等の株式会社やNPOが参入しにくい規制をなくするということ。】

 (3)「雇用の拡大・・・子育てサービス従事者増」とは保育職員の全員解雇と低賃金非正規職による「子ども子育てサービス」

 ここが新システムの眼目だ。政府は、保育所待機児童の激増と国と自治体の保育に関わる財政ひっ迫のもとで、公立保育所と職員定数配置、資格保育士の必置配置基準を撤廃し、民営化で保育サービス従事者のほとんどを非正規職とすることで保育の総人件費の削減と保育サービスでの新規雇用の創出をはかるつもりだ。

 新自由主義者は「公立保育所の職員は公務員準拠で人件費がかかりすぎる。民間参入で保育に要する人件費は大幅に節減でき、その分を人員増員に回せる」「東京都の認証保育所は資格保育士を職員の6割以下に抑えているために人件費が安い」とし「規制緩和で職員の過剰配置と保育料を見直せば、試算では6千億円の公費投入で計41万人、非正規雇用換算で計100万人相当の雇用が生まれる」と言い立てている(学習院大鈴木教授「保育園に民活促進を・・・私の雇用創出作戦⑤・・・朝日新聞2010年6月27日)

(4)新システム実施体制の一元化=「子ども家庭省」の設置

 公務員制度改革の実施の政府の中央責任官庁として「公務員庁」を新設しするのと相対応するのが、この「子ども子育て新システム」での「子ども家庭省」。保育の民営化、低賃金非正規職化を中央で指揮し指導・管理・監督するということだ。

(5)利用者にとっても深刻な保育の安全問題等をひきおこす

 もっぱら保育労働者の問題を中心にここではみてきました。利用者にとっては、公立保育所の廃止、資格保育士を中心とした職員配置の規制緩和、非正規職化のもとでの入れ替えとっかえのシフト制で必ず事故や安全問題が発生することは明白。保育料負担の値上げとともにこの保育安全問題は「子ども子育て新システム」の根本問題の一つです。これは労働者のせいではない。労働者に労働者としての基本権と労働条件が保障されないところに「子どもの安全」はありません。

保育の非正規職化、労働者の無権利化の攻撃のどこに「労使交渉」や「労働基本権」があるというのか?

 「子ども・子育て新システム」が、48万人の資格保育士をはじめとする100万人の公立保育所職員のいったん解雇・民間企業への非正規採用であり、新システムのもとでのすべての保育労働者の非正規職化・無権利化であることは歴然としています。

  あのグッドウイルグループ・コムスンは労働者派遣法と介護保険制度をとことん利用して労働者を生計費にも満たない低賃金で搾取し過酷な労働条件で酷使し、ナンバーワンのシェアをとった。そのあまりの無法な強搾取ゆえに社会的告発を受け、崩れ去ったのはご存じの通りです。介護保険制度は、公的介護・福祉=措置制度を廃止し、介護を市場化・民営化した。措置制度のもとで介護を担ってきた労働者はいったん職を失い、介護の仕事を続けるためには、介護保険制度が定める資格を取得し、コムスンはじめ介護に参入した民間の人材派遣企業や法人のもとに雇用され、低賃金で劣悪な労働条件を強いられるしかなかった。生計のために苦労して資格を取得して人材派遣企業に採用され新たに介護職についた労働者も低賃金と劣悪で過酷な労働条件に耐える以外に仕事を継続できない厳しい現実がある。いったん介護職についてもあまりの低賃金とひどい労働条件ゆえに仕事を続けられず辞めていく人が後を絶たない。人材派遣企業にはそもそも労働基本権や労働基本法制が前提になっているような「労使関係」などカケラモありません。「子ども子育て新システム」がその仕事に従事する労働者にとってめちゃくちゃな「労使関係」「労働条件」を強いることになることは、介護保険制度やグッドウイル・コムスンの前例を見ても明らかなことではないでしょうか?“保育におけるグッドウィル・コムスン”をめざしているのがピジョンでありベネッセグループです。

 リーフレットが「対等な労使交渉で労働協約を締結することができる」としている「賃金・諸手当、勤務時間、休暇、任用・分限・懲戒の基準、労働安全衛生、災害補償、人事評価制度、人事異動基準」は、非正規職の労働者にとっては「要求」し「交渉」を求めること自体が使用者からのクビきりを覚悟しなければできないような文字通りの懸命の闘いです。リーフレットに書かれているような「紙に書かれたコトバ」など今日明日生きるために今日明日働くことができるかどうかのギリギリのところにいる労働者にとって何の武器にもなりません。ましてや、その書かれている真の中身は、使用者と使用者とグルになった労働組合幹部による労働条件切り下げの仕組みです。労働組合でありながら「労働基本権」を使って労働条件の切り下げをはかる・・・・!本当に怒りに堪えません。

 公務員制度改革に対して私たちが声を大にして訴え、叫ばなければならないことは、次のことに尽きます。

 ★現職員360万人クビきりの公務員制度改革に絶対反対!

 ★非正規職を正規雇用とせよ!労働者派遣法撤廃!

 ★正規・非正規の分断を許さず、正規・非正規の団結で公務員攻撃・総非正規職化攻撃と闘おう!

 ★「公共サービス提供の社会的責任」の名による労働運動圧殺を許すな!団結こそ力だ!労働者の生きんがための労働組合を取り戻し、ストライキで闘う労働運動を復権しよう!

 

 

 

 

 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« リーフ『公務員の労使関係が... | トップ | 労働者の権利と未来を賭けて... »

コメントを投稿

公務員制度改革・公務員攻撃について」カテゴリの最新記事