すぎなみ民営化反対通信

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リーフ『公務員の労使関係が変わる』を批判する(②)・・・・公務員攻撃めぐる激突の階級的意義(5)

2010年08月31日 | 公務員制度改革・公務員攻撃について

「公共サービス」の名による現職員全員解雇と総非正規職化の攻撃に反対せず、協約締結権付与と引き換えに労働運動の圧殺に協力する労働代官をゆるすな

 前回①(8月28日の記事)では、2011年公務員法改正・2012年度実施とされている公務員制度改革が、いまの公務員制度を解体・廃止し、まったく別の制度(その意味では「新しい公務員制度」と呼ぶこともできないような制度)を新たにつくるものであることを明らかにしました。

 (1)公務員制度改革で何がどう変わるか、ポイントを整理します

 ① 国や地方公共団体の役所が行ってきた公務 

   官民協働で民間の企業・NP0・個人も取り組む「公共サービス」

 ② 公務の担い手=資格を有し身分を保障された公務員

   「公共サービス」の担い手=現職員の中から新制度の「公共サービス」事業に雇用される労働者。労働者派遣制度・業務委託・指定管理者制度等による民間企業の労働者。NPO法人・個人。

 ③ 公務員の給与等の勤務条件=労働基本権の制約のうえにその代償として人事院・人事委員会による勧告に基づき決定

  → 人事院・人事委員会の勧告制度は廃止。団体交渉権の一部である協約締結権を付与し労使交渉で賃金等の労働条件を決定。

 ※ 但し、これは専らこれまで公務員であった職員で新制度下で任用(雇用)する職員との関係の問題。民間企業への外注=派遣・委託・指定管理の場合は労使関係は、雇用関係が企業に属するため、この問題をどうするのかはまったく不透明なグレーゾーンとして残されており、何も明らかにされていない。グレーゾーン問題に制度的には手をつけず、構造的に残したまま、「労使交渉による協定締結で決定する」としている給与等の労働条件を派遣・委託・指定管理の受託企業の標準・水準に合わせることを実際の新制度運用の実体としては考えている、とみるべきである。現職員のいったん全員解雇・選別再任用(非常勤として再任用)と外注化=民営化によって、公務員制度に基づく役所の仕事にとってかわる「公共サービス」を低賃金不安定雇用、総非正規職化でまかなおうとしている・・・制度改革の正体はここにある。そして、ここからも明らかなように、公務員制度改革は現職員の全員解雇を前提とし、全員(国と地方あわせて360万人)解雇=クビきりをもって始まるということだ)。

 (2)政府は「公務員総人件費2割(以上)削減」の実現手段として「協約締結権の付与」「労使交渉による給与等の決定」を考えています。ここは絶対あいまいにできないポイントです。

 これは、仙石官房長官や玄葉公務員制度改革担当大臣がハッキリ言っていることです。この点に公務員制度改革の目下最大の主要な狙いがあります。前掲整理の③の続きで言えば、「公務員総人件費2割(以上)削減」のために現職員のいったん解雇・選別再任用(非常勤として再任用)と外注=民営化によって、いまの公務員を低賃金不安定雇用の非正規職に総入れ替えする・・・それが狙いです。

(3)公務員制度改革の正体を隠ぺいし、攻撃に協力するデマリーフレットを弾劾しよう

 この一点を見ても、公務員制度改革、その目下最大の焦点である「協約締結権」「労使交渉による給与等の決定」の仕組みが、リーフレットが組合員・職員を幻惑するために言っているような「労働基本権の回復」などではまったくなく、「賃金等の労働条件を労使交渉で改善する」ものにつながるものでもないことは誰の目にも明らかではないでしょうか?

  ※日教組リーフの詳細については以下をクリックして資料としてごらんください。

http://www.jtu-net.or.jp/doc/pamph201002.pdf  

 いまの公務員(360万人の職員)をいったん全員解雇し、公務員制度のかわりに「新しい公共のサービス」制度をつくり、労働者をワーキングプアにすることでまかなう攻撃を、労働者の権利の回復であるかのように「労働者向け」にデマ宣伝をしているのが、このリーフレットを製作し組合員等に配布している日教組中央であり、自分たちの労働組合の位置づけを「公共サービス労働組合としての社会的責務」と規定している自治労中央であり、連合中央です。

 民主党-連合政権の片割れとして、「労働組合」の顔をして「公務員のための公務員制度改革」「公務員のための労働基本権の回復」「公務員の労使関係が変わる」「労使の対等な交渉に基づく労働協約によって勤務条件が決まる」とデマ宣伝を役割分担しているわけです。連合・日教組・自治労指導部がまったくわかっていないのは、このような所詮アクロバットにも等しいデマは、公務員労働者を先頭に絶対反対の怒りの決起と暴露が始まればひとたまりもないということです。

 リーフレットは、何よりも、その内容のすべてであると言ってもよい「労使の対等な交渉に基づく労働協約によって勤務条件が決まる」という「協約締結権」と「労使交渉」による「自律的労使関係制度」が、「公務員総人件費の2割(以上)削減」の実現のための仕組みであるという点に、ただの一言も触れず、ごまかしています。この点は既に繰り返し前述した通りです。

 そして、公務員制度改革が、現職員のいったん解雇・選別再任用(非常勤としての再任用)と外注=民営化で低賃金不安定雇用の非正規職に総入れ替えする大攻撃であることについて完全に口をつぐんでいます。気付いていないのではありません。公務員制度改革によってもたらされる労働者の状態、焼け野原となる職場の状態を百も承知の上で沈黙し、逆に「労働基本権の回復」「労使交渉による労働条件の決定」とごまかし恣意的作為的に美化しています。 

労働基本権を真っ向から否定。労働運動の圧殺のどこが「労働基本権の回復」か?!

 「協約締結権」の付与は「日本の公務員労働者にとって労働基本権の回復の悲願」の実現といえるようなシロモノか?ポジテイブに「労使の対等な交渉に基づく労働協約によって勤務条件が決まる」などと説明できるようなシロモノか?

  ① 「協約締結権」付与は「奪われてきた労働基本権の回復」か?

 公務員は、日本国憲法第28条ですべての労働者に保障されている「団結権・団体交渉権・団体行動権(争議権)」という労働基本権(労働三権)を剥奪・制約されてきた。公務員は争議権を剥奪されたうえ、非現業公務員の場合には団体交渉権の一部である協約締結権も制限され剥奪されてきた。戦後革命の高揚、1947年2・1ゼネストの中核を担った公務員労働運動に対して1948年政令201号によってGHQと政府が奪った。国家公務員法と地方公務員法は「全体の奉仕者としての公務員」「公共の福祉」を理由に政令201号を法制化した。だが公務員制度改革・公務員法改正での「協約締結権の付与」はこうして奪われてきた労働基本権の回復などといえるものなのか?「一歩前進」「これまでよりマシ」といえるようなものなのか?

  まったく否です。今回の公務員制度改革では労働基本権の生命線である争議権は奪われたままだ。そもそも「団交権と争議権のない団結権」などというこれまで公務員労働運動が法律上強いられてきた状態そのものが、公務員の労働組合による団結と闘いを実際には禁圧、否定するものだった。公務員労働運動は、1970年代まで自治労も日教組も公労協(国労、動労、全逓、全電通をはじめとする3公社5現業の9組合)とともに激しい刑事弾圧と行政処分との血みどろの闘いを通して労働組合として存続してきたのではないのか。当時、順法闘争と「違法スト」は公務員労働者の当たり前の闘い。公務員労働組合のストライキは焦点に絞りあげられたスト権奪還を正面から掲げた激突として闘われた。1975年11月には国労・動労を先頭にスト権奪還ストが500万人を超える公務員労働者の決起として闘いとられ政府と資本家階級に大打撃を与えた。

1975年スト権奪還ストライキについては以下の動画で概要をごらんください。http://www.youtube.com/watch?v=71Z4eQV_HhI

 今回の公務員制度改革・公務員法改正で、争議権を奪い続けたまま、これまで一部しか認めてこなかった団交権の残りの部分である協約締結権に限定して与えるというのは、団体交渉権の行使については、交渉妥結・労使合意(協約締結)を目標・前提とする範囲・枠内に限り認容するという絶対的な条件付きでしか認めないということだ力点は、「労使交渉の妥結」「労使合意」の仕組みづくりにある。団交の意義を否定し、団交の拒否や決裂の場合等にストライキ決行に労働組合がやむにやまれず立ち上がることを絶対に行わせないために、協約締結権だけ認め、争議権は絶対に与えないということだ。要するに公務員のストライキをはじめとした争議を絶対に認めないというのが協約締結権付与の本旨。戦後革命期のストライキ、1970年代のスト権ストライキの政財界の総括は、労働者とりわけ公務員には絶対に争議権(スト権)を与えてはならないということであり、ストライキを打つような組合は絶対に認めない、つぶさなくてはならないという一点に尽きる。制度改革後の労使関係では、労働運動と名のつくもの、その芽になりかねない要素を完全に一掃しようとしている。

 ② 「労働協約」の法的拘束力で労働者を従わせ支配するもの

 リーフレットは「労働協約とは」として「労使が対等の立場で賃金や労働時間をはじめとする労働条件について団体交渉を行い文書で確認すること」と規定し、「要求→交渉→妥結→労働協約締結」のフローで説明。「『約束事』であり、協約で確認したことは労使双方が順守しなければならない」と労働協約の法的拘束力を強調しています。

  争議権(スト権)を認めない労使関係はそもそもまったく「対等」ではない。労働三権は団結権・団交権・争議権の三権ワンセットで労使関係で労働者が使用者に対抗し得る条件(「武器」)となる。

 リーフレットは、あたかも「労働協約」が労使双方、すなわち使用者をも拘束し、労働組合が労働者の要求事項を使用者に認めさせ、使用者をそれに従わせることもできるかのように説明している。争議権がない労働者は、「指揮命令、人事管理・監督権」を持つ、すなわち職場支配権を有する使用者とはまったく「対等」でない。法的拘束力は労使双方ではなく専ら労働者を拘束する。「労使合意」に基づいて締結した「労働協約」を通して、「使用者の指揮命令、管理・指導・監督」に労働者を従わせるということしか意味しない。使用者の指揮・命令、人事管理が、「労働協約」の名で(組合が労使交渉で妥結していることから労働者にとっては抗いにくい形で)強制され執行されるということだ。

 ここでは「労使交渉」の「対等の当事者」として組合が労働者代表ということになる。争議権(スト権)剥奪を是とする労働組合(指導部)は使用者からはパートナーとして位置づけられる。公務員制度改革・公務員法改正・公務員庁設置とは、労働組合の労使協調機関への変質、使用者とともに「労働協約」の名で労働者を支配する労働代官となる、そういう仕組みをつくるということだ。連合・自治労、日教組の指導部はその労働代官として「公共サービスを国民に提供する社会的責任を果たす」を組合の目的に掲げて政府・公務員庁とのパートナーとなりはてている。

 組合員・労働者を使用者に従わせる、使用者と一緒になって組合が「協約」で命令する。労働運動の圧殺だ。

今回はここまでとし、以下次回以降に続く。

次回は

 ◆「労使交渉」でクビきり・賃下げ・労働条件切り下げを決定する?!

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