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脳動脈瘤 その10 脳動脈瘤と薬剤(ピル)について

2020年03月22日 | 動脈瘤
みなさんこんにちは。コロナウイルスの蔓延で家から出られない人が多いと思いますが、いかがお過ごしでしょうか?
先ほど、抗加齢医学会のWEB講習の録画のため、大阪梅田に出かけてきました。飲食店は空いている感じでしたが、大阪駅には多くの人がいました。
日本では外出規制などが緩やかですが、ヨーロッパやアメリカでは極めて厳格です。また、イタリアの病院での様子を見て恐ろしくなりました。それにしても、日本と何が違ったのでしょうか。
日本では比較的コロナウイルス患者が少ないとされていますが、これはPCR検査を限定してきたためとも言われています。ただ、コロナウイルスによる死亡数も1-3名/日と少ないので、現在はヨーロッパなどに比べてまだ良い状況なのでしょう。しかし感染者数は確実に増えており、油断は禁物です。私は、多くの人出で賑わう様子を見て危機感を持っています。
当面は感染のリスクを高めるとされる3つの条件、1)換気の悪い密閉空間、2)多くの人が密集しているところ、3)近距離での会話や発声、を極力避けるよう気をつけましょう。
  厚生労働省「新型コロナウイルス感染症対策の見解」

さて、今回はコメント欄にいただいた、脳動脈瘤と低用量ピルに関する質問に答えたいと思います。
これは「低用量ピルが脳動脈瘤を増やす」というテレビ報道が以前にあったためと思います。少し詳しく解説します。

まず、脳動脈瘤は女性に多いことが知られており、女性ホルモン、特にエストロゲン(卵胞ホルモン)との関係が注目されています。
エストロゲンは、女性らしいからだ作りを助けるホルモンで、8〜9歳頃から卵巣で分泌されるようになります。そして、30歳代まで活発に分泌されますが、40歳代になると、徐々にその分泌量が減少します。そして、ちょうどその頃から脳動脈瘤の診断数が多くなります。またこのホルモンは、血管の修復にも重要であることがわかっていることから、「エストロゲン分泌が減少することが脳動脈瘤の発生と関係するのではないか」と考えられているのです。

ピルにはエストロゲンが含まれており、エストロゲンの補充療法と言えます。経口避妊薬として有名ですが、月経痛の強い方にも使用されています。

以上から、
1. エストロゲンが減ると動脈瘤が増える可能性がある
2. ピルはエストロゲンを補充する薬である
ということになるため、ピルの内服によって脳動脈瘤はむしろできにくくなるのではないか?と考えられます。
今回調べたところ、ピルを内服している人が脳動脈瘤が少ないというデータは見つかりませんでした。一定値以上にホルモン量を増やしても関係ないのかもしれません。しかし、「脳動脈瘤を有する患者さんにおいてはピルやホルモン補充療法を受けている確率が低かった」というデータが見つかりました(表, J NeuroIntervent Surg 2011;3:163-166)。
「ピルが脳動脈瘤を増やす」という報道とは逆のデータになります。このことから、少なくとも「動脈瘤の発生を増やす」危険性についてはあまり心配されなくても良いと考えます。

以上、ピルと脳動脈瘤の発生に関して調べた範囲でお答えしました。ピルは私の専門外の薬ですので、専門医と相談して使用してください。

次回は、このご質問から派生して、脳動脈瘤と薬剤についてもう少し紹介したいと考えます。

コメント (5)
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