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脳動脈瘤 その9 脳動脈瘤の種類(成因による分類) 細菌性動脈瘤

2020年03月10日 | 動脈瘤
特殊な動脈瘤には、細菌の感染によるものもあり、細菌性動脈瘤(mycotic aneurysm) と呼ばれています。
心臓の感染症である感染性心内膜炎に伴って発生することが多く、心内膜炎を起こした患者さんの1~5%に生じるとされています。
心内膜炎というのは心臓の内膜や弁に細菌(あるいは真菌)が付着して、炎症を起こす病気です。
これによって発熱や全身の関節痛などが起きるのですが、菌が付着した部分が膨れ上がり、いぼのようになることがあります(疣腫:ゆうしゅ)。
これがはがれて飛んでいき、脳の動脈につまると、そこで細菌性動脈炎を起こし、動脈の中膜の炎症が起きることで、動脈瘤が形成されるとされています。
特徴としては、脳の血管の太い部分(主幹部)より細い部分(末梢部)に多いこと、中大脳動脈領域に頻度が高いこと(60~70%)、約20%は多発性であることが報告されています。
また、感染性心内膜炎では脳動脈だけでなく、腸の動脈(腸間膜動脈)などにも動脈瘤が形成されることが知られています。

さて、細菌感染によってできた動脈瘤ですから、抗生物質(抗菌薬)を投与すれば治りそうなものです。
しかし実際には抗菌薬による治療を十分に行っても動脈瘤が縮小せず、破裂してしまうことがあるため、外科的治療が必要となることがあります。

細菌性動脈瘤以外にも、癌に関連した動脈瘤や薬物乱用(特にコカインの習慣的使用)による脳動脈瘤も報告されています。

以上、動脈瘤の成因について紹介しました。
次回からは、動脈瘤による症状についてお話しします。
コメント (1)
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